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第9章 オレはケレメイン大公国の大公妃殿下です。
462.ミーレ長官が動いた?え、女神様?ミーレ長官、ダメだ!オレの話を聞いてくれ。責めるべき相手がいるとしたら、それは。
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打開策は、思いつかない。
今のオレにできること。
オレ自身の安全確保は、第一。
ミーレ長官が、オレに危害を加えることがないように立ち回って。
ミーレ長官が、ミーレ長官自身を傷つけることがないようにしないとな。
オレは、ミーレ長官と向き合い、じりじりしながら、愛こんにゃく家を待っている。
愛こんにゃく家は、オレとミーレ長官が向き合って話す間に、歩きで到着できる距離にいたはず。
オレが、最初に大声で話し始めた時に、愛こんにゃく家が歩き出せば。
もう、オレの半径一メートル以内にいてもおかしくない。
でも、愛こんにゃく家の足音がしない。
愛こんにゃく家!
捕まっていたりしないよな?
オレとミーレ長官の間に流れる時間は、止まっているかのようだった。
突然、ミーレ長官が動いた。
オレが身構える間もなく。
ミーレ長官は、無言のまま、動かないオレを素通りして、女神様を掴もうとした。
「ミーレ長官?」
女神様を見て、女神様に何かをする人なんて、今までいなかった。
油断していた。
ミーレ長官が動くなら、矛先は、オレだと思っていた。
「ふふふ、ふふふ。」
女神様は、不敵な笑いを浮かべて、ミーレ長官をするりとかわす。
「ミーレ長官、女神様に何をしようとしている?」
オレは、急いで、ミーレ長官と、女神様の間に体を滑り込ませた。
「女神様が。」
とミーレ長官は、仄暗い目を女神様に向けた。
「女神様が、母上に力を授けていれば。」
とミーレ長官。
ミーレ長官にそれ以上言わせるわけにはいかない。
ミーレ長官の考えを頭から、強く否定するわけにもいかない。
「ミーレ長官のお母さんが死んだのは、お母さんに危害を加えた人間が悪い。」
オレは、ミーレ長官に続きを言わせないように、ゆっくりはっきりと話すことにした。
「ミーレ長官。
女神様が、お母さんに力を授けたかどうか、は、お母さんの客死事件の原因になるかな。
ミーレ長官のお母さんの行動や思考が、責められるものだという前提から成り立っていないかな。
ミーレ長官のお母さんの言動が、王族として、配慮に欠けていたところがあったとしても。
ミーレ長官のお母さんが、異国の土地で、死ぬ理由になっていいのかな。」
オレは、ミーレ長官以外に口を挟ませまい、と話を続けた。
部屋の中には、ドリアン王国の侯爵子息がいる。
オレの話に割って入ってこられたら、厄介だ。
「ミーレ長官のお母さんが視察場所に選んだ場所は、視察に適した場所ではなかった。
ミーレ長官が、女神様の力を授かる、授からないについて言及してしまえば。
ミーレ長官のお母さんの振る舞いに原因があった、と、ミーレ長官が肯定することになる。」
ミーレ長官は、オレの話に耳を傾けている。
「ミーレ長官のお母さんが、女神様の力を授かっていたかどうか、は、ミーレ長官のお母さんの客死事件の本質じゃない。
ミーレ長官のお母さんが女神様の力を授かっていたら、死ななかった、なんて、後から付け足しただけの結果論だ。
サーバル王国の視察場所に、ミーレ長官のお母さんを殺そうとした人間がいたことが問題なんだ。
ミーレ長官のお母さんの客死事件で、一番の悪は、ミーレ長官のお母さんを殺そうとして殺した人間だ。」
オレは、ミーレ長官に伝われ、伝われ、と念じながら、話した。
ミーレ長官の反応は、薄い。
反応は薄いけれど、目の端がわずかに反応した。
よし。
「ミーレ長官。
ミーレ長官のお母さんの客死事件で、最も疑わしい下手人は、サーバル王国に自由に出入りしていたドリアン王国の国民だと知らないのかな?」
「場所は、サーバル王国ですよ。ヒサツグ様。」
とミーレ長官。
ミーレ長官の目の仄暗さが薄れた。
表情は、相変わらず動いていないけれど。
「ミーレ長官。
サーバル王国は、ドリアン王国からの侵略が続いている。
サーバル王国とドリアン王国の国民同士が結婚するという形で。」
「侵略ですか?」
とミーレ長官。
「ミーレ長官。侵略は、武力によるものばかりじゃない。
政略結婚は、何のためにあるのか、考えてみてくれ。」
ミーレ長官の目の仄暗さが、薄れていく。
ミーレ長官は、理性的に考えることに慣れている。
追い込まれなければ、冷静でいられる。
オレは、ミーレ長官に、尋ねた。
「ドリアン王国の侯爵子息は?」
オレの話を聞いた侯爵子息が、途中で、オレの話を遮ってくるかも、と警戒していたオレは、最後まで話ができてほっとしたけど、訝しんでもいた。
「いません。」
とミーレ長官。
「え?」
なんだって?
いませんって、言わなかったかな?
「ドリアン王国の侯爵子息は、この部屋にはいません。
この部屋にいるのは、私だけです。」
とミーレ長官。
今のオレにできること。
オレ自身の安全確保は、第一。
ミーレ長官が、オレに危害を加えることがないように立ち回って。
ミーレ長官が、ミーレ長官自身を傷つけることがないようにしないとな。
オレは、ミーレ長官と向き合い、じりじりしながら、愛こんにゃく家を待っている。
愛こんにゃく家は、オレとミーレ長官が向き合って話す間に、歩きで到着できる距離にいたはず。
オレが、最初に大声で話し始めた時に、愛こんにゃく家が歩き出せば。
もう、オレの半径一メートル以内にいてもおかしくない。
でも、愛こんにゃく家の足音がしない。
愛こんにゃく家!
捕まっていたりしないよな?
オレとミーレ長官の間に流れる時間は、止まっているかのようだった。
突然、ミーレ長官が動いた。
オレが身構える間もなく。
ミーレ長官は、無言のまま、動かないオレを素通りして、女神様を掴もうとした。
「ミーレ長官?」
女神様を見て、女神様に何かをする人なんて、今までいなかった。
油断していた。
ミーレ長官が動くなら、矛先は、オレだと思っていた。
「ふふふ、ふふふ。」
女神様は、不敵な笑いを浮かべて、ミーレ長官をするりとかわす。
「ミーレ長官、女神様に何をしようとしている?」
オレは、急いで、ミーレ長官と、女神様の間に体を滑り込ませた。
「女神様が。」
とミーレ長官は、仄暗い目を女神様に向けた。
「女神様が、母上に力を授けていれば。」
とミーレ長官。
ミーレ長官にそれ以上言わせるわけにはいかない。
ミーレ長官の考えを頭から、強く否定するわけにもいかない。
「ミーレ長官のお母さんが死んだのは、お母さんに危害を加えた人間が悪い。」
オレは、ミーレ長官に続きを言わせないように、ゆっくりはっきりと話すことにした。
「ミーレ長官。
女神様が、お母さんに力を授けたかどうか、は、お母さんの客死事件の原因になるかな。
ミーレ長官のお母さんの行動や思考が、責められるものだという前提から成り立っていないかな。
ミーレ長官のお母さんの言動が、王族として、配慮に欠けていたところがあったとしても。
ミーレ長官のお母さんが、異国の土地で、死ぬ理由になっていいのかな。」
オレは、ミーレ長官以外に口を挟ませまい、と話を続けた。
部屋の中には、ドリアン王国の侯爵子息がいる。
オレの話に割って入ってこられたら、厄介だ。
「ミーレ長官のお母さんが視察場所に選んだ場所は、視察に適した場所ではなかった。
ミーレ長官が、女神様の力を授かる、授からないについて言及してしまえば。
ミーレ長官のお母さんの振る舞いに原因があった、と、ミーレ長官が肯定することになる。」
ミーレ長官は、オレの話に耳を傾けている。
「ミーレ長官のお母さんが、女神様の力を授かっていたかどうか、は、ミーレ長官のお母さんの客死事件の本質じゃない。
ミーレ長官のお母さんが女神様の力を授かっていたら、死ななかった、なんて、後から付け足しただけの結果論だ。
サーバル王国の視察場所に、ミーレ長官のお母さんを殺そうとした人間がいたことが問題なんだ。
ミーレ長官のお母さんの客死事件で、一番の悪は、ミーレ長官のお母さんを殺そうとして殺した人間だ。」
オレは、ミーレ長官に伝われ、伝われ、と念じながら、話した。
ミーレ長官の反応は、薄い。
反応は薄いけれど、目の端がわずかに反応した。
よし。
「ミーレ長官。
ミーレ長官のお母さんの客死事件で、最も疑わしい下手人は、サーバル王国に自由に出入りしていたドリアン王国の国民だと知らないのかな?」
「場所は、サーバル王国ですよ。ヒサツグ様。」
とミーレ長官。
ミーレ長官の目の仄暗さが薄れた。
表情は、相変わらず動いていないけれど。
「ミーレ長官。
サーバル王国は、ドリアン王国からの侵略が続いている。
サーバル王国とドリアン王国の国民同士が結婚するという形で。」
「侵略ですか?」
とミーレ長官。
「ミーレ長官。侵略は、武力によるものばかりじゃない。
政略結婚は、何のためにあるのか、考えてみてくれ。」
ミーレ長官の目の仄暗さが、薄れていく。
ミーレ長官は、理性的に考えることに慣れている。
追い込まれなければ、冷静でいられる。
オレは、ミーレ長官に、尋ねた。
「ドリアン王国の侯爵子息は?」
オレの話を聞いた侯爵子息が、途中で、オレの話を遮ってくるかも、と警戒していたオレは、最後まで話ができてほっとしたけど、訝しんでもいた。
「いません。」
とミーレ長官。
「え?」
なんだって?
いませんって、言わなかったかな?
「ドリアン王国の侯爵子息は、この部屋にはいません。
この部屋にいるのは、私だけです。」
とミーレ長官。
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