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赤硝子の城
クローディア(2)
しおりを挟むくるところまできてしまった。貴族に自由恋愛は許されない。そう肝に命じてきたではないか。夜着に着替えさせられたクローディアはタイガの眠るベッドに連れてこられた。
「今夜のそなたは一段と美しいこと。タイガ皇子はきっとそなたのことを気に入るはず。さぁ、自信をお持ちなさい。明日になったらクローディア、そなたは皇子の妃になるのです」
是が非でも皇子の妻にしたいテレサの迫力に呑まれたクローディアは震えが止まらなかった。
「わが一族の繁栄は、聖女であるそなたにかかっています。皇子様のすることにけっして逆らってはいけませんよ」
それとは対照的に大公夫人はどこか不安げだった。
本当にそんなことが起こるのだろうか。恐れ多いとクローディアは思うのだった。紳士的な態度に反して藍色の眼はどこか冷たく感じた。結婚できたとしても、それは形ばかりで、そこには愛情のない生活が待っている。それでは、継母とくらした幼少期と変わらないではないか。
気付けの香を焚いた使用人たちはすごすごと下がった。
一人残されたクローディアはベッドに横になる。ほどなくして皇子は目を覚ましのか、寝返りを打った。目を瞑り、身を固くしていると皇子はこう言った。
「もしや、美しいあなたは、クローディア様?」
驚いたクローディアは目を開けた。なんとあの逢いたかった青年が横たわっているではないか。
「まぁ、エリック様? いったい何が起こったのかしら? 」
「さぁ、僕もなにがなんだか。コンラッド様のご命令で、タイガ様の身代を務めよと仰せつかった次第で、でもクローディア、本当に君なのかい?」
「はい」
もしやこれは夢ではないかしら? そう思ったクローディアは若者が消えてしまわないか心配になった。
「それで、その……」とエリックは口ごもる。
「もしや、このように軽々しく殿方のいらっしゃるベッドに入るような女を、幻滅されたのでしょうか?」
「とんでもない。だってそうでしょう? ここにいる女性がクローディア様じゃなかったら、僕は別な方と、夫婦になるところだったのですから」
「私も、皇子様と……」
ほっとしたクローディアは目に涙を浮かべた。だが、すぐに別の心配事が出てきた。床にいる男が別人としれたら大騒ぎになる。愛しい人に害が及ぶのではないだろうか。けれど、このまま別れてしまうくらいならいっそうのこと、城から追い出されてもよいから、エリックと添い遂げたいと思うのだった。
「このまま朝を迎えましょう。クローディア様は暗闇の中で何も知らなかったことにすればよろしいのです」
「いいえ、今宵、ここにいる殿方こそ、私の夫になるべきお方です。ですから、この身はあなた様のものでございます。どうか、私を抱いてくださりませ」
クローディアは起き上がると、束ねた髪をほどいた。
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