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1章
36:父ケルムを助けよう!
しおりを挟むケルム親子が襲われた所に向かいながら情報を集める。先程は胸糞悪い魔王軍は皆殺しにせねばと思ったが、ケルムはラキアと同じ幻獣種なのだ。魔物や神獣、人などの神に造られた種ではない本物だ。ステータスはまだ契約していないから見れていないが親ならラキアとそう大差は無いはずだ。
ケルムの特徴として動きは速いが物理攻撃力とも呼べる者は低いと記録にあった。ケルムの強みはその身に纏う焔と巧みな幻術だ。もし、このケルムを真正面から叩き潰す程の敵なら今回は救出に専念しなければならない。
歯痒いことだが俺にはまだ魔王とも対等に渡り合える師匠ほどの力は持っていない。俺は目標を達成する迄に死にたくは無い。もし、勝てそうならば戦うのだけど。
でだ、もし真正面から勝てる程の敵では無くてケルムに対する相性が良くて成功したのならば俺の全力を持って殲滅する。
まあ、母子ケルムが逃げられたことからも後者の方が高いと踏んでいたら、母ケルムに聞いたところ案の定後者のようだ。
敵は炎を吸収してしまう魔道具を所持して、幻術対策もしてきていたようだ、そして速さに関しては数で囲い込み、逃げれなくさせられたとのこと。魔物は居なかったらしい。人が四方八方から全身鎧で装備を固めて襲ってきたようだ。
敵の指揮官からの指示を聞き、奴らが自分達の捕獲に来たということが分かったそうだ。後は父ケルムが足止めしている間に母子の方はあの湖へと逃げおおせ、そこに俺達が来たという感じだ。
捕獲目的で来たのなら恐らく父ケルムは今捕まえられ移動途中の筈だ。魔王の拠点という事で魔王城と呼ばれている場所へと帰還し隷属、又は洗脳でも施すのだろう。
魔王軍は度々このようにして戦力を増やしているらしい。隷属は首輪や腕輪などの魔道具、洗脳は闇魔法の上位属性の深淵魔法だ。
移動の途中に追いつきたい。隷属の場合は簡単なのだが、洗脳の場合は俺では解除ができない。幻獣を従えさせるとなれば洗脳だと思う
邪神側の勢力というのは強力だが数はこちらと対等ではない。それを補っているのが大量の魔物の使役と強力な力を持った魔物の創造、金や地位で目の眩んだ愚か者に金に困ったゴロツキ、それと隷属などによる強制だ。
感情を持つものには善性と悪性が備わっている。邪神や魔王は悪性の強い者に加護や力を与えている。必ずしも悪性の強い者が向こう側につくわけではないし。悪性は誰しもが持っている物なのでこちら側では互いの足の引っ張り合いが起きているのだ。
そんなこんなで全力で疾走すること5分程で多数の気配を捉えたので、一旦立ち止まり指示を出す。
「敵はまだ、お前達が襲われたところから動いていないみたいだ。まず父ケルムを俺が救出して、父ケルムとお前らは1度離脱させて敵は俺とラキアで殲滅する」
「了解しました」
『お願いいたします』
「おう。あ、子ケルムは一緒に行くぞ」
『何故でしょうか?』
「助けに行ったのに意識があって警戒でもされたら面倒だからね。子ケルムなら小さいから邪魔にならないからね」
『そういうことですか。分かりました。大人しくしていなさいよ』
『任せて!』
子ケルムを頭に乗せて光魔法のステルスで姿を隠し気配を絶って向かっていく
茂みから出て敵の状況を確認していく。どうやらついさっき父ケルムの拘束が完了したようだ。今は出発までのちょっとした休憩と言ったところか。父ケルムは鎖やら槍やらで地面に縫い付けられていた。
敵の数は1000人はいるな
子ケルムが父ケルムの姿を見て飛び出していきそうだったので頭を撫でて落ち着けてやる。
まあ、さっさと助けてこいつらを殲滅しよう。
魔王軍のやつらにぶつかったりしない様に父ケルムへと近づき、父ケルムと俺達を覆うように光魔法のミラージュで幻影を作り出し風魔術で消音の結界を張る。魔力は漏らさないようにしたので気づかれることはない。
「おい、まだ生きてるな。助けに来てやったから少し我慢してくれよ」
俺の声に目を開けて一瞬躊躇するが、俺の頭の上にいる子ケルムを見て安心したのか頷いた。それを確認してから刺さった槍を抜き、アギスを出して鎖を断ち切る。
「ガッ!」
槍を抜いた時に父ケルムが声を上げたが消音結界を張っていたので問題なく障害を抜き去った。そして母ケルムの時と同じようにして傷を治して転移でラキア達の待っているところへ跳んだ。
『これはいったい…』という感じで父ケルムが驚いていたが母子が近寄ってきたので再開のほうに意識が逸れた。
「じゃあ、さっきの湖で待っていてくれ」
『分かりました、お気をつけて』
短く言葉を交わしラキアと共に今度は隠れたりせずに堂々と殺気を放ちながら魔王軍のところへいく。
急の殺気と気配が現われたことで休憩していた魔王軍はこちらを向く。殆どの者が突然の殺気に警戒を示していたものの俺の姿を確認すると馬鹿にした様な感じとなり、ラキアを視界に収めれば下卑た笑みを貼り付けて次々に獲物を構える
ラキアをそんな下卑た笑みで見やがって、こいつらを叩き潰す理由が増えたな
殆どの奴らがその様な感じになるが数人の実力を持ったものは表情を強張らせ、緊張しているのが見える。まあ、強さは他のやつとそう大差ないが。
この中で操られたり隷属されたりしている様な者はいないことは先程父ケルムを助ける時に確認済みだ。
「ラキア、思う存分に暴れろ」
「仰せのままに」
ラキアの姿が光に包まれ、光が無くなると麒麟の姿へと変わった。それを見た敵は少し惚ける。そんな中、ラキアが移動を開始した。【雷纏】を使い左斜め前方に敵を蹴散らしながら突き進んでいく。
「ぎゃぁぁぁぁ!」
「や、やめっ!」
「ぐはぁっ!」
叫び声を上げながら全身鎧を着た人が宙を飛ぶ光景は何か不思議だ。そんな感じに観察していた俺の所へ全体の半分が武器を構えて突撃を掛けてきた。ラキアの戦いぶりを見てもまだ余裕そうな表情をした奴が多かったので、俺の見た目から侮っている馬鹿が多いことが分かる。
折角の戦闘、それも対人戦、1対多の戦いだ。練習台になって貰おうか。アギスを構えるのと同時に幻剣を作り出す。数は5本で。何処までやれるかは増やしていけば分かるだろう。
アギスを出した所で良い物だと感じ取り笑みを深くし、幻剣を出した所で怪訝な表情になる。
そんな敵を視界に入れ、俺はその場から動かずに5本の幻剣を撃ち出した。
5本の幻剣はかなりの速さで飛んでいき、敵が反応することもなく5人の眉間を撃ち抜いた。
「「「「「「「「は?」」」」」」」」
敵の惚けた声が重なる。今、何が起きたのか理解できていないのだろう。ま、戦場にあってそんなとをするのは愚の骨頂と言うほかない。
幻剣が頭を貫通した後も飛剣により俺が操作しているので次々と敵の首を刎ねていく。
何とか防ごうとするものも居るのだが、幻剣は軽い上に剣だけで動いているのでかなり変則的な動きをさせる事が可能だ。
横に剣を倒して幻剣を受け止めようとしたところを、幻剣が倒された剣を中心にして回転して回避し敵を2つに頭から両断。地面すれすれを飛行し、足元からの斬撃。真上からの串刺しなど。変則的な動きに敵は対応できずに突撃を中断。そこに俺は幻剣を5本追加。10本でも特に問題は無かった。空間を把握する技術を師匠に叩き込まれたので目に見えないところでも操作に問題はない。
この空間把握はスキルではない。スキルにもあるのだが、師匠はスキルではない方で出来るようにしろと言われたし、スキルの方は取得していない。理由は師匠の考え方としてあるスキルは仮初めの力であるので、自力で出来るに越したことはないというものだ。これは武技に関しても同じだが、武技は有用な物も多いから学園に入学してから自分達で覚えろとのこと。
飛剣でかなりの数を斬り殺した様だが、所詮10本の剣なので100もいっていない。飛剣を俺の傍に戻し、数を減らすために魔術を行使する。火は意味が無いんだったな。新しく作った雷魔法の奴でいこう!
掌を上に向け、そこに4つの硬貨ほどの球を作り出し、等間隔に敵へ向けて放つ。4つの球はゆっくりと進んでいく。
飛剣が戻り、少し安堵していたところに魔法が放たれ慌てるがそのスピードが遅いことを怪訝に思い足がその場に止まる。勘の良いやつは逃げ出したが、馬鹿はその場に留まった。
歩くほどのスピードで進み敵集団の先頭に到着した
「なんだー?雷魔法の癖にカスみたいな攻」
敵の1人が馬鹿にした様に声を上げた瞬間
ブゥン!バリリリリリリ!
4つの雷球は巨大化し中にいた者に縦横無尽に飛び交う雷撃が襲いかかる
「「「「「「「「ぎゃああああ!」」」」」」」」
声を上げたのと同じ様に油断していた者達が魔法をくらい焼け焦げた。
「う、うわぁぁぁぁ!」
「に、逃げろ!」
「ば、バケモンだ!」
それを見た魔法から逃れた者達が叫び声をあげながら逃走を開始する
逃げられると面倒になるかもしれないから障壁を全員を逃さない広さで半球状に展開する
「何だよこれ!逃げれねえ!」
ギィン!
「な!俺の剣が!」
突然の障壁に驚きの声を上げたり、剣で破壊しようとして逆に剣が折れたことに驚愕したりする。
「逃がさないよ」
そう逃走しようとした敵集団の背後に移動し短く告げ、10の幻剣と共に斬りかかる。
俺の周囲では10の幻剣が乱舞し手や足首を斬り落としていく中、俺はアギスで敵を叩き潰したり斬り裂いたりしながら数を減らしていく。途中で幻剣と魔力の糸を繋ぐことで作り上げた後でも形や大きさを変えれることに気づき、剣を巨大にしたり、小さくしたり、鎌のようにしたりと自由度が更に増した。
そんな事をやっているとラキアが俺の方に加わってきた。どうやら既に半分は殲滅したようだ。ならばこいつらもとっとと片付けてケルム達の元へ向かおう。
数分で敵を殲滅し終え、鎧などの再利用だったりが出来そうな物を回収して移動に使ったのであろう馬を野に放ち、死体は火魔術で燃やし尽くしてケルム親子のいる湖に向かった
ケルム達はあの隠れていた場所にいた。
『ご無事でしたか!』
「ああ、特に問題は無かった」
『そうですか。改めて助けて頂きありがとうございました』
『俺からも礼を言わせてくれ、妻を助けてくれただけでなく俺まで救って貰った。ありがとう』
「良いんだよ。俺が好きでやったことだし、俺の力になってくれるって言うからね」
『その事は既に聞いた。助けてくれたお主の為なら喜んで力となろう!』
「期待しているよ。俺の名はクウガだ」
『クウガよ、契約の為の名を我らに授けてくれ。我等はお主の召喚獣となろう』
「わかった……。父はライル、母はメイル、子はルルだ」
『その名、しかと受け取った。これからよろしく頼む』
「うん、よろしくね」
こうして、3体の新しい仲間が増えた
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