虹色小判

しまたろす

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第1章 学生編

2 一通の手紙

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父が死んでからは悲しむ間もなく、
母も後を追うように容態が悪化し
この世を去った。
現実を受け入れられず現実そのものから
逃げ出すことも考えたが、
優しかった母方の祖父に初めて怒鳴られ、
激を飛ばされ、優しくされ、救われた。
父方の祖父母からも一緒に暮らそうと
言われたが、ばあちゃんに先立たれた
母方の祖父と暮らすことを受け入れた。
そして変わらぬじいちゃんの優しさに
徐々に変わって行くことが出来た。

高校では普通の日々を送れていた。
と言ってもバイト三昧の日々だが。





「店長ごちそうさまでした!」

「いいよいいよ。黒蜂君はしっかり働いてくれるし、内外問わず評判いいからね~。店長として嬉しい限りだよ。」

「店長さん含めてスタッフの皆さんも優しいし、ほんと楽しく働けますから~。」

「それも店長として嬉しいね~。でもそれはたぶん君がちゃんとしてるから、返ってきてるだけだよ。」

「だったらその言葉、店長さんやスタッフさんにもそのまま当てはまりますね。」

「ほんと君は可愛い従業員だ!」

「あざっす!家の前までありがとうございました。また誘ってくださいね?」

「おう!忙しかった週末にな!」

「いやいつでもいいですから~」

「はは~。検討しておこう。じゃあ、おやすみ。」

「おやすみなさい。」


家に帰ると優しいし寝息が聴こえてきた。
でも洗濯物も洗い物も残ってなかった。


「俺がするって言ったのになー。まあいっか。明日のお昼は俺が作るか。」


翌朝目が覚めるとじいちゃんが声をかけてきた。


「澪音や、お前宛に手紙がきておるぞ。」

「手紙?心当たりがないや。」

「まあ、中を見ればわかるじゃろ。」

「そうだね。」


封を開けると『国立未来育成学校』からだった。


「また懐かしい話題だな。どれどれ」


中身を見たが噂通りの内容が書いてあった。


「じいちゃんこれ見て。」

「ん?なになに~」


じいちゃんも似たような反応だった。


「これは詐欺かなんかじゃろか?」

「普通に考えればそうだよね。昔ニュースでしてたな。確か何千万分の一とかなんとか。」

ただ来週『天才が集まる学校』へ来て
交渉の場を設けてくれるとのこと。
交渉場所が学校なので信憑性が少し上がった
気がしたが、それでも単なる悪戯かもしれない。

「旅行だと思って行ってきんさい。たまには息抜きも必要じゃろ」

「んー。ならじいちゃんも一緒に行こうよ。そっちの方が旅行っぽいし。」

「そうじゃの。ばあさんと勇澪(いさみ)くんと愛音(あいね)の墓参りぐらいしか、一緒に遠出することないからの。」

「よし!じゃあ来週一緒に旅行ね」


よくよく考えれば本当に墓参りでしか
一緒に何処か行くことないもんね。と思った。
爺孝行だと思うと少し嬉しくなりつつ
今日これまでそんなことを考えていなかったなと
申し訳なくなった。
きっかけを作ってくれたと思えば、
悪戯だとしても結果的にはオールオッケーだった。


「あ、じいちゃん今日の昼は何食べたい?バイトは夕方からだから俺が作るよ。」

「じゃあいつものお任せでお願いするかの。」

「わかったー」
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