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夏休みは無事に終わった。
「おはよー!久しぶりだねっ!」
桜木さんが元気いっぱいに言う。
「・・・いや、昨日ぶりだったと思うけど」
昨日も例の勉強会があったのだ。とはいっても、夏休み中、ほとんど毎日勉強会だった。しかし、一緒に雑談したり、ご飯を食べたりしていると、苦にならなかった。
僕は呆れながら、ある事に気がついた。いつもなら、このタイミングでだいたい清水がいつものようにニカッと笑って僕に挨拶するのに。教室を見渡したが、清水の姿は見あたらない。
「あれ、清水は?」
彼女は少し顔をしかめる。
「いやー、なんか風邪引いたらしいの」
僕は驚いた。あのどんなウイルスにでも打ち勝てそうな清水が風邪?昨日は特に普段と変わった様子は見られなかった。
「って事で、今日は学校が終わったらお見舞いに行こっ!」
彼女は大きな声で言った。クラスの皆がこちらを見た。
「何、もしかして清水、風邪とか引いたの?」
「おい、あいつ大丈夫かよ」
「清水くんが風邪引くなんて、意外~」
などとみんな言った。
僕は心の奥底で、何かが蠢いたのを感じた。学校を一日休んだだけで、クラスの皆に心配される。なぜか羨ましいと僕は思った。あぁ、この感情は――
「嫉妬、ちょっとしちゃうなぁ~」
能天気な彼女の声がした。まさに僕が今抱いている感情をズバリと当てられているような気がして、
「えっ」
と思わず声を漏らした。
「どうしたの?」
彼女が少し驚いたように僕の顔を覗き込む。僕は慌てて手を振って取り繕った。
「なんでもないよ。それより、本当にお見舞い行くの?」
「もちろんだよ!」
「でもさ、僕じゃない人が行った方が清水も喜ぶんじゃない」
僕が言うと、それに反応したのは彼女ではなく、一度も話した事のないクラスメイトだった。
「俺はそうは思わない。清水、よく滝沢さんと一緒にいるじゃないか」
彼は僕を真っ直ぐな目で見ていた。ものすごく申し訳ないのだが、僕は彼を知らない。いや、知らないという訳ではないのだが、名前も一切覚えてないし、第一、この人がクラスメイトの一人なのだと今初めて知ったのだ。
「・・・すみません。君の、名前は・・・」
尋ねるのが恥ずかしすぎて、僕の声はだんだん尻すぼみしていった。僕は後悔した。よし、今からでもきっと遅くない。最低でもクラスメイトの名前くらい名字だけでもいいから全員覚えておこう。
「あぁ、俺の名前ね。俺は百瀬 悠(ももせ ゆう)。悠って呼んで」
「は、はい・・・」
彼女が爆笑しながら僕の背中をバシバシ叩いた。痛い。前から思っていたが、彼女は力が強い。
「俺も滝沢さんの事、涼って呼んでいい?」
悠が控えめに訊いた。
「い、いいよ」
すると悠は、パァっと笑顔になった。それはそれは嬉しそうで。僕の口角も、少しだけ自然に上がる。
「じっ、実は俺、涼が結構前に読んでた本、俺も読んでたんだ。それで、前から話してみたいなって思ってて・・・」
「僕も知ってる。君が読んでたの見たんだ。これでしょ?」
僕は鞄から本を出した。僕のお気に入りの本。もう何回も読んだ。でもまた読みたくなって、今日学校に持ってきたのだ。
「そうそうっ!それ、本当におもしろいよね!」
悠は少し興奮しているのか、頬が紅潮していた。
僕たちはその本について話していた。ここが良いだとか、主人公が格好いいだとか。しかし、僕たちが熱く語り合っていると、彼女が僕たちを止めた。
「はいはい、一旦話はそこでお終い!もうすぐでホームルーム始まるよ!」
僕は名残惜しかったが、自分の席に着いた。悠が僕に言った。
「また今度話そう!」
僕は嬉しくて、満面の笑みで頷いた。
「おはよー!久しぶりだねっ!」
桜木さんが元気いっぱいに言う。
「・・・いや、昨日ぶりだったと思うけど」
昨日も例の勉強会があったのだ。とはいっても、夏休み中、ほとんど毎日勉強会だった。しかし、一緒に雑談したり、ご飯を食べたりしていると、苦にならなかった。
僕は呆れながら、ある事に気がついた。いつもなら、このタイミングでだいたい清水がいつものようにニカッと笑って僕に挨拶するのに。教室を見渡したが、清水の姿は見あたらない。
「あれ、清水は?」
彼女は少し顔をしかめる。
「いやー、なんか風邪引いたらしいの」
僕は驚いた。あのどんなウイルスにでも打ち勝てそうな清水が風邪?昨日は特に普段と変わった様子は見られなかった。
「って事で、今日は学校が終わったらお見舞いに行こっ!」
彼女は大きな声で言った。クラスの皆がこちらを見た。
「何、もしかして清水、風邪とか引いたの?」
「おい、あいつ大丈夫かよ」
「清水くんが風邪引くなんて、意外~」
などとみんな言った。
僕は心の奥底で、何かが蠢いたのを感じた。学校を一日休んだだけで、クラスの皆に心配される。なぜか羨ましいと僕は思った。あぁ、この感情は――
「嫉妬、ちょっとしちゃうなぁ~」
能天気な彼女の声がした。まさに僕が今抱いている感情をズバリと当てられているような気がして、
「えっ」
と思わず声を漏らした。
「どうしたの?」
彼女が少し驚いたように僕の顔を覗き込む。僕は慌てて手を振って取り繕った。
「なんでもないよ。それより、本当にお見舞い行くの?」
「もちろんだよ!」
「でもさ、僕じゃない人が行った方が清水も喜ぶんじゃない」
僕が言うと、それに反応したのは彼女ではなく、一度も話した事のないクラスメイトだった。
「俺はそうは思わない。清水、よく滝沢さんと一緒にいるじゃないか」
彼は僕を真っ直ぐな目で見ていた。ものすごく申し訳ないのだが、僕は彼を知らない。いや、知らないという訳ではないのだが、名前も一切覚えてないし、第一、この人がクラスメイトの一人なのだと今初めて知ったのだ。
「・・・すみません。君の、名前は・・・」
尋ねるのが恥ずかしすぎて、僕の声はだんだん尻すぼみしていった。僕は後悔した。よし、今からでもきっと遅くない。最低でもクラスメイトの名前くらい名字だけでもいいから全員覚えておこう。
「あぁ、俺の名前ね。俺は百瀬 悠(ももせ ゆう)。悠って呼んで」
「は、はい・・・」
彼女が爆笑しながら僕の背中をバシバシ叩いた。痛い。前から思っていたが、彼女は力が強い。
「俺も滝沢さんの事、涼って呼んでいい?」
悠が控えめに訊いた。
「い、いいよ」
すると悠は、パァっと笑顔になった。それはそれは嬉しそうで。僕の口角も、少しだけ自然に上がる。
「じっ、実は俺、涼が結構前に読んでた本、俺も読んでたんだ。それで、前から話してみたいなって思ってて・・・」
「僕も知ってる。君が読んでたの見たんだ。これでしょ?」
僕は鞄から本を出した。僕のお気に入りの本。もう何回も読んだ。でもまた読みたくなって、今日学校に持ってきたのだ。
「そうそうっ!それ、本当におもしろいよね!」
悠は少し興奮しているのか、頬が紅潮していた。
僕たちはその本について話していた。ここが良いだとか、主人公が格好いいだとか。しかし、僕たちが熱く語り合っていると、彼女が僕たちを止めた。
「はいはい、一旦話はそこでお終い!もうすぐでホームルーム始まるよ!」
僕は名残惜しかったが、自分の席に着いた。悠が僕に言った。
「また今度話そう!」
僕は嬉しくて、満面の笑みで頷いた。
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