51 / 101
51.こたつ
しおりを挟む
「「ハッピーニューイヤー!」」
テレビの生放送ではテンションの上がった芸人が新年を祝うように雄叫びを上げた。その様子を私は冷めた目で見つめる。だからといってテレビの電源ボタンを押そうという気にもならない。消してしまえば今の私には何も残らない。
こたつの上に置かれた落花生と温州みかんは尽きた……あと私がすべき事はこのままこたつで寝てしまうことだ。
あったかい。
最高だ……。一体誰なんだ? こんな素敵なものを発明した日本人は……。
ゆっくりと眠気に襲われていく。
あぁ……クリスマスに振られた私にもこんな至福のときが訪れるなんて……。
「おーい、ノリいるか?」
微睡みの中、男の声が聞こえた……私をそう呼ぶ人間は、一人しかない──。典子はこたつの誘惑には勝てず、そのまま夢の中へと引き込まれていった。
随分と寝ていたのだろう。体が痛い。こたつから目覚めるとすぐに後悔する。ゆっくりと瞳を開ける。喉が渇いて仕方がない……。
は?
なぜかこたつにもう一人いる。足だけ入れて私の頭を抱えるように横になっている。男のズボンのベルトが目の前にある……異様な光景だ。小さなこたつはおしくらまんじゅう状態だ。
ゆっくりと顔を上げると、そこには幼なじみで腐れ縁の佑がいた。
急病の際助け合うため母親同士の提案で私達は互いのアパートの合鍵を持っている。
よりによって大晦日にこの鍵が初めて使われた。
「なんで……?」
「……ん? 急病だろ?」
独り言のつもりで発した声に返事が返ってきて驚いた。佑はどうやら起きていたらしい。
「年末のくせに帰省しないって、おばちゃんが言ってた。何かあったのかと俺んとこに連絡きたんだよ」
「……佑こそなんで実家に帰らなかったの?」
佑の顔は見えないが、少し戸惑ったような空気を感じた。
「つまんないだろ、お前いないんだし……だから、迎えにきた……ここにいると思った」
佑は典子の額をペシッと叩く。
「ノリ、振られたのか?」
「……ふん、だから何? 浮かれてたわよ、悪い?」
典子は五年付き合った彼氏に振られた。話があると言われた時にプロポーズだと思い込んでいた自分を呪いたい。
「ほら、やっぱ急病じゃん」
佑は私を抱きしめる力を更に強めた。
う、どうしよう……泣いちゃいそうだ。
典子が我慢できずに泣き出す。
すぐさま佑が典子をこたつから引っ張り出す。典子の体を起こしてやると佑は再び抱きしめた。
部屋の真ん中で座ったまま抱き合う……。
一体どういう状況なのか分からず典子は戸惑う。佑は自分の胸に典子をすっぽりと閉じ込めたまま、何も言わず動こうともしない──佑の香りが鼻腔いっぱいに広がる。
ああ、佑の匂いだ。
なぜか落ち着く。昔からそばにある香りだからかもしれない。
「ノリ、もう……いいか?」
「……何が?」
「もう、そろそろ俺の番でいいだろ?」
佑は典子から体を離すと典子の口を塞ぐ。勢いよく口付けたので油断していた典子の歯が佑の唇に当たる。佑はお構いなしにさらに深く口付ける。
佑なのに、佑のくせに……どうして心地よいのだろう。昔から知っている唇だし、何度もふざけてつねり合った頰が触れているだけなのに……。
ずっとこうしたい。
もっと繋がりたい。
いつのまにか自ら舌を動かし佑を感じようとしていた。騒がしいテレビの音と自分たちの粘膜が触れ合うような水々しい音だけが響く。
「……頼むから、もう俺を選んでくれよ。もう待ちくたびれて、普通になんて告白できなくなったんだから」
佑は唇を離すと私の胸へ額をつける。
小さい、こんなに佑は弱気な男だったか?
いつもと違う佑を目の当たりにして、典子は声が出なかった。
私が、そうさせているのか……。
典子はそのまま抱きしめると佑はおずおずと典子の背中に手を回した。
胸がときめく。居酒屋で何の気なしに抱擁した時とは違う何かが自分の心に生まれたのを感じた。
なんだ、佑のこと……ちゃんと男として好きなんだ。
自分の気持ちを再確認できた。
「佑、あけましておめでとう。開けて早々あれなんだけど──」
──お待ちどうさま……愛し合おうか?
典子は佑に耳打ちする。佑の顔が真っ赤になり動揺したのを確認すると典子は佑の手を引きそのまま隣の寝室へと連れて行った。
テレビの生放送ではテンションの上がった芸人が新年を祝うように雄叫びを上げた。その様子を私は冷めた目で見つめる。だからといってテレビの電源ボタンを押そうという気にもならない。消してしまえば今の私には何も残らない。
こたつの上に置かれた落花生と温州みかんは尽きた……あと私がすべき事はこのままこたつで寝てしまうことだ。
あったかい。
最高だ……。一体誰なんだ? こんな素敵なものを発明した日本人は……。
ゆっくりと眠気に襲われていく。
あぁ……クリスマスに振られた私にもこんな至福のときが訪れるなんて……。
「おーい、ノリいるか?」
微睡みの中、男の声が聞こえた……私をそう呼ぶ人間は、一人しかない──。典子はこたつの誘惑には勝てず、そのまま夢の中へと引き込まれていった。
随分と寝ていたのだろう。体が痛い。こたつから目覚めるとすぐに後悔する。ゆっくりと瞳を開ける。喉が渇いて仕方がない……。
は?
なぜかこたつにもう一人いる。足だけ入れて私の頭を抱えるように横になっている。男のズボンのベルトが目の前にある……異様な光景だ。小さなこたつはおしくらまんじゅう状態だ。
ゆっくりと顔を上げると、そこには幼なじみで腐れ縁の佑がいた。
急病の際助け合うため母親同士の提案で私達は互いのアパートの合鍵を持っている。
よりによって大晦日にこの鍵が初めて使われた。
「なんで……?」
「……ん? 急病だろ?」
独り言のつもりで発した声に返事が返ってきて驚いた。佑はどうやら起きていたらしい。
「年末のくせに帰省しないって、おばちゃんが言ってた。何かあったのかと俺んとこに連絡きたんだよ」
「……佑こそなんで実家に帰らなかったの?」
佑の顔は見えないが、少し戸惑ったような空気を感じた。
「つまんないだろ、お前いないんだし……だから、迎えにきた……ここにいると思った」
佑は典子の額をペシッと叩く。
「ノリ、振られたのか?」
「……ふん、だから何? 浮かれてたわよ、悪い?」
典子は五年付き合った彼氏に振られた。話があると言われた時にプロポーズだと思い込んでいた自分を呪いたい。
「ほら、やっぱ急病じゃん」
佑は私を抱きしめる力を更に強めた。
う、どうしよう……泣いちゃいそうだ。
典子が我慢できずに泣き出す。
すぐさま佑が典子をこたつから引っ張り出す。典子の体を起こしてやると佑は再び抱きしめた。
部屋の真ん中で座ったまま抱き合う……。
一体どういう状況なのか分からず典子は戸惑う。佑は自分の胸に典子をすっぽりと閉じ込めたまま、何も言わず動こうともしない──佑の香りが鼻腔いっぱいに広がる。
ああ、佑の匂いだ。
なぜか落ち着く。昔からそばにある香りだからかもしれない。
「ノリ、もう……いいか?」
「……何が?」
「もう、そろそろ俺の番でいいだろ?」
佑は典子から体を離すと典子の口を塞ぐ。勢いよく口付けたので油断していた典子の歯が佑の唇に当たる。佑はお構いなしにさらに深く口付ける。
佑なのに、佑のくせに……どうして心地よいのだろう。昔から知っている唇だし、何度もふざけてつねり合った頰が触れているだけなのに……。
ずっとこうしたい。
もっと繋がりたい。
いつのまにか自ら舌を動かし佑を感じようとしていた。騒がしいテレビの音と自分たちの粘膜が触れ合うような水々しい音だけが響く。
「……頼むから、もう俺を選んでくれよ。もう待ちくたびれて、普通になんて告白できなくなったんだから」
佑は唇を離すと私の胸へ額をつける。
小さい、こんなに佑は弱気な男だったか?
いつもと違う佑を目の当たりにして、典子は声が出なかった。
私が、そうさせているのか……。
典子はそのまま抱きしめると佑はおずおずと典子の背中に手を回した。
胸がときめく。居酒屋で何の気なしに抱擁した時とは違う何かが自分の心に生まれたのを感じた。
なんだ、佑のこと……ちゃんと男として好きなんだ。
自分の気持ちを再確認できた。
「佑、あけましておめでとう。開けて早々あれなんだけど──」
──お待ちどうさま……愛し合おうか?
典子は佑に耳打ちする。佑の顔が真っ赤になり動揺したのを確認すると典子は佑の手を引きそのまま隣の寝室へと連れて行った。
1
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる