《本編 完結 続編 完結》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。

かざみはら まなか

文字の大きさ
544 / 673
第9章 オレはケレメイン大公国の大公妃殿下です。

544.カズラくんとドリアン王国の国王陛下。カズラくんは、ドリアン王国の国王陛下に別れをつげています。一方、ドリアン王国の国王陛下は?

しおりを挟む
カズラくんのハリセンから飛び散る火花も氷も。

カズラくんが胸の内に閉じ込めてきた感情から出てきた。

カズラくんは、この世界に戻ってきて、新しい出会いに期待していた。

彼氏の存在に嬉しそうにしているときもあった。

オレに、彼氏の引き抜きを持ちかけたとき。

カズラくんは、自身の幸せな未来を疑っていなかった。

カズラくんは、自身で幸せになろうとしていた。

今よりも前に、気付いてあげられていたらな。

カズラくんのハリセンから飛び散る火花や氷に、胸が痛む。

オレは、ケレメイン大公国の大公妃として、オレ自身の環境変化に慣れようと必死だった。

周りが見えていなかった、というよりも、周りを見て、気遣う余裕がオレにはなかった。

オレは、カズラくんが一人で悩みを抱えていたことに気付けなかった。

日本にいたときのオレなら、同じ職場の後輩の深刻な悩みを取りこぼすことなんて。

はあ。

カズラくんは、オレがカズラくんのことを背負うのが難しい状況だと理解していた。

だから、カズラくんは、オレに助けを求めなかったんだな。

カズラくんに気を遣われていたことを、オレは痛切に感じている。

カズラくんは、オレに気を遣っていることを匂わせなかった。

完全に、周囲に隠し通していた。

カズラくんは、オレと対等である、と主張することはあっても、オレに頼ろうとしたことはない。

交換条件を突きつけてくることはあっても。

悩みの本質を、オレには見せなかった。

オレの二十歳のときなんて、見ず知らずの場所で、単独行動はしなかった。

知らないことは、怖いから。

オレは、今。

猛烈に、反省している。

目の前で責められたり、裏で陰口をたたかれるよりも。

何も言わずに、一人で耐えて、戦ってきたカズラくんの感情がハリセンから漏れてくるのを見ていると。

オレの気の利かなさ、が身に染みる。

いたたまれない。

カズラくんは、胸の内の柔らかい部分については、誰にも言わずに飲み込んできたんだと思う。

オレは、これから、カズラくんに、もう少し気を配るようにしよう。

うるさいよ、と言われる手前ぐらいには、カズラくんを構おう。

よし。

反省して、新たな決心もついた。

「国王に即位する前に、国王に即位するから、と、ぼくに知らせていたら。

ぼく達は円満に別れていた。

どうして、ぼくに打ち明けなかった?

打ち明けるタイミングは、いくらでもあったよね?」
とカズラくん。

カズラくんのハリセンからは、氷のつぶてが飛んでいる。

「別れるなど早計だ。」
とドリアン王国の国王陛下。

ドリアン王国の国王陛下のドリアンの実になった体は、人間だったときの胴体よりも膨らんだ。

ドリアンの実の胴体は、椅子の背もたれからはみ出している。

横に。

カズラくんのハリセンから飛び出している氷のつぶては、ドリアン王国の国王陛下の胴体に集合していく。

氷のつぶては、磁石に集まる砂鉄みたいになっている。

寒くないかな?

ドリアンの実の体だと凍傷の心配をしなくてもいいのかなー?

「別れる以外の選択肢なんてないよね?

ぼくのために生きられない人には、ぼくと結婚する資格なんてないよ。」

「国王は、第二王子でいるよりも、できることが多い。

国王となった私は、カズラのしたいことにも付き合える。」
とドリアン王国の国王陛下。

「ぼくは、ぼくのしたいことに付き合える、と言っている人とは結婚しない。

ぼくのことを二の次三の次にすると宣言していることに気づかない人とは、一緒に暮らせない。

ぼくに捧げる愛は、何かと交換するものじゃない。」
とカズラくん。

愛と引き換えに、利用されることを拒む意思をドリアン王国の国王陛下に告げたカズラくん。

「別れよう、スペンサー。」
とカズラくん。

ドリアン王国の国王陛下は、後ろにいるカズラくんを振り返らない。

「王とは孤独だ。

カズラは、王となる私に寄り添い力になるとは言わないのか?」
とドリアン王国の国王陛下。

「第二王子であることを知らせないまま付き合っていたことの不誠実さを悔やむこともなく。

王になったから、王になった自分を支えろ、という要求を突きつけてくる方が身勝手だとぼくは思うよ。」
とカズラくん。

「カズラの身に余る力は。」
とドリアン王国の国王陛下。

ドリアン王国の国王陛下は、まだ余裕そうにしている。

「ぼくの力は、ぼくが幸せに生きるために、ぼくが努力して手に入れた力。

スペンサー。
彼氏になったから、誤解した?

夢を見た?

結婚したら、スペンサーのために、スペンサーの頼みを聞いて、ぼくが力を使ってくれる、と思った?

スペンサーの都合の良い夢は、ぼくの生き方を否定して、ぼくを利用する腹づもりの上でしか成立しない。

お別れだよ、スペンサー。」
とカズラくん。

「待て、カズラ。早まるな。
別れる必要はない。
結婚しなくてもいいではないか?
私とカズラは、会いたいときに会えばいい。」
とドリアン王国の国王陛下。

「ぼくは、もう、スペンサーに会いたいとは思わない。

だから、今、別れを告げているんだよ。

終わりだよ、スペンサー。

ぼく達は、もう終わりにする。

もう、愛せないよ、スペンサー。」
とカズラくん。
しおりを挟む
感想 84

あなたにおすすめの小説

異世界転移してΩになった俺(アラフォーリーマン)、庇護欲高めα騎士に身も心も溶かされる

ヨドミ
BL
もし生まれ変わったら、俺は思う存分甘やかされたい――。 アラフォーリーマン(社畜)である福沢裕介は、通勤途中、事故により異世界へ転移してしまう。 異世界ローリア王国皇太子の花嫁として召喚されたが、転移して早々、【災厄のΩ】と告げられ殺されそうになる。 【災厄のΩ】、それは複数のαを番にすることができるΩのことだった――。 αがハーレムを築くのが常識とされる異世界では、【災厄のΩ】は忌むべき存在。 負の烙印を押された裕介は、間一髪、銀髪のα騎士ジェイドに助けられ、彼の庇護のもと、騎士団施設で居候することに。 「αがΩを守るのは当然だ」とジェイドは裕介の世話を焼くようになって――。 庇護欲高め騎士(α)と甘やかされたいけどプライドが邪魔をして素直になれない中年リーマン(Ω)のすれ違いラブファンタジー。 ※Rシーンには♡マークをつけます。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

氷の騎士団長様の悪妻とかイヤなので離婚しようと思います

黄金 
BL
目が覚めたら、ここは読んでたBL漫画の世界。冷静冷淡な氷の騎士団長様の妻になっていた。しかもその役は名前も出ない悪妻! だったら離婚したい! ユンネの野望は離婚、漫画の主人公を見たい、という二つの事。 お供に老侍従ソマルデを伴って、主人公がいる王宮に向かうのだった。 本編61話まで 番外編 なんか長くなってます。お付き合い下されば幸いです。 ※細目キャラが好きなので書いてます。    多くの方に読んでいただき嬉しいです。  コメント、お気に入り、しおり、イイねを沢山有難うございます。    

騎士団長の秘密

さねうずる
BL
「俺は、ポラール殿を好いている」 「「「 なんて!?!?!?」」 無口無表情の騎士団長が好きなのは別騎士団のシロクマ獣人副団長 チャラシロクマ×イケメン騎士団長

転生したらスパダリに囲われていました……え、違う?

米山のら
BL
王子悠里。苗字のせいで“王子さま”と呼ばれ、距離を置かれてきた、ぼっち新社会人。 ストーカーに追われ、車に轢かれ――気づけば豪奢なベッドで目を覚ましていた。 隣にいたのは、氷の騎士団長であり第二王子でもある、美しきスパダリ。 「愛してるよ、私のユリタン」 そう言って差し出されたのは、彼色の婚約指輪。 “最難関ルート”と恐れられる、甘さと狂気の狭間に立つ騎士団長。 成功すれば溺愛一直線、けれど一歩誤れば廃人コース。 怖いほどの執着と、甘すぎる愛の狭間で――悠里の新しい人生は、いったいどこへ向かうのか? ……え、違う?

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。

ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。 異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。 二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。 しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。 再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。

【完結済】虚な森の主と、世界から逃げた僕〜転生したら甘すぎる独占欲に囚われました〜

キノア9g
BL
「貴族の僕が異世界で出会ったのは、愛が重すぎる“森の主”でした。」 平凡なサラリーマンだった蓮は、気づけばひ弱で美しい貴族の青年として異世界に転生していた。しかし、待ち受けていたのは窮屈な貴族社会と、政略結婚という重すぎる現実。 そんな日常から逃げ出すように迷い込んだ「禁忌の森」で、蓮が出会ったのは──全てが虚ろで無感情な“森の主”ゼルフィードだった。 彼の周囲は生命を吸い尽くし、あらゆるものを枯らすという。だけど、蓮だけはなぜかゼルフィードの影響を受けない、唯一の存在。 「お前だけが、俺の世界に色をくれた」 蓮の存在が、ゼルフィードにとってかけがえのない「特異点」だと気づいた瞬間、無感情だった主の瞳に、激しいまでの独占欲と溺愛が宿る。 甘く、そしてどこまでも深い溺愛に包まれる、異世界ファンタジー

処理中です...