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1ー1 始まり
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「ちょっと、やめてください!」
その声は、静かな夜気を切り裂いた。田舎にある、ほんの少しだけ栄えた駅前。僕は、塾が終わって、家に帰るところだった。
声の聞こえた方にむかう。こっそり見ると、アイツラだった。正確に言えば、アイツラと、女の子。
僕は、建物の影から様子を見ることにした。さすがに心配だからだ。
「そんなでっけぇ声出さなくてもいいだろぉ?」
「私は、あなたたちと遊びたくないって言ったのに、あんたたちが私を無理矢理引っ張るからでしょう?」
「あんたたちだって!この女、俺たちをなめてやがる」
「そろそろ家に帰ってもいいでしょ?」
「おい、てめぇ、いい加減にしねぇと、痛い目に遭うぜ?」
指をポキポキと鳴らしながら女の子をにらむアイツラ。
そろそろ僕の出番だ。
「やってみれるもんなら、やりなさいよ」
それでもなお堂々としていて怖がらない女の子。
「あぁ、じゃあやってやるぜ」
よし、いこう。
僕は咳払いをして女の子とアイツラの間に割り込んだ。
「やぁ、君たち。どうしたんだい?」
「おまえっ」
アイツラは舌打ちをした。
「呼ぶ?」そう言って僕はポケットからスマホを出して、軽く振った。
するとアイツラは踵を返し、どこかへ行ってしまった。
「あ、ありがとう!」
女の子の声を背中で聞きながら、僕も踵を返し、さっさと家へ帰った。
家に帰ると、いつも通りにまた少し勉強して、十一時には布団に入る。
明日から学校だ。今日は春休みの最終日。明日はクラス替えの発表。僕にはあまり関係のない話だ。友達がいないから、クラスに誰がいたって構わない。
夢をみた。僕が変わってしまった日のことだった。
「ねぇねぇー、今日、なにして遊ぶ?」
「何でもいいよー」
あのときの僕は、友達もいて、無邪気で、ふつうの子だった。
なのに、全てが、アイツラのせいで変わってしまった。
僕たちはそのとき、小学生だった。駅前で遊ぼう、ということで、僕と友達は、話しながら歩いていた。それが原因だった。隣にいた友達が、誰かにぶつかったのだ。そのぶつかった人が、アイツラのうちの一人だった。このときからすでに、アイツラは悪い評判を得ていた。
「ごめんなさい」
隣の友達は、すぐにきちんと謝った。
するとアイツラが騒ぎ出した。
「めっちゃ痛いんだけどー?どうしてくれるの、これ。慰謝料だせよ」
「そうだそうだ!金出せ、金!」
「早く出せって言ってんだろうがよぉ!」
アイツラは、軽くぶつかっただけで、けがもしていないのに慰謝料払えと、迫ってきたのだ。そう。アイツラは不良。
そして僕は言った。
「本当に、けがしてるんですか」
「あぁ?なに言ってんだこのガキは。けがしたから金払えって言ってんだよ」
「僕は、けがしてないと思います。だって、」
僕が反論している途中で、アイツラの誰かが僕を蹴った。僕は、あまりの強さに尻餅をつくどころか、頭を思い切り地面にぶつけてしまった。
それを見て友達は、余計に怖がり、友達のうちの誰かが言った。
「涼くんのことはいいから、早く逃げよう!」
つまり友達は、僕をその場において逃げてしまったのだ。助けを求めるのではなく、自分だけを守るために。
一人になった僕をみて、アイツラは嗤った。
そして、僕のカバンを奪い、中から財布を取り出して、僕に財布の入っていないカバンを投げた。僕には、それを止める気力も、体力さえも残っていなかった。ただ、友達に見捨てられたという絶望感が僕を襲っていた。
アイツラは嗤いながらその場を去った。
今思えば、小学生など、そんなものだと思う。まずは自分を優先するのだ。でも、あのときのショックが大きすぎて、もう二度とあんな思いをしたくないと思って、僕は今でも友達をほしいとは思わない。
その声は、静かな夜気を切り裂いた。田舎にある、ほんの少しだけ栄えた駅前。僕は、塾が終わって、家に帰るところだった。
声の聞こえた方にむかう。こっそり見ると、アイツラだった。正確に言えば、アイツラと、女の子。
僕は、建物の影から様子を見ることにした。さすがに心配だからだ。
「そんなでっけぇ声出さなくてもいいだろぉ?」
「私は、あなたたちと遊びたくないって言ったのに、あんたたちが私を無理矢理引っ張るからでしょう?」
「あんたたちだって!この女、俺たちをなめてやがる」
「そろそろ家に帰ってもいいでしょ?」
「おい、てめぇ、いい加減にしねぇと、痛い目に遭うぜ?」
指をポキポキと鳴らしながら女の子をにらむアイツラ。
そろそろ僕の出番だ。
「やってみれるもんなら、やりなさいよ」
それでもなお堂々としていて怖がらない女の子。
「あぁ、じゃあやってやるぜ」
よし、いこう。
僕は咳払いをして女の子とアイツラの間に割り込んだ。
「やぁ、君たち。どうしたんだい?」
「おまえっ」
アイツラは舌打ちをした。
「呼ぶ?」そう言って僕はポケットからスマホを出して、軽く振った。
するとアイツラは踵を返し、どこかへ行ってしまった。
「あ、ありがとう!」
女の子の声を背中で聞きながら、僕も踵を返し、さっさと家へ帰った。
家に帰ると、いつも通りにまた少し勉強して、十一時には布団に入る。
明日から学校だ。今日は春休みの最終日。明日はクラス替えの発表。僕にはあまり関係のない話だ。友達がいないから、クラスに誰がいたって構わない。
夢をみた。僕が変わってしまった日のことだった。
「ねぇねぇー、今日、なにして遊ぶ?」
「何でもいいよー」
あのときの僕は、友達もいて、無邪気で、ふつうの子だった。
なのに、全てが、アイツラのせいで変わってしまった。
僕たちはそのとき、小学生だった。駅前で遊ぼう、ということで、僕と友達は、話しながら歩いていた。それが原因だった。隣にいた友達が、誰かにぶつかったのだ。そのぶつかった人が、アイツラのうちの一人だった。このときからすでに、アイツラは悪い評判を得ていた。
「ごめんなさい」
隣の友達は、すぐにきちんと謝った。
するとアイツラが騒ぎ出した。
「めっちゃ痛いんだけどー?どうしてくれるの、これ。慰謝料だせよ」
「そうだそうだ!金出せ、金!」
「早く出せって言ってんだろうがよぉ!」
アイツラは、軽くぶつかっただけで、けがもしていないのに慰謝料払えと、迫ってきたのだ。そう。アイツラは不良。
そして僕は言った。
「本当に、けがしてるんですか」
「あぁ?なに言ってんだこのガキは。けがしたから金払えって言ってんだよ」
「僕は、けがしてないと思います。だって、」
僕が反論している途中で、アイツラの誰かが僕を蹴った。僕は、あまりの強さに尻餅をつくどころか、頭を思い切り地面にぶつけてしまった。
それを見て友達は、余計に怖がり、友達のうちの誰かが言った。
「涼くんのことはいいから、早く逃げよう!」
つまり友達は、僕をその場において逃げてしまったのだ。助けを求めるのではなく、自分だけを守るために。
一人になった僕をみて、アイツラは嗤った。
そして、僕のカバンを奪い、中から財布を取り出して、僕に財布の入っていないカバンを投げた。僕には、それを止める気力も、体力さえも残っていなかった。ただ、友達に見捨てられたという絶望感が僕を襲っていた。
アイツラは嗤いながらその場を去った。
今思えば、小学生など、そんなものだと思う。まずは自分を優先するのだ。でも、あのときのショックが大きすぎて、もう二度とあんな思いをしたくないと思って、僕は今でも友達をほしいとは思わない。
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