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Lemon&Mint
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頭がガンガンしている。昨日のやけ酒のせいだ。
「うぅ……」
うめきながら身体を起こす。カーテンから差し込む白い光。もう朝なのはわかってる。そして今日が週の始まりであることも、わかってる。
ーーごめん。
彼の困ったような顔がまぶたの裏に浮かび、頭痛と心痛のダブルアタック。勘弁してよ。
目を開けば彼の顔は消えた。ほっと吐き出した息は酒臭い。
確かに、彼は何も言ってなかった。いくら2人で月イチで出かけても、映画の趣味が合っても、ただそれだけのこと。
勝手に期待して盛り上がったのは私の方。ーー彼女がいるなんて思わなかったのも、確認しなかった私のせい。
冷静さを取り戻そうとするほど、羞恥心と喪失感が心臓をえぐってくる。ついでに残っているアルコールが心臓に負荷をかけてくる。
ああ、もうそろそろ出勤の準備しなきゃ。
男がいなくても仕事はある。働かないと稼げない。男がいなくても生きていけるけどお金がないと生きてはいけない。
いや、別に自分に言い聞かせてるわけじゃない。これはほんとに、現実問題ーーと自分に言い聞かせて、のろのろ立ち上がる。
朝食は軽くスープとパンで済ませるのが日課だけれど、とてもそんな気分にはならない。とはいえ水分はとった方が良さそう。コップ一杯の水をゆっくり飲む。
ああ、やっぱりまだお酒が残ってる。最悪。
めいっぱい顔を歪めて舌打ちしてみる。どんな顔になってるんだろうと横にある鏡を振り向いてみる。ボサボサの髪とげっそりした顔。泣き腫らした目。まずい、これはメイクの前に冷やすのが急務。
冷蔵庫の中から保冷剤を出してタオルにくるんで目に当てる。一気に頭が冷えてきて、飲みすぎたことへの自己嫌悪。いくらなんでもメイクで隠せる範囲には限界がある。
今後は日曜にデートなんて入れないようにしよう。金曜土曜なら何かあっても気持ちをリセットして月曜を迎えられる。……社会人同士の付き合いで、そんなことできる?
不毛な考えがぐるんぐるん頭をめぐる。保冷剤をあてた目の冷たさだけがやたらとクリアだ。
いい加減身支度しないと間に合わない時間になって、仕方なく保冷剤を手放す。
まあ、寝起きよりはマシ。できることはした。どうせ私の顔なんて誰も見てない。
自虐と気休めの言葉がまたしても脳裏を行き来する。育ち始めていた恋心を打ち砕かれた女子の思考なんてこんなもんだと諦める。
着替えて、化粧して、箪笥の中に手を伸ばす。昨日選んだ甘いフローラルの横にあるレモンとミントの香水ボトルを手に取り、空間にひと吹き。
ふわっと広がる朝日の香りが、昨夜部屋中に撒き散らした自虐と惰性のアルコール臭を霧散させる。
さよなら、私の恋心。
もう一度、今度は頭上に一プッシュ。レモン色の朝日が、今度は私の身体を包み込む。
おはよう、今週の私。
鏡を見ると、少しマシになった自分の顔があって、思わず笑った。
「ブサイクな顔してんじゃないよ。笑った方がマシだっつーの」
鏡の中の自分に言って、いつもの鞄をひっつかむ。
「いってきまーす!」
昨夜の私に声をかけて、今度はほんものの朝日の中へと飛び込んだ。
「うぅ……」
うめきながら身体を起こす。カーテンから差し込む白い光。もう朝なのはわかってる。そして今日が週の始まりであることも、わかってる。
ーーごめん。
彼の困ったような顔がまぶたの裏に浮かび、頭痛と心痛のダブルアタック。勘弁してよ。
目を開けば彼の顔は消えた。ほっと吐き出した息は酒臭い。
確かに、彼は何も言ってなかった。いくら2人で月イチで出かけても、映画の趣味が合っても、ただそれだけのこと。
勝手に期待して盛り上がったのは私の方。ーー彼女がいるなんて思わなかったのも、確認しなかった私のせい。
冷静さを取り戻そうとするほど、羞恥心と喪失感が心臓をえぐってくる。ついでに残っているアルコールが心臓に負荷をかけてくる。
ああ、もうそろそろ出勤の準備しなきゃ。
男がいなくても仕事はある。働かないと稼げない。男がいなくても生きていけるけどお金がないと生きてはいけない。
いや、別に自分に言い聞かせてるわけじゃない。これはほんとに、現実問題ーーと自分に言い聞かせて、のろのろ立ち上がる。
朝食は軽くスープとパンで済ませるのが日課だけれど、とてもそんな気分にはならない。とはいえ水分はとった方が良さそう。コップ一杯の水をゆっくり飲む。
ああ、やっぱりまだお酒が残ってる。最悪。
めいっぱい顔を歪めて舌打ちしてみる。どんな顔になってるんだろうと横にある鏡を振り向いてみる。ボサボサの髪とげっそりした顔。泣き腫らした目。まずい、これはメイクの前に冷やすのが急務。
冷蔵庫の中から保冷剤を出してタオルにくるんで目に当てる。一気に頭が冷えてきて、飲みすぎたことへの自己嫌悪。いくらなんでもメイクで隠せる範囲には限界がある。
今後は日曜にデートなんて入れないようにしよう。金曜土曜なら何かあっても気持ちをリセットして月曜を迎えられる。……社会人同士の付き合いで、そんなことできる?
不毛な考えがぐるんぐるん頭をめぐる。保冷剤をあてた目の冷たさだけがやたらとクリアだ。
いい加減身支度しないと間に合わない時間になって、仕方なく保冷剤を手放す。
まあ、寝起きよりはマシ。できることはした。どうせ私の顔なんて誰も見てない。
自虐と気休めの言葉がまたしても脳裏を行き来する。育ち始めていた恋心を打ち砕かれた女子の思考なんてこんなもんだと諦める。
着替えて、化粧して、箪笥の中に手を伸ばす。昨日選んだ甘いフローラルの横にあるレモンとミントの香水ボトルを手に取り、空間にひと吹き。
ふわっと広がる朝日の香りが、昨夜部屋中に撒き散らした自虐と惰性のアルコール臭を霧散させる。
さよなら、私の恋心。
もう一度、今度は頭上に一プッシュ。レモン色の朝日が、今度は私の身体を包み込む。
おはよう、今週の私。
鏡を見ると、少しマシになった自分の顔があって、思わず笑った。
「ブサイクな顔してんじゃないよ。笑った方がマシだっつーの」
鏡の中の自分に言って、いつもの鞄をひっつかむ。
「いってきまーす!」
昨夜の私に声をかけて、今度はほんものの朝日の中へと飛び込んだ。
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