爆走織姫はやさぐれ彦星と結ばれたい!

松田丹子(まつだにこ)

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第一章 織姫前線上昇中!(ヒメ視点)

01 彼との出会い その壱

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 私、澤田ヒメは、現在張り込み中である。
 え? 職業? 探偵じゃないよ。警察? ううん。違う違う。ただの医療事務。小児科のね。
 そんな私が何で張り込みしてるかって言えば……運命の出会いのせいなのだ。
 あ、ちょっとちょっと。呆れて終わりにしないで、話、聞いてよぅ。ホントにホントなんだから。
 あの人との出会いは、今から一ヶ月前ーーそう、私の二十五歳の誕生日でもあった七夕の日に遡る。

 私は今年も例年通り、自宅に飾った七夕飾りの短冊にこう書いていた。
【オトナな彼氏ができますよーに!】
 というのも、私は童顔で、身長も百五十くらいしかない。というか、百五十に届かない。そのため、いまだに未成年に間違われる。
 だから、というべきか否か。今まで付き合ってきた彼氏は、みんな、ロリコン趣味や妹フェチな男ばかりだった。
 体操服やら水着やら、ありとあらゆるロリ萌えに付き合わされた私は、あるとき悟った。違う。これは私の理想ではない。私の理想のお付き合いは、もっと、オトナな関係だ! ーーと。
 オトナな関係がどんなものなのかはよくわからないのだけれど、きっとオトナな男性だったらよく知っているだろう。
 そんなわけで、数年前から短冊に書く文句は【彼氏ができますよーに】ではなく、【オトナな彼氏ができますよーに】に進化したのである。
 具体的な方が、神様もニーズが把握しやすくて叶えてくれやすいんじゃないかとも思うし。ほら、ご飯だって、「私の好きなもの作って」って言うよりも、「カレーライス作って」って言った方が間違いないでしょ。
 そうして迎えた今年の七夕の夜は、例年通り(どうしていつもそうなのかわからないけど)曇り空だった。
 天の川なんてとても見えそうにない曇天にがっかりしながら家路についていた私は、駅のコンコースに置いてあった七夕飾りにふらふらと惹かれて近づいた。
 七夕に産まれたからか、私は七夕飾りが大好きなのだ。キラキラネーム手前な「ヒメ」という名前も、もちろん織り姫からもらっている。
 だからね、運命の人はきっと「ヒコ」なんだと思うんだ。と人に話す度に馬鹿にされてきたので、さすがに大学生以降はそんなことは言わないようにしているけど。
 で、七夕飾りをぽかーんと見上げる私の横に、私の二倍はあろうかというほど大きな体格の外人さんが近づいてきた。
 身振り手振りを交えながら、金髪碧眼の巨人は理解不能な言葉であれこれ話しかけて来る。いやごめん、英語だっていうことは分かった。でもほんとそれしか分からない。
 自慢じゃないけど英語は一番苦手な科目だった私。わたわたしながら、ノー、ノーと手を振り首を振った。アイキャントスピークイングリッシュ、すら出てこなかったのだ。
 ほとんど泣きそうになっていた私の横から、颯爽と表れたのがその人だった。
 きりりとした涼しげな目元に厚めの唇。身長は百八十近い。
 筋肉質な体格に、紺色のスーツがよく似合っていた。
 渋味のある横顔につい見惚れたとき、
「Excuse me」
 外人さんは私を見限ったのだろう。その人に声をかけた。
 呼びかけに足を止めた彼は、流暢な英語で応じた。外人さんは目を輝かせ、多分七夕飾りについて聞いている。その人は淡々と問いに答え(話している英語は私にとっては魔法の言葉にしか聞こえなかった)、そして去った。
 その背中に、声をかけるべきだったのにーーすっかり見惚れてしまっていた私は、彼が全く見えなくなってしまった後で自分の痛恨のミスに気づいたのだった。
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