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第八章 天の川の渡り方(ヒメ/阿久津交互)
03 迷子の子リス
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その日は平日だけどオフの日だった。阿久津さんと話した後で帰宅した私は、自分の部屋でぼんやりしていた。
確かに、最近、ちょっと変なのかも。
楽しいのに、楽しくない。浮き沈みが激しい。
でもこれが恋ってもんじゃない?
思ったとき、津田ちゃんの気弱な笑顔が頭に浮かぶ。
彼のことを思うと、ソラちゃんの結婚式が一気に億劫になってしまった。
でも、言わなきゃいけない。会って言わないと、津田ちゃんはいつまで経っても、身動きが取れないだろう。
そうはわかっているけど……
せっかく、ソラちゃんの結婚式なのに。
楽しみにしていられないのが、何だかモヤモヤする。
何もなければ。津田ちゃんがあんなこと言わなければ。阿久津さんが言わせるようなことを言わなければ。
そもそもあの日、津田ちゃんに会わなければーー
そうしたら今頃、こんな気持ちにならずに済んだに違いない。ソラちゃんの結婚式に何を着て行こうかとか、小物はどうしようとか、色々わくわくしながら考えていたんだろう。
ぼうっと考えていたはずなのに、気付けば感情がだんだんと強くなってきた。
わがままな苛立ち。
わがままでも、いい気がした。
だって、私はソラちゃんの結婚式に、楽しく行きたかった。ワクワクしながら参列したかった。ソラちゃんのご両親に会うのだって初めてだし、友達の結婚式自体もまだ二度目なんだもの。
どうしてこんなに嫌な気分でその日を待たなきゃいけないの?
思った勢いのまま、スマホを手にした。津田ちゃんの名前を表示させて、コールしようとしたけど、勇気は出ない。
ちらりとスツールの上の時計を見た。時間は十時。
そうだ、そもそも平日だもん、仕事中だよね。
思って嘆息し、ベッドに身体を預けた。
スマホに入った連絡先を眺めながら、阿久津さんの名前をタップする。
一日一言ずつ、短く交わされるやりとりを、最初から順番に見ていく。阿久津さんが出張だという前日には、そう連絡があって、気をつけて、と送ると、おう、と返ってきた。
短い言葉に阿久津さんらしさを感じて、口元が緩む。
らしくない、ってどういうことだろう。
阿久津さんが口にした言葉を思い出しながら思って、スマホを持ったままの手を大の字に広げる。
薄ピンク色のベッドカバー、カーテンは薄いベージュにピンクの花柄。少し開いた窓から風が入り込み、やっぱり花柄のレースカーテンがふわりと踊る。
小学校のときから使っている机の前の壁には、コルクボードが置いてあって、写真がピン留めしてある。大学のときの卒業式と、卒業旅行のときの写真だ。
そこには、数年前の津田ちゃんと、ソラちゃんと、新木くんと、私がいる。
阿久津さんはいない。
そのことがなんだか寂しかった。
私はスマホを顔の上に持ち上げて、阿久津さんへ送ったメッセージを最後までスライドさせると、送信欄にメッセージを入れた。
【今週末、お食事行きませんか?】
この一ヶ月、あえて言わなかった言葉。
送ろうか迷って、消す。
なんだか迷子になっている自分に気づいた。
どうしたらいいか分からない。
自分はどうしたいんだろう?
阿久津さんの台詞を思い出す。
ーー朝、もう会う必要なくなったら言えよ。
必要なくなったら。
私が阿久津さんに会う必要を感じなくなったら、ということだろう。
そんな日が来るんだろうか?
あのとき、つい頷いてしまった自分を思い出す。
そんな日が来るわけないと言えなかったのは、どうしてなんだろう。
前だったら、きっとそう言っていた。
ああ、そうか。
だから、阿久津さん、言ってたんだ。
私らしくない、って。
確かに、最近、ちょっと変なのかも。
楽しいのに、楽しくない。浮き沈みが激しい。
でもこれが恋ってもんじゃない?
思ったとき、津田ちゃんの気弱な笑顔が頭に浮かぶ。
彼のことを思うと、ソラちゃんの結婚式が一気に億劫になってしまった。
でも、言わなきゃいけない。会って言わないと、津田ちゃんはいつまで経っても、身動きが取れないだろう。
そうはわかっているけど……
せっかく、ソラちゃんの結婚式なのに。
楽しみにしていられないのが、何だかモヤモヤする。
何もなければ。津田ちゃんがあんなこと言わなければ。阿久津さんが言わせるようなことを言わなければ。
そもそもあの日、津田ちゃんに会わなければーー
そうしたら今頃、こんな気持ちにならずに済んだに違いない。ソラちゃんの結婚式に何を着て行こうかとか、小物はどうしようとか、色々わくわくしながら考えていたんだろう。
ぼうっと考えていたはずなのに、気付けば感情がだんだんと強くなってきた。
わがままな苛立ち。
わがままでも、いい気がした。
だって、私はソラちゃんの結婚式に、楽しく行きたかった。ワクワクしながら参列したかった。ソラちゃんのご両親に会うのだって初めてだし、友達の結婚式自体もまだ二度目なんだもの。
どうしてこんなに嫌な気分でその日を待たなきゃいけないの?
思った勢いのまま、スマホを手にした。津田ちゃんの名前を表示させて、コールしようとしたけど、勇気は出ない。
ちらりとスツールの上の時計を見た。時間は十時。
そうだ、そもそも平日だもん、仕事中だよね。
思って嘆息し、ベッドに身体を預けた。
スマホに入った連絡先を眺めながら、阿久津さんの名前をタップする。
一日一言ずつ、短く交わされるやりとりを、最初から順番に見ていく。阿久津さんが出張だという前日には、そう連絡があって、気をつけて、と送ると、おう、と返ってきた。
短い言葉に阿久津さんらしさを感じて、口元が緩む。
らしくない、ってどういうことだろう。
阿久津さんが口にした言葉を思い出しながら思って、スマホを持ったままの手を大の字に広げる。
薄ピンク色のベッドカバー、カーテンは薄いベージュにピンクの花柄。少し開いた窓から風が入り込み、やっぱり花柄のレースカーテンがふわりと踊る。
小学校のときから使っている机の前の壁には、コルクボードが置いてあって、写真がピン留めしてある。大学のときの卒業式と、卒業旅行のときの写真だ。
そこには、数年前の津田ちゃんと、ソラちゃんと、新木くんと、私がいる。
阿久津さんはいない。
そのことがなんだか寂しかった。
私はスマホを顔の上に持ち上げて、阿久津さんへ送ったメッセージを最後までスライドさせると、送信欄にメッセージを入れた。
【今週末、お食事行きませんか?】
この一ヶ月、あえて言わなかった言葉。
送ろうか迷って、消す。
なんだか迷子になっている自分に気づいた。
どうしたらいいか分からない。
自分はどうしたいんだろう?
阿久津さんの台詞を思い出す。
ーー朝、もう会う必要なくなったら言えよ。
必要なくなったら。
私が阿久津さんに会う必要を感じなくなったら、ということだろう。
そんな日が来るんだろうか?
あのとき、つい頷いてしまった自分を思い出す。
そんな日が来るわけないと言えなかったのは、どうしてなんだろう。
前だったら、きっとそう言っていた。
ああ、そうか。
だから、阿久津さん、言ってたんだ。
私らしくない、って。
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