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第四章 曇天をさらう暴風雨 (ヒメ/阿久津交互)
04 改札横の座敷童
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一ヶ月経ってもまだいるようなら、一度食事に行ってやってもいいかと思っていた。
同時に、その頃にはもう飽きていることを期待してもいた。
なのに澤田は、馬鹿なのか健気なのか一途なのか、本当に一ヶ月、毎日、改札横に立っていた。
馬鹿か。俺程度の男、その辺にゴロゴロいるだろ。
そう思う。いや、正直を言えば、俺以上の男だってゴロゴロいる。実際、俺の周りにいるんだから間違いない。
最後通牒のように諦めないのか聞いた俺に、澤田はあっさりと言った。
「私は阿久津さんとお近づきになりたいんです。他の人のことなんてどうでもいいんです」
まっすぐに俺を見返してくる目に、嘘はない。
救った覚えもない女。
偶然近くにいただけなのに、勝手に俺をヒーロー扱いして、勝手に好意を寄せて、勝手に付きまとって、勝手に俺のコミュニティに踏み込んで来た。
そして心にすら、土足で踏み込んで来ようとしている。
そのまっすぐさに戸惑いつつ、拒否しきれない自分がいる。
今までにそんな女がいなかったから……というだけではない。
そのことには、薄々感じていた。
拒否しきれないのは多分、そのまっすぐさに、気づかぬうちに捨ててしまった、自分の姿を思い出すからだ。
昼休みになると、スマホがメッセージの受信を告げた。
【お疲れさまです!澤田です。よろしくお願いします】
うるさいくらいに絵を送って来るかと思いきや、絵文字すらないシンプルな文面だけだった。
俺はやや拍子抜けしつつ、返答はあっさりすることにした。
【お疲れ。よろしく】
しばらくの後、また着信。
【朝、出張のとき、教えてもらえると助かります】
っておい。改札横の座敷童、まだ継続する気か?
思っていると、
【朝、阿久津さんの顔見ると、元気になるので】
このコワモテで元気出るって……コイツの脳はどういう構造してんだ?
ツッコミどころが満載過ぎて返答に困る。俺は返事を送ることを断念し、嘆息してスマホをデスク横に置いた。
また着信音がする。見ると橘からだ。
【ヒメちゃんに連絡先教えたよ。よかった?】
事後承諾かよ。まあ別にいいけどさ、俺が言ったんだし。
【あの子、意外と根性あるね。私結構好きよ】
あっそ。だから何だよ。
お前が好きだからって、俺が好きになるとは限らないだろ。
確かに、根性はあるみたいだけど。
思っていると、また澤田からのメッセージが届く。
【でも、本当に、本当に、嫌だったら、言ってください。阿久津さんに嫌な思いをさせたいんじゃないので】
俺はそれを見て、つい苦笑した。
【お前、馬鹿なの?】
返すと、
【はい、馬鹿です】
笑顔の絵と共に返ってきた。
ほんと、馬鹿なやつ。
一息ついて、窓の外を見る。
澤田と最初に会った頃には刺すようだった日差しは、もうだいぶ秋めいていた。
一か月の移ろいを、確かに感じる。
またスマホに目を落とした。
決着は、早い方がいいだろう。
お互いのためにも。
思って、また画面に触れた。
同時に、その頃にはもう飽きていることを期待してもいた。
なのに澤田は、馬鹿なのか健気なのか一途なのか、本当に一ヶ月、毎日、改札横に立っていた。
馬鹿か。俺程度の男、その辺にゴロゴロいるだろ。
そう思う。いや、正直を言えば、俺以上の男だってゴロゴロいる。実際、俺の周りにいるんだから間違いない。
最後通牒のように諦めないのか聞いた俺に、澤田はあっさりと言った。
「私は阿久津さんとお近づきになりたいんです。他の人のことなんてどうでもいいんです」
まっすぐに俺を見返してくる目に、嘘はない。
救った覚えもない女。
偶然近くにいただけなのに、勝手に俺をヒーロー扱いして、勝手に好意を寄せて、勝手に付きまとって、勝手に俺のコミュニティに踏み込んで来た。
そして心にすら、土足で踏み込んで来ようとしている。
そのまっすぐさに戸惑いつつ、拒否しきれない自分がいる。
今までにそんな女がいなかったから……というだけではない。
そのことには、薄々感じていた。
拒否しきれないのは多分、そのまっすぐさに、気づかぬうちに捨ててしまった、自分の姿を思い出すからだ。
昼休みになると、スマホがメッセージの受信を告げた。
【お疲れさまです!澤田です。よろしくお願いします】
うるさいくらいに絵を送って来るかと思いきや、絵文字すらないシンプルな文面だけだった。
俺はやや拍子抜けしつつ、返答はあっさりすることにした。
【お疲れ。よろしく】
しばらくの後、また着信。
【朝、出張のとき、教えてもらえると助かります】
っておい。改札横の座敷童、まだ継続する気か?
思っていると、
【朝、阿久津さんの顔見ると、元気になるので】
このコワモテで元気出るって……コイツの脳はどういう構造してんだ?
ツッコミどころが満載過ぎて返答に困る。俺は返事を送ることを断念し、嘆息してスマホをデスク横に置いた。
また着信音がする。見ると橘からだ。
【ヒメちゃんに連絡先教えたよ。よかった?】
事後承諾かよ。まあ別にいいけどさ、俺が言ったんだし。
【あの子、意外と根性あるね。私結構好きよ】
あっそ。だから何だよ。
お前が好きだからって、俺が好きになるとは限らないだろ。
確かに、根性はあるみたいだけど。
思っていると、また澤田からのメッセージが届く。
【でも、本当に、本当に、嫌だったら、言ってください。阿久津さんに嫌な思いをさせたいんじゃないので】
俺はそれを見て、つい苦笑した。
【お前、馬鹿なの?】
返すと、
【はい、馬鹿です】
笑顔の絵と共に返ってきた。
ほんと、馬鹿なやつ。
一息ついて、窓の外を見る。
澤田と最初に会った頃には刺すようだった日差しは、もうだいぶ秋めいていた。
一か月の移ろいを、確かに感じる。
またスマホに目を落とした。
決着は、早い方がいいだろう。
お互いのためにも。
思って、また画面に触れた。
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