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第一章 ギャップ萌えって、いい方向へのギャップじゃなきゃ萌えないよね。
09 夏場のアイスクリームはジャスティス!
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そんな突撃訪問の翌週ーー
七月といえばもちろん夏なので暑いのである。夏産まれの割に暑いのが苦手な私は今にも溶けてなくなりたいと思うほどだけれど、なくなるわけにはいかない。だって大好きなアイスクリームの期間限定フレーバーが二種類出ているのだから!
出勤前、会社近くのコンビニに昼食を買おうと立ち寄ったところ、狙っていたその商品に遭遇して足を止めた。一種類は既に賞味済みだが、近所のスーパーでは売り切れていた方の限定フレーバーが目に留まり、私のささやかな胸が高鳴りんぐ。しかしその時、ひとりのリーマンが、よりによってそのラストワンに手を伸ばした。
「あっっ!」
思わず声が出る。リーマンは伸ばした手を止めてこちらを見た。顔立ちは可もなく不可もなく。ただ、清潔感があって優しげで、正直言えば割とタイプである。え? マサトさんは色気がどうのとか言ってたじゃないかって? あれはもう別枠。厭味ない男の色気なんてなかなかお目にかかれるもんではないのである。男が狙って出す色気ほど鬱陶しいものもない。
「あああ、えと、あの」
つい焦った私は、
「半分こしませんか?」
阿呆なことを口走った。いやマジでもう駄目だ地面に高速で穴掘って潜りたいさながらチンアナゴのように。コンビニの床って堅いかなと思いを馳せていたとき、爽やかリーマンは呆気にとられた顔から一転、ぷっと噴き出し、腹を抱えて笑い出した。
血の気が引いていた私の顔がうってかわって真っ赤に染まる。は、はっずかしー。ほんと何。私これでも三十路まであとわずかな大人の女なんですけど。
「なかなか売ってないもんね、この味」
リーマンがアイスを手に取り私に差し出した。
「はい、どうぞ」
「え、でも」
「いいよ。朝から楽しい気分にさせてもらったし、そのうちまた出会えると思うから」
ーー出会える、って。
とくんと鼓動が高鳴ったとき、リーマンは言った。
「あ、このフレバーに、ってことね」
あああそうですよねそうですよねうん分かります。
もう思考回路が駄々漏れらしい私の顔に誰か能面でも被せてほしい。
「でも、そうだね」
思わず俯く私に、リーマンは呟きを残して行った。
「もしまたお目にかかったら、一緒に食べ比べもいいかもね」
ーーん?
顔を上げた先に、リーマンの後ろ姿が見えて。
ーーうわ。
わわわわわ。
何やら少女マンガのような展開に、ひとりわたわたしたのだった。
七月といえばもちろん夏なので暑いのである。夏産まれの割に暑いのが苦手な私は今にも溶けてなくなりたいと思うほどだけれど、なくなるわけにはいかない。だって大好きなアイスクリームの期間限定フレーバーが二種類出ているのだから!
出勤前、会社近くのコンビニに昼食を買おうと立ち寄ったところ、狙っていたその商品に遭遇して足を止めた。一種類は既に賞味済みだが、近所のスーパーでは売り切れていた方の限定フレーバーが目に留まり、私のささやかな胸が高鳴りんぐ。しかしその時、ひとりのリーマンが、よりによってそのラストワンに手を伸ばした。
「あっっ!」
思わず声が出る。リーマンは伸ばした手を止めてこちらを見た。顔立ちは可もなく不可もなく。ただ、清潔感があって優しげで、正直言えば割とタイプである。え? マサトさんは色気がどうのとか言ってたじゃないかって? あれはもう別枠。厭味ない男の色気なんてなかなかお目にかかれるもんではないのである。男が狙って出す色気ほど鬱陶しいものもない。
「あああ、えと、あの」
つい焦った私は、
「半分こしませんか?」
阿呆なことを口走った。いやマジでもう駄目だ地面に高速で穴掘って潜りたいさながらチンアナゴのように。コンビニの床って堅いかなと思いを馳せていたとき、爽やかリーマンは呆気にとられた顔から一転、ぷっと噴き出し、腹を抱えて笑い出した。
血の気が引いていた私の顔がうってかわって真っ赤に染まる。は、はっずかしー。ほんと何。私これでも三十路まであとわずかな大人の女なんですけど。
「なかなか売ってないもんね、この味」
リーマンがアイスを手に取り私に差し出した。
「はい、どうぞ」
「え、でも」
「いいよ。朝から楽しい気分にさせてもらったし、そのうちまた出会えると思うから」
ーー出会える、って。
とくんと鼓動が高鳴ったとき、リーマンは言った。
「あ、このフレバーに、ってことね」
あああそうですよねそうですよねうん分かります。
もう思考回路が駄々漏れらしい私の顔に誰か能面でも被せてほしい。
「でも、そうだね」
思わず俯く私に、リーマンは呟きを残して行った。
「もしまたお目にかかったら、一緒に食べ比べもいいかもね」
ーーん?
顔を上げた先に、リーマンの後ろ姿が見えて。
ーーうわ。
わわわわわ。
何やら少女マンガのような展開に、ひとりわたわたしたのだった。
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