Heroic〜龍の力を宿す者〜

Ruto

文字の大きさ
104 / 122
2章

102:迫られる選択

しおりを挟む

運命とは時に残酷だ


どうしようもなくて

目を逸らしたり

諦めたり

逃げ出してしまうこともあるかもしれない



けれど



その運命に立ち向かう者達がいる

知恵を絞り、己の全てを出し切り、時には運に全てを委ねることもあるかもしれない



運命に挑んだ全ての者が報われる訳ではないけれど、その者達の物語は人々に語り継がれ

賞賛を受け、尊敬される



それ程までに、運命と対峙し、乗り越える事は難しい事なのだ




~~~~~~




結構な大技だったみたいだけどソウマが間に合ったみたいでよかった。二手に別れたのは正解だったね

指揮官っぽい人も消した。あの嫌な感じがあったから【魂葬】使ったけど、悪魔化はしなかった

そして、残ったのは目の前の1人

武器は斧、全身をスケイルメイルで固めている。顔はヘルムの為、見えない

戦っていてわかる。この人は、強い

豪快でいて、しっかりとコントロールされている斧使い。凄まじいパワー

簡単に倒せるような敵じゃない

だが感じる違和感

敵、のはずだ

だが、俺はこの人に会ったことがあるような気がする。感じる既視感、どこか覚えのある気配

確かめるか

相手が魔法を使ってくる様子はない

武器を打ち合い、弾かれた瞬間に風魔法で空気の塊を頭部へとぶつける

カランッ カラン

「なっ……なんで」

ヘルムの下にあったのは知った顔、けれどその表情はまるで見たことのないもの

いや、ある場面の人々に見られるものだ。目の前の現実に絶望し、生きる事を諦めた人の

だが、この人にそんなのは似合わない

強大な敵に立ち向かった、勇気ある人

いずれ共に冒険し、共に戦うことを約束した

昨日、新たなランクSS冒険者の候補に挙がったと聞いたのに。なんで此処にいて、魔王軍のような事をしているのか

「マルドロさん……」

ヘルムが吹き飛んだだけでダメージ自体は殆ど無いようだ。体勢を整え、斧を構え直し突撃してきた。繰り出される斧の連撃

思いもよらなかった事実に少し動揺しながらも、攻撃を両手に持つ剣で弾き、逸らし、反撃を繰り出す

俺の反撃も弾かれたり逸らされる

互いに攻撃を繰り出し、防ぐ

ふと、視界にある物が映った

ヘルムが取れて見えるようになった首元。そこには禍々しい力を放つ黒い首輪

隷属の首輪

邪神によって造られた最悪の産物の1つ。魔王軍が敵対する者達を奴隷とする時に用いる物だ。これの効果は邪神が造っただけあって強力だ。レベルが高ければ効かないということもあるそうだが、隷属の首輪には等級があり、等級が上がればレベルが高くとも隷属させられてしまうらしい

だが、あれさえどうにかしてしまえばマルドロさんを助けられる

けれど、俺には無効化する手段がない。隷属の首輪は基本的に光系統の属性魔法を使って無効化や破壊が可能だった筈だ。しかし、等級が上がるのに比例して光系統魔法の要求レベルが上がる

俺の感覚でしかないが、あの首輪の等級はかなり上。俺の【聖光魔法lv7】では足りない気がする

成功する可能性がない訳ではない

けれど、できない気がするのだ

こういう感覚は大体外れる事はない

ならば他の方法は無いのか。そういった事に有効なスキルは持っていないし、物理的にあの首輪を破壊しても意味は無いと本で読んだ

ならば、どうすればいい

一進一退の攻防の最中で思考を巡らせる

「殺せ」

短く、だが、いくつもの思いが篭った言葉が聞こえた

マルドロさんの顔を見る

表情に変化は無かった。空耳かと思ったが言葉が続けられた

「俺を、殺してくれ」

それは、この人から聞きたくなかった言葉

「マルドロさん、逃げるのか。守るべき人を残して。今から俺が助ける。あんたはあの2人の所に帰るべきだ」

この人には妻も娘も居る。いくら隷属させられ、意にそぐわない事をさせられ、罪を背負っても生きなければならない筈だ

俺はこの人に生きて欲しかったからこそ先程のように声をかけた

しかし、返答は弱々しいものだった

「2人は殺された」

「!」

殺された……?

「2人を人質に取られ、俺が隷属させられて直ぐだ。何もすることが出来なかった俺の前で犯し、壊し、殺された」

俺は2人が生きているものだと決めつけていた。だが、考えてみれば当然じゃないか。マルドロさんクラスの人が隷属されるなんて余程のことがない限りあり得ない。何かが有ったのだと簡単に思いつくじゃないか

ポタ 

雫が地面に落ちた

「俺にはもう、何もないんだ。守るべき者も、帰る場所も」

「……」

言葉が出なかった

俺はどうすればいいんだ

「俺は罪を重ねている。隷属させられてから何人も殺してきた。もうこれ以上誰も殺したくないんだ。だがらクウガ、俺を殺してくれ」

なんで、生きる事を諦めちゃうんだよ

「泣きながらそんな事を言わないでくれよ。一緒に戦おうって、冒険しようって誘ってくれたのはあんたじゃないか。困ったことがあれば力を貸してくれるってそう言ってくれたじゃないか!」

気づいたらそう叫んでいた

この人は共に苦難を乗り越えた、戦友

俺の、守るべき者の1人なんだ

マルドロさんの表情が悲しげなものになる

「すまんな、もう俺にはその資格がないんだよ。復讐する気も起きないんだ。それに、俺はお前になら殺されてもいい。他の知らない奴なんかに殺されるより、お前に殺してほしいんだよ」

「生きていれば、新しい出会いや、いい事だって」

「お前になら分かるだろう。絶対に守ると誓った、誰よりも世界よりも大切な人を失ったんだ。あいつら以上の奴なんてもう、俺には考えられないんだよ」

何も言い返せない。もし、俺がラキアやソウマ、リンガ、他のみんなを守れなかった時、生きようとするだろうか。もし、万が一そうなった時。復讐に囚われるかもしれない。でも、復讐が終わったら? 俺は生きていると言えるだろうか

復讐は何ももたらさない事を知っている。復讐を果たしても居なくなった人たちは戻ってこないのだから

もしマルドロさんを助ける事が出来ても、このままでは彼は自分で死んでしまうだろう。けれど、俺に彼の考えを覆す方法がない

言葉を交わしているとはいえ、今は戦闘中。迷いが隙を生む

振り下ろしの斧に対して防御の姿勢を取ったときに、空いた胴を蹴られ、吹き飛ぶ

「ぐっ!」

吹き飛ばされながらも体勢を直し着地、距離が開く。マルドロさんはその開いた距離を詰めるのではなく、その場で体を右側へと捻りる。彼の誇る最強の技の構え

「クウガ!」

腹の底から出された大声。見えた表情に絶望は無い

「俺を、共に戦った友だと思ってくれているのなら、戦友だと思ってくれているのなら、殺せ!  殺してくれないのなら、お前は友なんかじゃなくて、裏切り者だ!」

それは、卑怯じゃないか

剣の柄を持つ手に力が入る

あの技は威力のみを求めた一撃

俺の今の速さならカウンターで彼を倒せる

こんな時でも冷静な戦力分析が出来る自分が嫌になる

両手に持つ剣を鞘に戻し、1本で居合の構えを取る

波も立たない水面のように、心を無に

そして、俺とマルドロさんは同時に前へ

両者が激突する瞬間、俺がスピードを上げ、マルドロさんが斧を振り上げるよりも速く横を駆け抜けた

ザシュッ!

マルドロさんの左脇腹から右脇へと斬線が走った

「クウガよ、俺のようにはなるんじゃねえぞ……ありがとうな」

彼は立ったまま、その生を終えた




しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~

月城 友麻
ファンタジー
『お前みたいな無能、最初から要らなかった』 恋人に裏切られ、仲間に陥れられ、家族に見捨てられた。 戦闘力ゼロの鑑定士レオンは、ある日全てを失った――――。 だが、絶望の底で覚醒したのは――未来が視える神スキル【運命鑑定】 導かれるまま向かった路地裏で出会ったのは、世界に見捨てられた四人の少女たち。 「……あんたも、どうせ私を利用するんでしょ」 「誰も本当の私なんて見てくれない」 「私の力は……人を傷つけるだけ」 「ボクは、誰かの『商品』なんかじゃない」 傷だらけで、誰にも才能を認められず、絶望していた彼女たち。 しかしレオンの【運命鑑定】は見抜いていた。 ――彼女たちの潜在能力は、全員SSS級。 「君たちを、大陸最強にプロデュースする」 「「「「……はぁ!?」」」」 落ちこぼれ軍師と、訳あり美少女たちの逆転劇が始まる。 俺を捨てた奴らが土下座してきても――もう遅い。 ◆爽快ざまぁ×美少女育成×成り上がりファンタジー、ここに開幕!

異世界と地球がダンジョンで繋がった ー異世界転移者の私ー

黒木夏
ファンタジー
2040年の初春、突如として地球上の主要都市に謎のダンジョンが出現した。 その特異性は明らかで、人口密集地を中心に出現し、未開の地には一切現れないという法則性を帯びていた。 人々は恐怖に震えつつも、未知なる存在に対する好奇心を抑えきれなかった。 異世界転移した最強の主人公のほのぼのライフ

処理中です...