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2章
91:ストーンパレス最下層
しおりを挟む「お、あったあった。もう最後かー、フレッドいねぇとやっぱ早いな」
「まあ、俺たちとはレベルが離れてるからね。そこはしょうがないよ」
ここストーンパレスの最下層である40層へ続く階段を喋りながら下りていく
ソウマが言ったように昨日まで共に攻略していたフレッドだが、王都に一緒に行けなくなったのだ。理由はイヴ。昨日、付き合うことになった2人だが、早速イヴが両親に自慢しに行く為に今日の朝出発した
だから今は俺とソウマだけ。俺達も早く王都に行きたいので朝からダンジョンに突入し、36層から此処まで駆け足で進んできた
道中に出てきた魔物は岩の竜。二足歩行であったり四足歩行であったり姿形に種類がある魔物だった
ここのダンジョンはレベル的にも素材の旨み的にも今の俺達には見合っていない。それにフレッドも居なくなったので更に攻略速度を上げたのだ。そのため現在時刻は11時。7時から攻略を再開したので4時間で踏破してきた事になる
因みに7時と早いのはイヴに出発前の挨拶で起こされたせいだ。担がれたフレッドは眠そうだった
「今回は何が貰えるんだろうな!今からワクワクしてくるぜ!」
ソウマが楽しみにしているのは神造迷宮を攻略した者に与えられる報酬のこと。特殊な力であったり、スキルや道具、武器防具などが得られるのだ
「それよりも最後のボスを倒さないとね。油断は駄目だよ」
「わかってるさ。油断はしねぇ」
ソウマが表情を引き締めて前を見据える
目の前には扉。俺達が近づけば徐々に開いて行く
入口を抜ければ、そこには今迄のボス部屋よりも遥かに広大な空間。光源が無いため真っ暗だが暗闇でも視界の効く俺達には関係が無いのでそのまま歩を進める
後ろで扉が閉まっていく気配を感じながら前を見る。例の如くボスはまだいない
そして、扉が閉まると遠くに見える壁際に明かりが俺達が入ってきた場所から灯っていき、部屋を薄暗い程度に明るくした
薄暗く照らされる空間は、王の間と言ったら良いのだろうか壁際に柱が等間隔に立ち並ぶ。ホワイトとベージュの石畳で分けられた地面は、白の石畳が真ん中を奥まで貫いており、奥にある玉座への道のようだ
玉座にて座るのは豊かな金の髪と髭を持つ、覇者の放つ覇気を撒き散らす男性。その横には全身鎧の騎士。玉座にて座って此方をその鋭い眼光で見据えてくるのは王。そして、横にはその皇帝を守護する様にして立つ騎士。豪奢な防具とマントを装備し、武器は地面に突き立てられた両手剣だろう。絶大な力を秘めた武具によく感じられる力の波動を剣と鎧から感じる
王がおもむろに右手の人差し指で肘掛を叩く
そうして出現したのは、幾つもの光り輝く魔法陣
数は200は超えているかな
出現した大半は全身鎧の騎士。王の横にいた騎士程の強さではない様だ
そして、今迄に戦ってきたボス達に似た気配がそれなりにいるといったところか。感覚的には戦ってきたボス達よりも強くなっている。あの精巧な龍のゴーレムや亀ワームはいない様だ
「時間掛かりそうだし、どうする? こいつら結構レベルも高そうだから皆んなのレベル上げ出来るんじゃね?」
ソウマからの提案
確かに時間が掛かりそうだし、皆んなのレベルも上げれる時に上げておきたい。自分のもだけど
「そうだね。皆んなにも戦ってもらおうか」
「よし、きた。ジアラ、頼むぜ」
「承知した」
ソウマの呼びかけに応じてジアラが召喚される。その姿は人型だが、以前よりも若くなっている。前は80代のお爺さんといった感じだったが、今は40代のかっこいいおじさんといった感じだ
「こっちも頼むよ、皆んな」
『任して~!』
元気一杯な感じでルル
「任せロ」
未だ発音が少し変なファイオス
『了解!』
ルルの親だけあって、こっちも元気なライル
『お任せを』
お淑やかなメイル
「頑張るので後でご褒美下さいね」
気持ちを伝え合って堅苦しさが少し減ったラキア
「おう、何でも聞いてあげるよ」
「ふふっ、ありがとうございます」
『ルルにもご褒美!」
ラキアの笑顔を見ていたら小さな乱入者が横から顔面に飛んできた
「頑張ったらな」
『分かった!ルル頑張るよ!』
ご褒美を貰うために張り切りだすルル。地面に飛び降り、四肢で地面を踏み締めると、その体の大きさは小さい姿からライルとメイルに迫るくらい大きくなり、妖しく揺らめく炎を纏う
ラキアも麒麟の姿になる
さらにジアラも人化を解く。そうして現れたのは竜。その見た目は最初の頃と比べると大きく変わっていない様に見えるが、所々に変化が見られるし、何よりも、大きくなっている
胴の太さ、体の長さは倍では効かないくらいだ。角はより威圧感を増し、背中に一直線に生える毛が雄々しく見せる
こちらの準備は整い、向こうも召喚が終わり、騎士達は隊列を組み終わった様だ。魔法陣の輝きも見えなくなった
よく見える俺の眼は不敵に笑う王を捉えた
良いだろう、その笑顔を崩してみせよう
開戦だ!
~~~~~~
久々の客が来た
久々と言っても、とうに時間という概念から外れた身、どのくらいの月日が流れているのかは分かっていない
それでも長らくやってこなかった客だ
精一杯のもてなしをせねばな
客人の年齢は、まだ成人していないようだが、その纏う空気は本物だ
此度の者は、とんでもないな
久々に滾るのぉ
我にその力、見せてみよ
~~~~~~
「先手必勝! デカイのぶちかますぜ!」
ソウマの元気の良い大声と共に魔力が高まる
確かに目の前に整然と隊列を組んで並ぶ多くの騎士やボス達には有効だろう
俺も魔法を行使する
ソウマは直径15mはある特大サイズの炎球を幾つか繰り出すようなので、干渉しない様に同じのでいく
俺とソウマが作り出した特大炎球は合計12個。それが勢いよく敵に向かって放たれる
それに続くようにしてラキア達召喚獣の皆んなも攻撃を繰り出した
ラキアは【光砲】。ルル、ライル、メイルは【緋焔】。ファイオス、ジアラはブレス
これらの攻撃が敵を襲う
ドガーン!
物凄い音が広場に轟いた
流石にこれだけでは倒せないだろうがそれなりに数は減らせたかな?
と思っていたのだが、なんと、騎士に脱落者はいない様だ。理由は魔力による障壁と、隊列の最前列で盾を持つ騎士達だろう。盾は特殊な光を放っていた
向こうの被害と言えばガーゴイルや天使が見当たらなくなったくらい
いや、上か
どうやら上に飛び上がって視界から外れていただけだった様だ
「ジアラは上の敵を!」
『はっ!』
戦闘時の指揮は俺の役割だ
ジアラが俺の指示を聞き、水の槍や水の刃を放ちながら飛行出来る敵へ向かう
「ソウマ! 敵は思ってたよりも強い、突出はするな! ファイオス、ルル、メイルは固まって好きに暴れろ! ラキアとライルは俺とソウマに続け!」
「了解」
「オオオオォォォ!」
『おっけーい』
『承知』
『わかりました』
『おう』
ファイオスが翼を羽ばたかせて宙へ。それに続いてルルとメイルが宙を駆け上っていく
ここで敵に動きが
騎士達の頭上、数カ所に魔法陣が高速で描かれていく。微かだが詠唱の内容を聞き取った
「合唱魔法か」
合唱魔法。合体魔法とも呼ばれる技術。空中に描いていく魔法陣を基点として複数人で同じ魔法を繰り出す。それらは合わさり、威力、範囲、が大きくなる
だがこの技術はかなり高度なものだ。それを敵さんは恐ろしい速度で構築した凄まじい程の練度
『ラキアは防御を! ソウマは俺の合図で盾持ち騎士の足元から上へ風で! ライルはそこへ攻撃!』
念話に切り替え、指示を出し終えると同時に敵の合唱魔法が放たれた
繰り出された魔法の属性は全て火
これに対してラキアが水の魔法で相殺。防御壁などでは進行の妨げとなるためだ
因みに、ラキアが使えなかった水属性を使えているのは、人の姿になっている際に魔術を練習したのと俺が水属性を持っているのが関係している
その間に俺は魔法を構築。使う属性は風
空気を圧縮して横に長い壁を作り出し、盾を構える最前列の騎士達へ勢いよくぶつけた
先程は爆発のために見えなかった敵の防御手段が今回は空気を圧縮した壁であるので、少しぼやけているが向こう側が見える
先ず展開されたのは純粋な魔力の壁。その後ろに続けて展開されたのは光の壁。前者は魔力操作か【魔力障壁】のスキルのものだが、後者は別のスキルのようだ。見ただけで全てが分かったわけではないが、複数の盾によって成される合唱魔法のようなものかもしれない
分析を終え、このタイミングで指示を出す
『ソウマ!』
『あいよ』
障壁は正面からの攻撃を防ぐものだ。背後や足元は守れない。防御系のスキルには通じない恐れのある常識だが、先程の分析でいけることは確認した
魔法の発動は、自分から離れるほど難しくなると一般では言われている。だが、難しいだけで出来ないものではないし、出来る人もいる。確かな魔力操作技術と空間認識と空間把握が出来ていればなんてことは無い
ソウマによって発動された下からのとてつもない風で盾持ちの騎士達が宙に放り出される。足場がない空中で羽を持たない騎士はもがくことしか出来ない
そんな状況でライルの攻撃が騎士達を襲う
炎の刃が騎士1人につき2個飛んでいき体を斬り裂かれ落ちていく
運良く躱せたり、盾で弾いたりする者もいたが殆どがライルの【炎刃】の餌食となった
俺達が盾持ち騎士を崩している間にファイオス達が巨大球体ゴーレムを破壊し、ジアラはほぼ天使やガーゴイル達を片付けたようだ
『ジアラはファイオス達と合流』
戦況を確認し、指示を出す。こっちにはデカイのがいても余り意味がないからな。その代わり向こうの巨大ゴーレム群とデカくなった宝石竜は任せる
俺達はこのまま騎士達へ突撃する。狙いは向こうの指揮をとっているであろう王と騎士
接近する過程で魔法を撃たれるが全て迎撃し、反撃の魔法や斬撃などをくらわせる。向こうはほぼ盾役が居なくなった状態で非常に防御力が低くなった。魔力による障壁だけではこちらの遠距離攻撃には耐えられない
敵と接触する。既に向こうの隊列は崩れ、あまり意味をなしていない。向こうの駒が騎士とボス達だけだったのも理由だ。弓兵はいないし、騎馬兵もいない。魔法は使えるようだが魔導士には及ばない。合唱魔法が使える時点でいい勝負な気もするが。まあ、つまりだ、遠距離攻撃が向こうは弱い。ボス達はファイオス達が抑えていた上に、強力な遠距離攻撃法を持つ球体ゴーレムも早々に退場した
今やガタガタなモノになった騎士達を屠りながら道を切り開いて進んでいく。騎士達を切っても血は出ず、感触が石人形のものだった。ラキアの突撃やスキルで1度に多くの敵が吹き飛び、ライルの【緋焔】によって燃やされ、ソウマの槍に貫かれて敵が次々と倒されていく
俺も負けじと斬り、蹴り、殴り、投げ、敵を屠って進む
ファイオス達の方は片付いたのだろう、ジアラの氷のブレスが敵を氷の彫像へと変え、ファイオスが砕き、一気に数を減らしていく
敵も反撃してくるが、ルルやメイルのスキルによって在らぬ方向に攻撃したり、こちらの攻撃に突っ込んできたりする
もう殆ど蹂躙の様相を呈していた
その数分後、騎士とボス達は掃討された
残ったのは王とその横にいた騎士のみ
王は不敵に、楽しげに、笑っていた
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