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安田夫婦関連
ジョーの災難4/4
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ロビーは一階だ。エレベーターから出ると、若い女性二人の賑やかな笑い声が耳に届いた。
「もー、安田さんてばいっつもそればっかり。結婚指輪もしてないじゃないですか」
「指輪してないカップルなんていくらでもいるでしょ。ほんと間に合ってるから放っといて」
ーー結構、やな。
うちはついつい笑いそうになる。ジョーの声は表面上明るさを保ったままだが、それは彼の癖のようなものだ。完全に刺のある語調が彼の苛立ちを感じさせる。
「ね、一度くらいつき合ってくださいよ。いいでしょ、減るもんじゃないし。あ、大丈夫です、おごってくれなんて言うようなあさましい女じゃないんで!」
ジョーの苛立ちに気づいているのか、あえて気づかない振りをしているのか、女性の声がまた聞こえる。
エレベーターホールはロビーからすると死角がある。そろりと壁際から覗き込むと、マーシーとジョーの前に、二人の女性が立っていた。髪を緩やかに巻き、小ぶりとはいえあちこちにアクセサリーを身につけた女性と、ストレートヘアをハーフアップにしたコンサバ風な服装の女性。いずれも二十代半ばのようだ。
「ね、これもお仕事と思ってもらっていいですから」
女性の一人がジョーの肘に片手を絡ませる。
ジョーは表面上の笑顔で見返しつつ、
「うち、そういう商売してる会社じゃないんで」
「そんなの分かってますよー」
うちは笑い声を立てそうになるのをどうにか堪えた。ジョーは相手が絡ませた手をやんわり解くような男ではない。必要ならばそのまま一本背負いするような男だーー性別に関係なく。
そうして覗いていたら、マーシーが時計を見て、こちらを見て、ほっとした顔をした。
覗きはこれまでか。
うちは微笑んでひらりと手を振る。
「ーー名取さん」
口にしてから、しまった、という顔をする。癖とはいえ、頑なに旧姓で呼びかけていたマーシーだったが、ここは安田姓を以た方がよかったと思ったのだろう。
そういう細かいところ、可愛ええなぁ。
口元に手を当てながらまた笑う。近づいて来ようとしないうちに焦ったマーシーが、困った顔をしている。それがまたうちを浮き立たせて、ふふ、と笑った。
「ヨーコさん?」
ジョーが振り返ってこちらを見た。うちは微笑んだまま、ゆっくりとそちらへ近づく。
「ご苦労やなぁ」
歩み寄って、マーシーの肘にふわりと手を添える。マーシーが嫌そうな顔をした。
「……名取さん」
「なぁに?」
にこり、と微笑み、マーシーの腕に腕を絡める。こういうときでもないとこんなことはさせてくれないと知っている。せっかくやったら楽しまな損やろ。
いつもはうちの顔を見るなり晴れやかな笑顔になるジョーも、さすがに消耗しているらしい。マーシーの腕に絡んだうちの手を見て、うちの顔を恨めしげに見てくる。マーシーは腕を振りほどいたものかと悩んでいるのだろう、動かずに様子を見ている。
「……ヨーコさん」
「ふふ」
楽しいなぁ。
ちらり、と見やると、女性二人は目を丸くして、うちら三人を順に見ている。うちとマーシーも十離れているが、ジョーとは十五も離れている。いくら若く見えると言われても、一見して分かるほどの年齢差はあるだろうーーという自覚はある。
服の裾をくいくいと引いて振り向かせ、マーシーに微笑んだ。
「可愛らしい格好してはる子たちやね」
「あー、そうですね」
棒読みで返ってきた台詞にまた笑いそうになる。彼女らの服は似合っているかどうか分からないが、それぞれ精一杯魅力的に見せようとしている努力は感じられる。
「若さやなぁ」
ほわりと漏れ出た感想に、女性二人は我に返ったらしい。
「あの……あなたは」
「うち?」
小首を傾げ、わずかの間の後答える。
「マーシーの愛人」
「ちょっと!」
マーシーが慌てて振りほどこうとする腕に、うちはしがみつくように両手を巻付け、上目遣いで唇を尖らせた。
「違うて言うのん?あの夜のことは何やったん?」
「どの夜ですか!何にも無いでしょうよ!おいこらジョー!お前の妻だろどうにかしろ!!」
「マーシー……」
ジョーが冷たい目でマーシーを見る。
「睨むな!僻むな!俺は被害者だ!」
「だって、それ照れてるんじゃないですか?……ねえマーシー。前々から気になってたんですけど、もしかして時々ヨーコさんにときめいたりしてる?ねぇしてるでしょ?」
「だから何なのお前!もう俺帰るから!子供の迎えあるから!ーー名取さんも!解放してくださいよ!」
詰め寄るジョーに懇願するマーシー。うちは頑なに腕を離さず、むしろ豊満な胸を擦り寄せて見上げる。
「へえーーたまにはときめいてくれてはるん?」
口の端を引き上げ、じっと目を見つめると、うちの目にも分かるほどマーシーがうろたえた。
きゃ。可愛い反応。今きゅんとしたわ。
マーシーは目をそらして奥歯を噛みしめる。うちは喉の奥でくつくつと笑いながら、腕にこつりと頭をぶつけてみる。
途端ーージョーの目に、焦燥と激情が映った。
ーーさすがにもうおふざけはおしまいやな。
腐っても夫、マーシーへのときめきはそれとして、うちにとっては大事な男である。
うちはふっと笑ってマーシーの腕を解放した。マーシーがほっとしたのを感じてまた笑いそうになる。次いでジョーを見やると、その目はいつもの明るさを取り戻していた。
「はあ、楽しかった」
「それはよかった。ーー俺は切なかったですけど」
「ふふ」
言い合いながらジョーのすぐ隣に立つ。いつもの距離感でありながら、それは親密な関係でなければ取り得ない距離感だ。それを察して、二人の女性が不満げにうちとジョーを見比べた。
「安田さんは、若い子に色目使うような人がいいんですか?」
言ったのはハーフアップの方。大人しめな顔立ちだが、こちらの方が気が強いのだろう。
うちは微笑みを返した。隣に立つジョーが瞬時に帯びた殺気を手で制する。
「若いなぁ」
うちにもこんなときがあっただろうか。ーーあまりなかったような気もする。
「うちのワンコが欲しければ、いつでも譲るで」
ジョーが複雑な表情をしたのを見てまた笑い、女性たちに向き直る。
「でも、若さを過信してる内は無駄やろうなぁ」
ジョーのネクタイをぐいと引っ張る。ジョーはうろたえつつ上体を倒した。うちはその首筋に頬を寄せ、二人の女性に挑発的な流し目を送る。ワインレッドの口紅を引いた唇を引き上げて微笑むと、囁くように静かに言った。
「この子、すっかりうちに懐いとるさかい。なあ、ジョー?」
首筋に息を吹きかけて夫の名を呼びながら、ネクタイを掴んでいない方の手指を、頬につつと走らせる。
ジョーの喉がごくりと動いた。それを見て、笑う。
「ダメやろ、そんなんしたら噛み付きたくなる」
低く囁きながら、頬から顎に伝い下りた指を、彼の喉仏にそっと這わせた。ジョーの頬が紅潮し、潤んだ目でうちを見る。
「よ、ヨーコさん……」
うちは笑みを返し、手を下ろすとジョーから半歩離れた。女性二人は目を丸くして見ていたが、その頬は紅潮している。
もう戦闘意欲はないみたいやな。
そう確認して、マーシーを振り返る。
「さて、うちは仕事があるさかい。マーシー、お礼楽しみにしてるで」
「え、ちょ、ヨーコさんまだ帰りじゃないの!?」
「何言うとるん、忙しいときに。家でお利口に待っとき」
「マジで!?てっきりこのまま一緒に帰れると思ってたから油断してーー」
ジョーの口をマーシーの手が覆う。もぐ、とその手の下でジョーが何か言いかけるが、マーシーは女性二人を示して言った。
「こんなとこで際どい台詞言うなよ。セクハラとでも言われたらどうする」
「いや、だってーーあっ」
すたすたとエレベーターに向かううちの背中に気づいて、ジョーが声をあげた。
「よ、ヨーコさぁん!」
うちはひらりと片手を振って、エレベーターに乗ると自分のフロアのボタンを押す。
ーー後はマーシーがうまくまとめてくれるやろ。
うちはふと感じた香りに、自分の指先を鼻へと近づける。
わずかに残ったジョーの香りーー
自然と引き上がった唇で、指先に軽く触れた。
デスクに戻ると、アキちゃんが目を上げた。
「どうでした?間に合いました?」
「ギリギリな」
うちが答えると、アキちゃんは引き攣った顔になった。
「何や?」
「いや、間に合ってよかったです……」
ジョーは一見温和に見えるが、それは内側に持つ激情をあえて制御する気がないからだ。怒りたければ怒る。徹底的に。だからこそ、比較的いつも機嫌がいい。
まあ要するに、わがままの一種やな。
「ヨーコさん。私たまに思うんですけど」
「うん?」
「ヨーコさんが本気で他の人に心を移しちゃったら、安田さんどうなるんでしょう」
うちはアキちゃんの横顔を見て、首を傾げ、笑った。
「まあ、あれやな」
うちの明るい声に、アキちゃんは聞きたいような聞きたくないような、という気持ちが全面に出た顔をこちらに向ける。
「その相手もうちも殺して、自分も死ぬやろうな」
さらりと言うと、アキちゃんは耳を覆ってデスクに肘をついた。
「あああやっぱり!聞くんじゃなかった!聞くんじゃなかったっっ!」
ぶんぶん首を振る様子を見ながら、うちは笑って壁にかかった時計を見やる。
「今日は9時前に帰るで」
「え?あ、はい」
キョトンとしたアキちゃんの目を見て、うちは微笑む。
「うちで大型犬が待ってるからな。おいたする前に帰らな」
それを聞くなり、アキちゃんは愛嬌のある笑顔になった。
さてーー今日の夕飯は何やろか。
「もー、安田さんてばいっつもそればっかり。結婚指輪もしてないじゃないですか」
「指輪してないカップルなんていくらでもいるでしょ。ほんと間に合ってるから放っといて」
ーー結構、やな。
うちはついつい笑いそうになる。ジョーの声は表面上明るさを保ったままだが、それは彼の癖のようなものだ。完全に刺のある語調が彼の苛立ちを感じさせる。
「ね、一度くらいつき合ってくださいよ。いいでしょ、減るもんじゃないし。あ、大丈夫です、おごってくれなんて言うようなあさましい女じゃないんで!」
ジョーの苛立ちに気づいているのか、あえて気づかない振りをしているのか、女性の声がまた聞こえる。
エレベーターホールはロビーからすると死角がある。そろりと壁際から覗き込むと、マーシーとジョーの前に、二人の女性が立っていた。髪を緩やかに巻き、小ぶりとはいえあちこちにアクセサリーを身につけた女性と、ストレートヘアをハーフアップにしたコンサバ風な服装の女性。いずれも二十代半ばのようだ。
「ね、これもお仕事と思ってもらっていいですから」
女性の一人がジョーの肘に片手を絡ませる。
ジョーは表面上の笑顔で見返しつつ、
「うち、そういう商売してる会社じゃないんで」
「そんなの分かってますよー」
うちは笑い声を立てそうになるのをどうにか堪えた。ジョーは相手が絡ませた手をやんわり解くような男ではない。必要ならばそのまま一本背負いするような男だーー性別に関係なく。
そうして覗いていたら、マーシーが時計を見て、こちらを見て、ほっとした顔をした。
覗きはこれまでか。
うちは微笑んでひらりと手を振る。
「ーー名取さん」
口にしてから、しまった、という顔をする。癖とはいえ、頑なに旧姓で呼びかけていたマーシーだったが、ここは安田姓を以た方がよかったと思ったのだろう。
そういう細かいところ、可愛ええなぁ。
口元に手を当てながらまた笑う。近づいて来ようとしないうちに焦ったマーシーが、困った顔をしている。それがまたうちを浮き立たせて、ふふ、と笑った。
「ヨーコさん?」
ジョーが振り返ってこちらを見た。うちは微笑んだまま、ゆっくりとそちらへ近づく。
「ご苦労やなぁ」
歩み寄って、マーシーの肘にふわりと手を添える。マーシーが嫌そうな顔をした。
「……名取さん」
「なぁに?」
にこり、と微笑み、マーシーの腕に腕を絡める。こういうときでもないとこんなことはさせてくれないと知っている。せっかくやったら楽しまな損やろ。
いつもはうちの顔を見るなり晴れやかな笑顔になるジョーも、さすがに消耗しているらしい。マーシーの腕に絡んだうちの手を見て、うちの顔を恨めしげに見てくる。マーシーは腕を振りほどいたものかと悩んでいるのだろう、動かずに様子を見ている。
「……ヨーコさん」
「ふふ」
楽しいなぁ。
ちらり、と見やると、女性二人は目を丸くして、うちら三人を順に見ている。うちとマーシーも十離れているが、ジョーとは十五も離れている。いくら若く見えると言われても、一見して分かるほどの年齢差はあるだろうーーという自覚はある。
服の裾をくいくいと引いて振り向かせ、マーシーに微笑んだ。
「可愛らしい格好してはる子たちやね」
「あー、そうですね」
棒読みで返ってきた台詞にまた笑いそうになる。彼女らの服は似合っているかどうか分からないが、それぞれ精一杯魅力的に見せようとしている努力は感じられる。
「若さやなぁ」
ほわりと漏れ出た感想に、女性二人は我に返ったらしい。
「あの……あなたは」
「うち?」
小首を傾げ、わずかの間の後答える。
「マーシーの愛人」
「ちょっと!」
マーシーが慌てて振りほどこうとする腕に、うちはしがみつくように両手を巻付け、上目遣いで唇を尖らせた。
「違うて言うのん?あの夜のことは何やったん?」
「どの夜ですか!何にも無いでしょうよ!おいこらジョー!お前の妻だろどうにかしろ!!」
「マーシー……」
ジョーが冷たい目でマーシーを見る。
「睨むな!僻むな!俺は被害者だ!」
「だって、それ照れてるんじゃないですか?……ねえマーシー。前々から気になってたんですけど、もしかして時々ヨーコさんにときめいたりしてる?ねぇしてるでしょ?」
「だから何なのお前!もう俺帰るから!子供の迎えあるから!ーー名取さんも!解放してくださいよ!」
詰め寄るジョーに懇願するマーシー。うちは頑なに腕を離さず、むしろ豊満な胸を擦り寄せて見上げる。
「へえーーたまにはときめいてくれてはるん?」
口の端を引き上げ、じっと目を見つめると、うちの目にも分かるほどマーシーがうろたえた。
きゃ。可愛い反応。今きゅんとしたわ。
マーシーは目をそらして奥歯を噛みしめる。うちは喉の奥でくつくつと笑いながら、腕にこつりと頭をぶつけてみる。
途端ーージョーの目に、焦燥と激情が映った。
ーーさすがにもうおふざけはおしまいやな。
腐っても夫、マーシーへのときめきはそれとして、うちにとっては大事な男である。
うちはふっと笑ってマーシーの腕を解放した。マーシーがほっとしたのを感じてまた笑いそうになる。次いでジョーを見やると、その目はいつもの明るさを取り戻していた。
「はあ、楽しかった」
「それはよかった。ーー俺は切なかったですけど」
「ふふ」
言い合いながらジョーのすぐ隣に立つ。いつもの距離感でありながら、それは親密な関係でなければ取り得ない距離感だ。それを察して、二人の女性が不満げにうちとジョーを見比べた。
「安田さんは、若い子に色目使うような人がいいんですか?」
言ったのはハーフアップの方。大人しめな顔立ちだが、こちらの方が気が強いのだろう。
うちは微笑みを返した。隣に立つジョーが瞬時に帯びた殺気を手で制する。
「若いなぁ」
うちにもこんなときがあっただろうか。ーーあまりなかったような気もする。
「うちのワンコが欲しければ、いつでも譲るで」
ジョーが複雑な表情をしたのを見てまた笑い、女性たちに向き直る。
「でも、若さを過信してる内は無駄やろうなぁ」
ジョーのネクタイをぐいと引っ張る。ジョーはうろたえつつ上体を倒した。うちはその首筋に頬を寄せ、二人の女性に挑発的な流し目を送る。ワインレッドの口紅を引いた唇を引き上げて微笑むと、囁くように静かに言った。
「この子、すっかりうちに懐いとるさかい。なあ、ジョー?」
首筋に息を吹きかけて夫の名を呼びながら、ネクタイを掴んでいない方の手指を、頬につつと走らせる。
ジョーの喉がごくりと動いた。それを見て、笑う。
「ダメやろ、そんなんしたら噛み付きたくなる」
低く囁きながら、頬から顎に伝い下りた指を、彼の喉仏にそっと這わせた。ジョーの頬が紅潮し、潤んだ目でうちを見る。
「よ、ヨーコさん……」
うちは笑みを返し、手を下ろすとジョーから半歩離れた。女性二人は目を丸くして見ていたが、その頬は紅潮している。
もう戦闘意欲はないみたいやな。
そう確認して、マーシーを振り返る。
「さて、うちは仕事があるさかい。マーシー、お礼楽しみにしてるで」
「え、ちょ、ヨーコさんまだ帰りじゃないの!?」
「何言うとるん、忙しいときに。家でお利口に待っとき」
「マジで!?てっきりこのまま一緒に帰れると思ってたから油断してーー」
ジョーの口をマーシーの手が覆う。もぐ、とその手の下でジョーが何か言いかけるが、マーシーは女性二人を示して言った。
「こんなとこで際どい台詞言うなよ。セクハラとでも言われたらどうする」
「いや、だってーーあっ」
すたすたとエレベーターに向かううちの背中に気づいて、ジョーが声をあげた。
「よ、ヨーコさぁん!」
うちはひらりと片手を振って、エレベーターに乗ると自分のフロアのボタンを押す。
ーー後はマーシーがうまくまとめてくれるやろ。
うちはふと感じた香りに、自分の指先を鼻へと近づける。
わずかに残ったジョーの香りーー
自然と引き上がった唇で、指先に軽く触れた。
デスクに戻ると、アキちゃんが目を上げた。
「どうでした?間に合いました?」
「ギリギリな」
うちが答えると、アキちゃんは引き攣った顔になった。
「何や?」
「いや、間に合ってよかったです……」
ジョーは一見温和に見えるが、それは内側に持つ激情をあえて制御する気がないからだ。怒りたければ怒る。徹底的に。だからこそ、比較的いつも機嫌がいい。
まあ要するに、わがままの一種やな。
「ヨーコさん。私たまに思うんですけど」
「うん?」
「ヨーコさんが本気で他の人に心を移しちゃったら、安田さんどうなるんでしょう」
うちはアキちゃんの横顔を見て、首を傾げ、笑った。
「まあ、あれやな」
うちの明るい声に、アキちゃんは聞きたいような聞きたくないような、という気持ちが全面に出た顔をこちらに向ける。
「その相手もうちも殺して、自分も死ぬやろうな」
さらりと言うと、アキちゃんは耳を覆ってデスクに肘をついた。
「あああやっぱり!聞くんじゃなかった!聞くんじゃなかったっっ!」
ぶんぶん首を振る様子を見ながら、うちは笑って壁にかかった時計を見やる。
「今日は9時前に帰るで」
「え?あ、はい」
キョトンとしたアキちゃんの目を見て、うちは微笑む。
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