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98.運命は宿命ではない
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美智が犬舎の中に置いてあったサンドバッグでトレーニングをしていた。真冬だと言うのにキャミソール姿で真っ黒なグローブをはめる美智は勇ましかった。激しく殴り込み怒りをぶつけているようだ。そんな美智を見かねた木戸が揺れたサンドバックを押さえ込み美智の手を止めた。
雫がこの屋敷を出て行って一週間……美智は心配でたまらなかった。木戸を睨みつけると美智はグローブを外し水分を補給した。
「荒れてんな……随分。まぁ、気持ちは分かるけどな。雫ちゃんどうしてるかな……」
「相変わらずよ。動きなし──ホラ」
美智がタブレットを開くと地図が起動した。どうやら東京のどこかの地図らしいが、その中央に赤く点滅しているものがあった。点が建物内を細かく動いている。木戸は地図を確認し腕を組んだ。その点滅は雫だった。
「お、いいね。お前があげたかんざしをちゃんと肌身離さずつけてるみたいだな。愛されてるなぁ美智」
「雫は真面目だからね……発信器つけててねなんて言えるわけないでしょ。しかし、晩も殆どここから動かないね……本当にディザキャッスルに就職したの? 超セレブ御用達の建物でしょ?」
「あぁ、どんなコネを使ったかしらねぇが……ホテルじゃなくて百貨店のフロアの清掃だ。偵察に行ってみたら本当に働いてるみたいだ。元気そうだったぜ……」
雫が屋敷から去ると決まった時から美智と木戸は雫に発信器を取り付けるべく髪飾りを用意した。意外にも器用な木戸の力作は素晴らしい出来栄えだった。
もちろん誠大も郡司もこの事を知っている。誠大は反対したが花蓮がまた誘拐する可能性があることから最終的には許可した。雫の居場所を知っていたが、誠大も郡司も雫の様子を見に行こうとはしなかった。
「でも、誠大さまも薄情じゃない? 気にならないのかね?」
「今動いて勘づかれるとまずいからな、慎重なんだろう。それに、雫ちゃんが再就職する予定だった会社には行ってなかったみたいだからな。郡司さんに伝えていた就職先と違う場所なんだよな。郡司さんもどうしてこうなったのか調べてみたらしいけど、どうもどんな経緯でこうなったか詳細は不明らしい」
「そっか……でも良かった。元気なら……」
美智は点滅する赤い光を見つめた……雫が元気だと言っているようだった。
◇
雫はディザキャッスルの一階に作られた噴水の周りを清掃していた。英国庭園にありそうなデザインで中央で数人の女性達が肩に壺を抱えているよくあるデザインだ。その壺からすごい量の水が流れ落ちていた。中学の美術の授業で出てきそうな彫像だ。頭につけた月桂樹までリアルに再現されている。雫は噴水にここまで経費をかける熱意に感心していた。小便小僧でもよかったのではないかと思うが……金持ちの発想はわからない。
イタリアにある泉を彷彿とさせるせいか、噴水の中に硬貨を放り投げる人間が後を立たない。一週間に一回中を清掃しているがその短期間だけでも数万円は入っているだろう。小便小僧ではここまでの収益は望めなかったに違いない。
雫が噴水取り囲むように設けられた大理石のベンチを拭き掃除していると邪魔をするかのように誰かが座り込んだ。足元の靴は高給な革靴だった。若いスーツを着た男性のようだった。雫は破顔し顔を上げた。
ベンチに座っていたのは……誠大ではなかった。笑顔の雫の顔が困ったような顔をしたのを確認するとその男性は雫の頬を撫でた。
「誠大と思ったか?……ごめんな」
「天洋さま……」
久しぶりに見る天洋の姿だった。天洋はスーツを新調するためにこの百貨店へとやって来た。そこで偶然雫の姿を見つけて驚かそうとしたのだった。しかし、それは失敗だった事に気付いた。誠大が会いに来てくれたと一瞬でも期待させてしまった事に申し訳ない気持ちになった。雫は誤魔化すように再び笑っていたが、天洋から見てその笑顔はどこか痛々しかった。
「びっくりしました……天洋さま、お買い物ですか?」
「あぁ、そうだ。雫、屋敷の仕事を辞めたんだな……。ここの百貨店には誠大の紹介で来たのか?」
「いえ、縁があってこちらで就職が決まったんです。誠大さまには……ここで働くことも言っていません。私がどこにいるのか知らないはずです」
雫の話はどうやら本当のようだ。天洋は雫が嘘をついている時とそうでない時の見分けが付く。本当に雫が誠大と決別したのだと思った。
「もう、誠大に会わないのか? もう……いいのか?」
「ええ、いいんです。こうして屋敷から出てみて、いかに誠大さまが遠い存在か気付きました。ハハ……もう、会わないです」
雫の表情が一瞬曇った。天洋は溜息を漏らすと雫の額にデコピンをした。思いのほか痛かった。雫が額に手を当てて痛がると天洋は優しく笑った。
「また、会いに来る……ここだと給料もいいだろうから、初給料でハンバーガーでも奢ってくれ」
「げ……抜け目ないですね。天洋さま、ハンバーガー食べるんですか? お坊ちゃんなのに」
「ハハ、俺は庶民派なんだ。惚れた女も庶民だしな──じゃあな」
天洋が後退りながら手を振った。雫も手を振り返したが、天洋の最後の言葉の意味にようやく気づいて顔を赤らめた。
ちょっと、なに、あのサラッとした感じ。おのれ、プレイボーイめ……綺麗な顔して笑ってあんなこと言うなんて……世間の女性達に殺されそう。おお、怖い。
雫は周りを見渡して天洋ファンがいない事を確認すると、噴水の掃除を再開した。
その日の晩に真守の屋敷には天洋の姿があった。仕事が終わり真守に会うためにやって来た。天洋の訪問に動じる様子を見せず、真守はヒレステーキを頬張ると赤ワインを口に流し込んだ。
天洋が真守のそばに立つとメイドや執事たちが天洋の一挙一動に警戒していた。前回はテーブルクロスを引っ張り貴重な輸入食器を全部割った前科がある。心配そうな気配を察知した天洋は執事を一瞥すると鼻で笑った。
「……大丈夫だ、今回は暴れない予定だ」
「……何の用だ。お前の説得など聞かないぞ」
真守はナプキンで口元を拭うと呆れた様子で天洋を見た。ネクタイを外し気怠そうに立つ天洋から視線を外すと再び赤ワインに手をつけようとする。すかさず天洋がそのグラスを横から奪い取ると一気に飲み干した。真守は眉間にシワを寄せてその様子を見ていた。天洋の行動手段は車だ。この屋敷にやってきて酒を飲むことはあり得なかった。信じられないものを見るような目で天洋を見つめた。
グラスを空にすると天洋は口元を拭い大きく息を吐いた。
「まず、条件が二つある」
「条件……? ハッ……なるほど? それで?」
「一つ、誠大が今後経営に携われないように、誠大の持っている自社株を俺にくれ」
天洋の申し出に真守は驚いた。確実に誠大を潰しにかかるとそう宣言したのも同然だった。天洋の瞳は怒りに満ちていた。真守は高笑いを繰り返し大きく頷き承諾した。
「よかろう……誠大に株を譲るように交渉しよう。あとの一つは、あの女か?」
「ああ、彼女との結婚が通らなければ……俺は今回の件に加担しない。絶対に譲らない」
天洋は一歩も引く気がないのが分かったのか真守が難しそうな顔をした。しかし、天洋がこちらに付くという絶好の機会を逃すことはできなかった。真守は天洋が本気になれば誠大を消せることが分かっていた……現に今も株まで奪い取り徹底的に陥れる計画を提案してきた。自分の目に狂いはなかったと真守は内心喜んでいた。
「いいぞ、好きにしろ……結婚でも何でも許そう」
「分かった。今日は飲みたい気分だ……親父、付き合ってくれよ」
天洋は近くの席に腰掛けると空のグラスを置いた。真守は嬉しそうにワインを持ってくるようにメイドに伝えた。久しぶりの親子水入らずの晩酌になった。
雫がこの屋敷を出て行って一週間……美智は心配でたまらなかった。木戸を睨みつけると美智はグローブを外し水分を補給した。
「荒れてんな……随分。まぁ、気持ちは分かるけどな。雫ちゃんどうしてるかな……」
「相変わらずよ。動きなし──ホラ」
美智がタブレットを開くと地図が起動した。どうやら東京のどこかの地図らしいが、その中央に赤く点滅しているものがあった。点が建物内を細かく動いている。木戸は地図を確認し腕を組んだ。その点滅は雫だった。
「お、いいね。お前があげたかんざしをちゃんと肌身離さずつけてるみたいだな。愛されてるなぁ美智」
「雫は真面目だからね……発信器つけててねなんて言えるわけないでしょ。しかし、晩も殆どここから動かないね……本当にディザキャッスルに就職したの? 超セレブ御用達の建物でしょ?」
「あぁ、どんなコネを使ったかしらねぇが……ホテルじゃなくて百貨店のフロアの清掃だ。偵察に行ってみたら本当に働いてるみたいだ。元気そうだったぜ……」
雫が屋敷から去ると決まった時から美智と木戸は雫に発信器を取り付けるべく髪飾りを用意した。意外にも器用な木戸の力作は素晴らしい出来栄えだった。
もちろん誠大も郡司もこの事を知っている。誠大は反対したが花蓮がまた誘拐する可能性があることから最終的には許可した。雫の居場所を知っていたが、誠大も郡司も雫の様子を見に行こうとはしなかった。
「でも、誠大さまも薄情じゃない? 気にならないのかね?」
「今動いて勘づかれるとまずいからな、慎重なんだろう。それに、雫ちゃんが再就職する予定だった会社には行ってなかったみたいだからな。郡司さんに伝えていた就職先と違う場所なんだよな。郡司さんもどうしてこうなったのか調べてみたらしいけど、どうもどんな経緯でこうなったか詳細は不明らしい」
「そっか……でも良かった。元気なら……」
美智は点滅する赤い光を見つめた……雫が元気だと言っているようだった。
◇
雫はディザキャッスルの一階に作られた噴水の周りを清掃していた。英国庭園にありそうなデザインで中央で数人の女性達が肩に壺を抱えているよくあるデザインだ。その壺からすごい量の水が流れ落ちていた。中学の美術の授業で出てきそうな彫像だ。頭につけた月桂樹までリアルに再現されている。雫は噴水にここまで経費をかける熱意に感心していた。小便小僧でもよかったのではないかと思うが……金持ちの発想はわからない。
イタリアにある泉を彷彿とさせるせいか、噴水の中に硬貨を放り投げる人間が後を立たない。一週間に一回中を清掃しているがその短期間だけでも数万円は入っているだろう。小便小僧ではここまでの収益は望めなかったに違いない。
雫が噴水取り囲むように設けられた大理石のベンチを拭き掃除していると邪魔をするかのように誰かが座り込んだ。足元の靴は高給な革靴だった。若いスーツを着た男性のようだった。雫は破顔し顔を上げた。
ベンチに座っていたのは……誠大ではなかった。笑顔の雫の顔が困ったような顔をしたのを確認するとその男性は雫の頬を撫でた。
「誠大と思ったか?……ごめんな」
「天洋さま……」
久しぶりに見る天洋の姿だった。天洋はスーツを新調するためにこの百貨店へとやって来た。そこで偶然雫の姿を見つけて驚かそうとしたのだった。しかし、それは失敗だった事に気付いた。誠大が会いに来てくれたと一瞬でも期待させてしまった事に申し訳ない気持ちになった。雫は誤魔化すように再び笑っていたが、天洋から見てその笑顔はどこか痛々しかった。
「びっくりしました……天洋さま、お買い物ですか?」
「あぁ、そうだ。雫、屋敷の仕事を辞めたんだな……。ここの百貨店には誠大の紹介で来たのか?」
「いえ、縁があってこちらで就職が決まったんです。誠大さまには……ここで働くことも言っていません。私がどこにいるのか知らないはずです」
雫の話はどうやら本当のようだ。天洋は雫が嘘をついている時とそうでない時の見分けが付く。本当に雫が誠大と決別したのだと思った。
「もう、誠大に会わないのか? もう……いいのか?」
「ええ、いいんです。こうして屋敷から出てみて、いかに誠大さまが遠い存在か気付きました。ハハ……もう、会わないです」
雫の表情が一瞬曇った。天洋は溜息を漏らすと雫の額にデコピンをした。思いのほか痛かった。雫が額に手を当てて痛がると天洋は優しく笑った。
「また、会いに来る……ここだと給料もいいだろうから、初給料でハンバーガーでも奢ってくれ」
「げ……抜け目ないですね。天洋さま、ハンバーガー食べるんですか? お坊ちゃんなのに」
「ハハ、俺は庶民派なんだ。惚れた女も庶民だしな──じゃあな」
天洋が後退りながら手を振った。雫も手を振り返したが、天洋の最後の言葉の意味にようやく気づいて顔を赤らめた。
ちょっと、なに、あのサラッとした感じ。おのれ、プレイボーイめ……綺麗な顔して笑ってあんなこと言うなんて……世間の女性達に殺されそう。おお、怖い。
雫は周りを見渡して天洋ファンがいない事を確認すると、噴水の掃除を再開した。
その日の晩に真守の屋敷には天洋の姿があった。仕事が終わり真守に会うためにやって来た。天洋の訪問に動じる様子を見せず、真守はヒレステーキを頬張ると赤ワインを口に流し込んだ。
天洋が真守のそばに立つとメイドや執事たちが天洋の一挙一動に警戒していた。前回はテーブルクロスを引っ張り貴重な輸入食器を全部割った前科がある。心配そうな気配を察知した天洋は執事を一瞥すると鼻で笑った。
「……大丈夫だ、今回は暴れない予定だ」
「……何の用だ。お前の説得など聞かないぞ」
真守はナプキンで口元を拭うと呆れた様子で天洋を見た。ネクタイを外し気怠そうに立つ天洋から視線を外すと再び赤ワインに手をつけようとする。すかさず天洋がそのグラスを横から奪い取ると一気に飲み干した。真守は眉間にシワを寄せてその様子を見ていた。天洋の行動手段は車だ。この屋敷にやってきて酒を飲むことはあり得なかった。信じられないものを見るような目で天洋を見つめた。
グラスを空にすると天洋は口元を拭い大きく息を吐いた。
「まず、条件が二つある」
「条件……? ハッ……なるほど? それで?」
「一つ、誠大が今後経営に携われないように、誠大の持っている自社株を俺にくれ」
天洋の申し出に真守は驚いた。確実に誠大を潰しにかかるとそう宣言したのも同然だった。天洋の瞳は怒りに満ちていた。真守は高笑いを繰り返し大きく頷き承諾した。
「よかろう……誠大に株を譲るように交渉しよう。あとの一つは、あの女か?」
「ああ、彼女との結婚が通らなければ……俺は今回の件に加担しない。絶対に譲らない」
天洋は一歩も引く気がないのが分かったのか真守が難しそうな顔をした。しかし、天洋がこちらに付くという絶好の機会を逃すことはできなかった。真守は天洋が本気になれば誠大を消せることが分かっていた……現に今も株まで奪い取り徹底的に陥れる計画を提案してきた。自分の目に狂いはなかったと真守は内心喜んでいた。
「いいぞ、好きにしろ……結婚でも何でも許そう」
「分かった。今日は飲みたい気分だ……親父、付き合ってくれよ」
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