神崎家シリーズSS集

松丹子

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安田夫婦関連

ジョーの災難おまけ(橘家)

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「ただいまぁ」
「お帰り。お疲れさん」

 がちゃりとドアが開いて彩乃の声が聞こえた瞬間、俺と一緒に食卓に料理を並べていた息子たちが駆け出した

「お母さんおかえりー!」

「ただいま悠人」

「今日ねぇ悠人ご飯作るの手伝ったんだよ!」

「健人も手伝った!」

「ほんとぉ偉いわねぇ~」

 わいわい騒ぎながらリビングへと入って来た彩乃は手を伸ばす末娘を抱き上げる。小柄な彼女もそうしているとしっかり母親らしく見える。仕事中はきりりとした風格も、子どもの前では力が抜けている。

「はあ、いいにおい。お腹空いたぁ」

「今できたとこだから、手洗って来いよ」

「はぁい。ありがとう」

 彩乃は荷物を台に置いて、手を洗いに行った。子どもたちもわらわらついて行って、賑やかに今日あったことを話している。

 戻って来た彩乃の顔を見ていたら、気づいて首を傾げた。

「どうしたの?人の顔、じっと見て」

「いや、別に」

 俺は微笑んで、ふと湧いたいたずら心に、彩乃の頬に片手を伸ばす。

 彩乃がたじろいで目を泳がせた。

「ご、ごはん」

「うん」

「こ、子どもたちが」

「うん」

 伸ばした手を首後ろへと滑らせると、頭一つ下にある額に口づけた。

「悠人もちゅー」

「健人もー」

 息子たちが彩乃の手を引っ張り、かがませたところで頬に口づける。
 俺は笑った。

「人気者だな」

「人生最大のモテ期かも」

 笑った彩乃は、改めて俺を見る。

「で、どうしたの?」

「うん?あー、いや」

 俺は苦笑した。

 正直、名取さんが周囲に遠慮なく色気を放出するところを初めて見たので、さすがにうろたえたのだが、それを言うのは憚られた。ただでさえ自分に色気がないと気にしている妻だ。

「やっぱり彩乃が一番だなと思っただけ」

 彩乃は目を丸くして、頬を赤らめた。

「な、何よもう、急に。いただきますっ。ほら、悠人と健人も。礼奈も食べようね」

「うんっ、いただきまーす!」

「いただきまーす」

 家族が思い思いに食べはじめたのを見ながら、俺も手を合わせて食べ始める。不意に彩乃が言った。

「わ、私だって、……そう思ってるよ」

 料理をつつく手を止めず、さりげなさを装ったらしいが、その顔は真っ赤になっている。

「お、お父さんのご飯美味しいしいねー!悠人たちは何手伝ったの?」

「玉ねぎむいたー!」

「健人野菜洗ったー!」

 自分のことを見てもらおうと、子どもたちが自己主張を始める。

 彩乃はそれに相づちを打ちながら、幸せそうに笑っていた。

 

 今日も、我が家は平和だ。
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