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第八章 天の川の渡り方(ヒメ/阿久津交互)
01 5分間の逢瀬
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それから、私と阿久津さんは、また毎朝駅のホームで会うようになった。
変わったことと言えば、阿久津さんの乗る電車が一本早くなったことと、会った後、五分ほど会話を交わすようになったことか。
私から食事に誘うことも考えたけど、阿久津さんだって、恋愛経験が乏しいわけではない。本当にその気になってくれれば、いずれ向こうから誘ってくれるはず。そう自分に言い聞かせるようにして、とにかく二人で過ごす短い時間を楽しむようにしていた。
話すことといえば、だいぶ涼しくなったとか、でもまたすぐ寒くなるとか、そういうくだらない話ばかりだったけど、私にとっては幸せな時間だ。約一ヶ月経ち、十月になった今でも、二人で話しているときのときめきは変わらない。
まるで中学生のとき、初めてできた彼氏との登下校の時間のようだ。
うきうきして、気恥ずかしくて、でも楽しくて、何てことのない毎日がキラキラして見える。そんな感じ。
阿久津さんは、一ヶ月前まで自分が乗っていた電車を見送り、ホームの人が落ち着く頃になると、じゃあなと言って去っていく。
生真面目なくらい正確なそのリズムに馴染んできた頃、私はようやく気づいた。
阿久津さんが乗っていた電車の一本後には、アヤノさんとマサトさんが乗っていることが多い。
阿久津さんから直接何か聞いた訳ではないけど、この夫婦が阿久津さんにとって、ただの同期でないことは、私も薄々感じていた。
感じていたけど、それがどういう人なのか、まだ確認する勇気はない。いつ会ってもにこやかに挨拶してくれるアヤノさんに、同じテンションで挨拶を返すのが辛くなってきた私は、アヤノさんたちと会わないよう、二人が降りて来る電車の、二人があまり乗らない車両に乗るようになった。
それが避けているようで心苦しくて、そういえば私はこういう気を遣う人付き合いをしたこともなかったんだなぁ、なんて気づいた。
阿久津さんには、色んなことを学ばせてもらってる気がする。
いつも通り、一足先にホームで阿久津さんを待っていると、スマホにメッセージが届いた。見ると津田ちゃんからだ。
一か月後の十一月最初の土曜日、ソラちゃんの結婚式が静岡の浜松で開かれる。
津田ちゃんや荒木くんとは、結婚式のときにプレゼントを贈るのもいいけど、逆に新婚旅行の後がいいんじゃないか、という話で落ち着いた。新婚旅行でお土産などの気を遣わせないようにしようとの配慮だ。
【あの後、どうしてますか? 来月、静岡で会えるのを楽しみにしています】
津田ちゃんとは、あの後連絡を取っていない。
ちゃんと伝えなきゃと思うのだけど、電話で言うにもメッセージを送るにも、誤解が生じたらと思うと連絡する勇気が持てないのだ。
スマホの画面を眺めて、嘆息する。この一ヶ月、どんな気持ちで津田ちゃんは私からの連絡を待っていたんだろう。これからの一ヶ月、どんな気持ちで私と会う日を待つのだろう。
もし、私だったら……
もしかしたら応えてくれるかもしれないという儚い期待と、でもやっぱり駄目かもしれないという不安を抱えながら、そんなに長く待っていられるだろうか。
相手を思いやって、ただ、黙って。
不意に、阿久津さんの言葉を思い出した。
ーー突き進んでいる間は、人間、熱心でいられるもんだ。
津田ちゃんは、どうなんだろう。
一方で私はもう、立ち止まることなんてできそうにない。
阿久津さんのことが好きだから。
ふと目の前が影った。かと思うと、阿久津さんが首を傾げて立っている。
「どうした?」
低い声は、わずかにハスキーだ。
と、最近気づいた。
そのたった一言だけで、胸が高鳴る。
「なんでも、ないです」
私は笑った。笑おうと思って笑わなくても、阿久津さんを見ると、自然と笑顔になる。
好き。私を見て。もっと見て。たくさん話して。声を聞かせて。笑顔を見せて。
膨れ上がる欲求を押さえ付けて、満面の笑顔に変える。毎朝毎朝、性懲りもなく私の想いは膨れ上がって、ときどき暴走しそうになる。
阿久津さんはふぅんと相槌をうって、私の手元のスマホをちらりと見た。
そして、私の横に並んで過ぎ去る電車を見る。
阿久津さんはいつも、私の前に立たない。こうして横に立つ。
最初の頃、どうしてと尋ねたら、人の邪魔になるだろ、と返されただけだった。私はちょっと不満に思ったけど、同じ風景を見ているというのも悪くないと、最近は気にせずいられる。
「例の青年とはどうなったんだ?」
問いは、不意だった。
私は一瞬、阿久津さんが何を言っているのか分からず、顔を見上げて目をまたたかせる。
その間、阿久津さんは目を反らすこともなく、じっと私を見返してきた。
ああ、津田ちゃんのことを言っているのか、とその目を見て気づいた。
「どうも、なってないです」
言いながら、思い出した。
阿久津さんが津田ちゃんに何か言う姿を。
その後、津田ちゃんが私に真剣な顔を向けた瞬間を。
「……阿久津さん。あのとき、津田ちゃんに何を言ったんですか?」
聞きたいような聞きたくないような気持ちで、私は問う。
詰問口調にならないようにと思ったら、変に硬い声になった。
「ざっくり言うと、後悔しないようにしろって言った」
あっさり、阿久津さんは答えた。
腕組みをして、既に電車の去った線路の方を遠い目をして眺めている。
一見すると近づきがたい不機嫌そうな顔だが、それが彼の普通の表情だと、私はもう知っている。
「ざっくりしすぎて、わかんないです」
私は唇を尖らせた。
でも、阿久津さんが津田ちゃんを後押ししたことが確かだと分かって、ちょっと気持ちが下がる。
「お前さぁ。まだ続けんの、これ」
阿久津さんはぽつりと言った。ふと見上げると、阿久津さんも私を見ている。
その目は責める色も期待も浮かんでいない。本当に、ただ私を見ているだけ。
「……続けちゃ、駄目ですか」
「いや、俺は別にいいけどさ」
いいんだ! 今いいって言ったよね! オーケーいただきました!
心の中でのガッツポーズはついつい手元に出た。小さく握った拳を見て、阿久津さんが苦笑する。
「子どもにとってはさ、一週間ってすげぇ長いじゃん」
私はまた、阿久津さんを見上げた。阿久津さんは穏やかに、遠くを見ながら話している。
「あれって、多分生きてきた長さが違うからだよな。一ヶ月児にとっては、一日が人生の中で三十分の一なわけだろ。三十歳の人間にとってはそれが一年になるわけだけど」
言わんとしていることが分からず、私はじっと阿久津さんを見上げた。と思うと、また視線が私へ向いた。
「お前もな」
「え?」
「俺にとっての一年は、お前にとっての一年と感じ方が違うぞって話」
私は目をぱちぱちさせた。
「でも、三十歳も離れてないです」
言うと、阿久津さんは笑った。そのとき、駅のホームに電車が滑り込んで来る。
前まで阿久津さんが乗っていた電車だ。同時に逢瀬の終わりを告げる電車でもある。
電車から人が降りてきた。とたんにホームはざわつき、会話はしづらくなる。
だからだろう、阿久津さんは黙って人の流れを見た。私も同じように、歩いていく人を見る。
きっといつもすれ違っているだろうに、知らない人ばかりで満たされる駅のホーム。
阿久津さんと私も、もともとはそんな関係だったのに。
縁の不思議さを感じたとき、阿久津さんが一歩前に出た。
「じゃあな」
人ごみはおおかた、改札口へと去っている。
「あ、はい」
阿久津さんの背に、慌てて声をかけた。
「行ってらっしゃい!」
いつもは手を挙げるだけなのに、その日、阿久津さんは振り返った。
振り返って、に、と笑うと、いつも通り手を挙げて、階段を降りて行った。
私は一人、駅のホームに残されて、背中が見えなくなるまでじっとしていた。
好き、という気持ちはわがままだ。
阿久津さんを好きになってから、そう気づいた。
逆にいえば、今まで本当の意味で人を好きになったことがなかったんだなって気づいたんだけど。
告白されてつき合って、最初はウキウキして楽しくて、でも途中から、何となく楽しくないねって言って別れて、それでおしまい。
そういう恋愛しかしてこなかった。
恋すると綺麗になるとか、そういういいイメージしかなかったけど、実際にはちょっと違うんだなって思う。
だって、阿久津さんと並んでいる女性を思い浮かべると、気持ちがざわめく。落ち着かない。その人を押しのけたい衝動に駆られる。
阿久津さんと会うときも、そうだ。
ドキドキウキウキする一方で、色んな欲求が大きくなる。もっと近づきたい、触れたい、私を見てほしい。そんな欲求が、果てなく膨れ上がる。
恋って、こんなにわがままで、自分勝手な気持ちだったんだ。
想いに溺れそうになるけど、それで毎日の生活を崩しちゃいけないことを、半分本能的に知っている。きっと私がちゃんと自分の足で立っていることが、阿久津さんの側にいるための必要最低条件。
寄り掛かる女になっちゃいけない。自立した女でなきゃいけない。
きっと、そうじゃないと、阿久津さんとは一緒にいられない。
はっきりそう言われたわけではないのに、私はそう思っていた。だから、今まで以上にきちんと仕事をしたいと思ったし、職場でも、「最近がんばってるね」と褒められた。
ねえ、阿久津さん。
私、少しは、阿久津さんに釣り合う女に近づいてるかな?
変わったことと言えば、阿久津さんの乗る電車が一本早くなったことと、会った後、五分ほど会話を交わすようになったことか。
私から食事に誘うことも考えたけど、阿久津さんだって、恋愛経験が乏しいわけではない。本当にその気になってくれれば、いずれ向こうから誘ってくれるはず。そう自分に言い聞かせるようにして、とにかく二人で過ごす短い時間を楽しむようにしていた。
話すことといえば、だいぶ涼しくなったとか、でもまたすぐ寒くなるとか、そういうくだらない話ばかりだったけど、私にとっては幸せな時間だ。約一ヶ月経ち、十月になった今でも、二人で話しているときのときめきは変わらない。
まるで中学生のとき、初めてできた彼氏との登下校の時間のようだ。
うきうきして、気恥ずかしくて、でも楽しくて、何てことのない毎日がキラキラして見える。そんな感じ。
阿久津さんは、一ヶ月前まで自分が乗っていた電車を見送り、ホームの人が落ち着く頃になると、じゃあなと言って去っていく。
生真面目なくらい正確なそのリズムに馴染んできた頃、私はようやく気づいた。
阿久津さんが乗っていた電車の一本後には、アヤノさんとマサトさんが乗っていることが多い。
阿久津さんから直接何か聞いた訳ではないけど、この夫婦が阿久津さんにとって、ただの同期でないことは、私も薄々感じていた。
感じていたけど、それがどういう人なのか、まだ確認する勇気はない。いつ会ってもにこやかに挨拶してくれるアヤノさんに、同じテンションで挨拶を返すのが辛くなってきた私は、アヤノさんたちと会わないよう、二人が降りて来る電車の、二人があまり乗らない車両に乗るようになった。
それが避けているようで心苦しくて、そういえば私はこういう気を遣う人付き合いをしたこともなかったんだなぁ、なんて気づいた。
阿久津さんには、色んなことを学ばせてもらってる気がする。
いつも通り、一足先にホームで阿久津さんを待っていると、スマホにメッセージが届いた。見ると津田ちゃんからだ。
一か月後の十一月最初の土曜日、ソラちゃんの結婚式が静岡の浜松で開かれる。
津田ちゃんや荒木くんとは、結婚式のときにプレゼントを贈るのもいいけど、逆に新婚旅行の後がいいんじゃないか、という話で落ち着いた。新婚旅行でお土産などの気を遣わせないようにしようとの配慮だ。
【あの後、どうしてますか? 来月、静岡で会えるのを楽しみにしています】
津田ちゃんとは、あの後連絡を取っていない。
ちゃんと伝えなきゃと思うのだけど、電話で言うにもメッセージを送るにも、誤解が生じたらと思うと連絡する勇気が持てないのだ。
スマホの画面を眺めて、嘆息する。この一ヶ月、どんな気持ちで津田ちゃんは私からの連絡を待っていたんだろう。これからの一ヶ月、どんな気持ちで私と会う日を待つのだろう。
もし、私だったら……
もしかしたら応えてくれるかもしれないという儚い期待と、でもやっぱり駄目かもしれないという不安を抱えながら、そんなに長く待っていられるだろうか。
相手を思いやって、ただ、黙って。
不意に、阿久津さんの言葉を思い出した。
ーー突き進んでいる間は、人間、熱心でいられるもんだ。
津田ちゃんは、どうなんだろう。
一方で私はもう、立ち止まることなんてできそうにない。
阿久津さんのことが好きだから。
ふと目の前が影った。かと思うと、阿久津さんが首を傾げて立っている。
「どうした?」
低い声は、わずかにハスキーだ。
と、最近気づいた。
そのたった一言だけで、胸が高鳴る。
「なんでも、ないです」
私は笑った。笑おうと思って笑わなくても、阿久津さんを見ると、自然と笑顔になる。
好き。私を見て。もっと見て。たくさん話して。声を聞かせて。笑顔を見せて。
膨れ上がる欲求を押さえ付けて、満面の笑顔に変える。毎朝毎朝、性懲りもなく私の想いは膨れ上がって、ときどき暴走しそうになる。
阿久津さんはふぅんと相槌をうって、私の手元のスマホをちらりと見た。
そして、私の横に並んで過ぎ去る電車を見る。
阿久津さんはいつも、私の前に立たない。こうして横に立つ。
最初の頃、どうしてと尋ねたら、人の邪魔になるだろ、と返されただけだった。私はちょっと不満に思ったけど、同じ風景を見ているというのも悪くないと、最近は気にせずいられる。
「例の青年とはどうなったんだ?」
問いは、不意だった。
私は一瞬、阿久津さんが何を言っているのか分からず、顔を見上げて目をまたたかせる。
その間、阿久津さんは目を反らすこともなく、じっと私を見返してきた。
ああ、津田ちゃんのことを言っているのか、とその目を見て気づいた。
「どうも、なってないです」
言いながら、思い出した。
阿久津さんが津田ちゃんに何か言う姿を。
その後、津田ちゃんが私に真剣な顔を向けた瞬間を。
「……阿久津さん。あのとき、津田ちゃんに何を言ったんですか?」
聞きたいような聞きたくないような気持ちで、私は問う。
詰問口調にならないようにと思ったら、変に硬い声になった。
「ざっくり言うと、後悔しないようにしろって言った」
あっさり、阿久津さんは答えた。
腕組みをして、既に電車の去った線路の方を遠い目をして眺めている。
一見すると近づきがたい不機嫌そうな顔だが、それが彼の普通の表情だと、私はもう知っている。
「ざっくりしすぎて、わかんないです」
私は唇を尖らせた。
でも、阿久津さんが津田ちゃんを後押ししたことが確かだと分かって、ちょっと気持ちが下がる。
「お前さぁ。まだ続けんの、これ」
阿久津さんはぽつりと言った。ふと見上げると、阿久津さんも私を見ている。
その目は責める色も期待も浮かんでいない。本当に、ただ私を見ているだけ。
「……続けちゃ、駄目ですか」
「いや、俺は別にいいけどさ」
いいんだ! 今いいって言ったよね! オーケーいただきました!
心の中でのガッツポーズはついつい手元に出た。小さく握った拳を見て、阿久津さんが苦笑する。
「子どもにとってはさ、一週間ってすげぇ長いじゃん」
私はまた、阿久津さんを見上げた。阿久津さんは穏やかに、遠くを見ながら話している。
「あれって、多分生きてきた長さが違うからだよな。一ヶ月児にとっては、一日が人生の中で三十分の一なわけだろ。三十歳の人間にとってはそれが一年になるわけだけど」
言わんとしていることが分からず、私はじっと阿久津さんを見上げた。と思うと、また視線が私へ向いた。
「お前もな」
「え?」
「俺にとっての一年は、お前にとっての一年と感じ方が違うぞって話」
私は目をぱちぱちさせた。
「でも、三十歳も離れてないです」
言うと、阿久津さんは笑った。そのとき、駅のホームに電車が滑り込んで来る。
前まで阿久津さんが乗っていた電車だ。同時に逢瀬の終わりを告げる電車でもある。
電車から人が降りてきた。とたんにホームはざわつき、会話はしづらくなる。
だからだろう、阿久津さんは黙って人の流れを見た。私も同じように、歩いていく人を見る。
きっといつもすれ違っているだろうに、知らない人ばかりで満たされる駅のホーム。
阿久津さんと私も、もともとはそんな関係だったのに。
縁の不思議さを感じたとき、阿久津さんが一歩前に出た。
「じゃあな」
人ごみはおおかた、改札口へと去っている。
「あ、はい」
阿久津さんの背に、慌てて声をかけた。
「行ってらっしゃい!」
いつもは手を挙げるだけなのに、その日、阿久津さんは振り返った。
振り返って、に、と笑うと、いつも通り手を挙げて、階段を降りて行った。
私は一人、駅のホームに残されて、背中が見えなくなるまでじっとしていた。
好き、という気持ちはわがままだ。
阿久津さんを好きになってから、そう気づいた。
逆にいえば、今まで本当の意味で人を好きになったことがなかったんだなって気づいたんだけど。
告白されてつき合って、最初はウキウキして楽しくて、でも途中から、何となく楽しくないねって言って別れて、それでおしまい。
そういう恋愛しかしてこなかった。
恋すると綺麗になるとか、そういういいイメージしかなかったけど、実際にはちょっと違うんだなって思う。
だって、阿久津さんと並んでいる女性を思い浮かべると、気持ちがざわめく。落ち着かない。その人を押しのけたい衝動に駆られる。
阿久津さんと会うときも、そうだ。
ドキドキウキウキする一方で、色んな欲求が大きくなる。もっと近づきたい、触れたい、私を見てほしい。そんな欲求が、果てなく膨れ上がる。
恋って、こんなにわがままで、自分勝手な気持ちだったんだ。
想いに溺れそうになるけど、それで毎日の生活を崩しちゃいけないことを、半分本能的に知っている。きっと私がちゃんと自分の足で立っていることが、阿久津さんの側にいるための必要最低条件。
寄り掛かる女になっちゃいけない。自立した女でなきゃいけない。
きっと、そうじゃないと、阿久津さんとは一緒にいられない。
はっきりそう言われたわけではないのに、私はそう思っていた。だから、今まで以上にきちんと仕事をしたいと思ったし、職場でも、「最近がんばってるね」と褒められた。
ねえ、阿久津さん。
私、少しは、阿久津さんに釣り合う女に近づいてるかな?
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