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13.その思いは今か過去か
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俺は仕事が終わると涼香ちゃんに連絡をした。何となく、あれからどうなったのか気になった。この間二人でし飲んだ時に涼香ちゃんを泣かせてしまったからだと思う。
よくよく考えれば向こうから動きがあったからと言ってハッピーエンドとは限らない……元彼だって二年間人生を歩んできたのだから。
あの日の涼香の言葉を思い出す。
『二年間で武人がどんな人間になったのかも分からないのに……ここで再会した時に香った香水すらも違うものだったのに──』
驚いた。
俺の中の希は決して変わらない。何一つ変わることはない。俺のことを好きでいる希のままだ。普通は違うことに今更気付く。
思いは風化する──。
そんな事誰かが言っていたのは、生きているから言えたんだなと思った。今俺の心にいる希は、過去の希であり……永遠にそのままだ。
「おまたせ!」
涼香ちゃんが人混みをかき分けて走ってきた。頰を赤らめ俺に駆け寄る。一瞬だけ、希が重なって見えて目を逸らす。本当に全く似ていないのにどうしてそう思ったのか不思議だ。
今日は昔よく行っていた定食屋さんに行くことにした。飲みというより食べに行く感じだ。席に座ると俺は生姜焼きを、涼香ちゃんは唐揚げ定食を注文した。
「どうなの? 元彼とあれからメールした?」
「いや、特に」
「……だよな」
飲みに誘うと言われてそのあと何を送ればいいのだろう。第一、やり直すと言われたわけでもない。
注文の品が届き俺たちは割り箸をいい音させながら割る。
「いただきます」
「いただきまーす」
大輝が生姜焼きを頬張ると涼香がそれをみて何かを思い出したように微笑む。
「武人はよく生姜焼きを食べてたな。好きだったんだと思う。あの時は外回りが多かったから体力つけるためによく食べてた」
「あの時は?」
「うん、その当時ね」
涼香の話を聞くと大輝は涼香の話す武人の話が全て過去形で話していることに気がつく。当然だ、二年も会っていないんだから。
でも、なんだろう……涼香ちゃんは二年前の元彼に恋をしている気がした。
そして、この間会った少しの間にその変化を感じ取り不安になっている。今度飲み行く時に元彼が二年の間に変わったことに気付くだろう。涼香ちゃんはその時、どう思うんだろう。
過去の記憶を上書きするのか……元彼は元彼なのだからと納得するのか、それとも、好きなんだからと見ないふりをするのか……。
そこまで考えて、目の前で美味しそうに唐揚げを頬張る涼香ちゃんが幸せになれるのか不安になってきた。後押ししていいのか、元彼がまた傷つけないだろうか。
その時の愛情だけを記憶に強く刻み、元彼のひどい仕打ちをどこか忘れているような気がした。
「おいしいね ! ここの唐揚げ!」
「あぁ、美味いよな」
涼香の笑顔に大輝は満足げに笑った。
よくよく考えれば向こうから動きがあったからと言ってハッピーエンドとは限らない……元彼だって二年間人生を歩んできたのだから。
あの日の涼香の言葉を思い出す。
『二年間で武人がどんな人間になったのかも分からないのに……ここで再会した時に香った香水すらも違うものだったのに──』
驚いた。
俺の中の希は決して変わらない。何一つ変わることはない。俺のことを好きでいる希のままだ。普通は違うことに今更気付く。
思いは風化する──。
そんな事誰かが言っていたのは、生きているから言えたんだなと思った。今俺の心にいる希は、過去の希であり……永遠にそのままだ。
「おまたせ!」
涼香ちゃんが人混みをかき分けて走ってきた。頰を赤らめ俺に駆け寄る。一瞬だけ、希が重なって見えて目を逸らす。本当に全く似ていないのにどうしてそう思ったのか不思議だ。
今日は昔よく行っていた定食屋さんに行くことにした。飲みというより食べに行く感じだ。席に座ると俺は生姜焼きを、涼香ちゃんは唐揚げ定食を注文した。
「どうなの? 元彼とあれからメールした?」
「いや、特に」
「……だよな」
飲みに誘うと言われてそのあと何を送ればいいのだろう。第一、やり直すと言われたわけでもない。
注文の品が届き俺たちは割り箸をいい音させながら割る。
「いただきます」
「いただきまーす」
大輝が生姜焼きを頬張ると涼香がそれをみて何かを思い出したように微笑む。
「武人はよく生姜焼きを食べてたな。好きだったんだと思う。あの時は外回りが多かったから体力つけるためによく食べてた」
「あの時は?」
「うん、その当時ね」
涼香の話を聞くと大輝は涼香の話す武人の話が全て過去形で話していることに気がつく。当然だ、二年も会っていないんだから。
でも、なんだろう……涼香ちゃんは二年前の元彼に恋をしている気がした。
そして、この間会った少しの間にその変化を感じ取り不安になっている。今度飲み行く時に元彼が二年の間に変わったことに気付くだろう。涼香ちゃんはその時、どう思うんだろう。
過去の記憶を上書きするのか……元彼は元彼なのだからと納得するのか、それとも、好きなんだからと見ないふりをするのか……。
そこまで考えて、目の前で美味しそうに唐揚げを頬張る涼香ちゃんが幸せになれるのか不安になってきた。後押ししていいのか、元彼がまた傷つけないだろうか。
その時の愛情だけを記憶に強く刻み、元彼のひどい仕打ちをどこか忘れているような気がした。
「おいしいね ! ここの唐揚げ!」
「あぁ、美味いよな」
涼香の笑顔に大輝は満足げに笑った。
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