70 / 101
70.自撮り
しおりを挟む
「うわ、すごい──きれいねぇ、今の携帯電話」
「いや、スマホだしね、スマホ」
とうとう私の母が二つ折りのガラケーと呼ばれる携帯電話から、スマートフォンへと機種変更した。今まで頑なに嫌がっていたというのに、数日前、女子会に行き自分以外の友人がスマートフォンに変え、尚且つ使いこなしていたのがショックだったらしい。
「あら、画面が変わったわね。時間差で変わるのね」
「指当たってるよ。ボタンないんだからね──あぁもう、そこを持ったらダメだって」
娘の私はさっきからこの調子だ。イライラが募る。
どうして母はこんな最新機器に変えてしまったのだろう。無理に決まっている。
「ただいま」
「おかえり」
父親が仕事から帰宅した。リビングに入るなりスマートフォンに四苦八苦する母親を見て微笑む。
「なんだ、やっぱり換えたのか? 難しいだろう?」
「あなたが使えているんだもの、私も出来るわ」
一体どこを見てその自信が出てくるのか聞きたい。私の父親はIT業界に勤めていて機械に強い。
「そうだね、どれどれ……母さん、カメラ起動できる?」
「あら、それはさっき教えてもらったのよ? えっとね、この粒を押すのよ」
「アイコンね、粒っていうほど小さくもないでしょ」
娘の言葉は聞こえないふりをして夫婦は携帯画面に夢中だ。
「あ、あなた……写ってるわよ? この画面が全部レンズなの?」
「いや、この粒がレンズだよ」
「全部粒じゃん!」
この似た者夫婦には飽きた。もういいや……。
冷蔵庫から飲み物を出し二階へ避難する準備をする。
「母さん……撮ろうか」
「そうね! じゃいっきまーす、ハイチーズ」
カシャ
「あらやだ……もう、最初の一枚なのに……」
「だからいいんじゃないか」
「じゃ、二階に上がりまーす。ごゆっくり」
二人が自撮りしている時に見てしまった……撮る瞬間父親が母親の頰に優しくキスをしていた。
普段なら「いい歳して何してんの!」と言いたくなるが……なんだか羨ましかったので見なかったことにした。
階段を上っている間にも二人の笑い声が聞こえてきた。今度は変顔に挑戦しているようだ。
スマホに変えてよかったな……、うん。
翌朝、母親のスマホの待ち受けは例の写真だった。なんとも人前では出せれない携帯電話になってしまった。
「お父さんが勝手に変えちゃって……どうしたらこれ変えられるのかしら。分かる?」
「いや? 私も知らないよ?」
私は父親の味方をした。朝廊下をすれ違う時の父親のウインクに笑ってしまった。口パクで「でかした」と言っていた。
私の家族は本当に愉快だ。
「いや、スマホだしね、スマホ」
とうとう私の母が二つ折りのガラケーと呼ばれる携帯電話から、スマートフォンへと機種変更した。今まで頑なに嫌がっていたというのに、数日前、女子会に行き自分以外の友人がスマートフォンに変え、尚且つ使いこなしていたのがショックだったらしい。
「あら、画面が変わったわね。時間差で変わるのね」
「指当たってるよ。ボタンないんだからね──あぁもう、そこを持ったらダメだって」
娘の私はさっきからこの調子だ。イライラが募る。
どうして母はこんな最新機器に変えてしまったのだろう。無理に決まっている。
「ただいま」
「おかえり」
父親が仕事から帰宅した。リビングに入るなりスマートフォンに四苦八苦する母親を見て微笑む。
「なんだ、やっぱり換えたのか? 難しいだろう?」
「あなたが使えているんだもの、私も出来るわ」
一体どこを見てその自信が出てくるのか聞きたい。私の父親はIT業界に勤めていて機械に強い。
「そうだね、どれどれ……母さん、カメラ起動できる?」
「あら、それはさっき教えてもらったのよ? えっとね、この粒を押すのよ」
「アイコンね、粒っていうほど小さくもないでしょ」
娘の言葉は聞こえないふりをして夫婦は携帯画面に夢中だ。
「あ、あなた……写ってるわよ? この画面が全部レンズなの?」
「いや、この粒がレンズだよ」
「全部粒じゃん!」
この似た者夫婦には飽きた。もういいや……。
冷蔵庫から飲み物を出し二階へ避難する準備をする。
「母さん……撮ろうか」
「そうね! じゃいっきまーす、ハイチーズ」
カシャ
「あらやだ……もう、最初の一枚なのに……」
「だからいいんじゃないか」
「じゃ、二階に上がりまーす。ごゆっくり」
二人が自撮りしている時に見てしまった……撮る瞬間父親が母親の頰に優しくキスをしていた。
普段なら「いい歳して何してんの!」と言いたくなるが……なんだか羨ましかったので見なかったことにした。
階段を上っている間にも二人の笑い声が聞こえてきた。今度は変顔に挑戦しているようだ。
スマホに変えてよかったな……、うん。
翌朝、母親のスマホの待ち受けは例の写真だった。なんとも人前では出せれない携帯電話になってしまった。
「お父さんが勝手に変えちゃって……どうしたらこれ変えられるのかしら。分かる?」
「いや? 私も知らないよ?」
私は父親の味方をした。朝廊下をすれ違う時の父親のウインクに笑ってしまった。口パクで「でかした」と言っていた。
私の家族は本当に愉快だ。
1
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる