14 / 15
カヌレチュロスは恋の味
しおりを挟む
「あっ!姉ちゃん、光、お帰り~。一枝ばあちゃん元気だった??」
「…元気だった?じゃないわよ!お見舞いも行かないで何やってたのよ!」
「まあ、そう怒んなって。今度の日曜にでも行くからさ!」
「たくっ、調子いいんだから。」
「光、病院はどうだった??」
あさみの小言をひらりとかわし、克己は光に話を振った。
「栗羊羹が美味しかったでおじゃる。」
「…いや、他に感想あるだろ?!」
「そういえば、明日は満月と聞いたでおじゃる。克己殿!明日は皆でお月見と行きましょうぞ!」
「お月見~??俺はパス!興味ないわ」
「なんと?!お月見に興味なき者がこの世におるとは?!」
「いや、普通にいっぱいいるだろ。大体、光も団子とか食べたいだけだろ?」
「なっ!?失敬な!!」
光は憤慨しているが、克己は無視して話を進める。
「あっ、そう言えば、光がウチに来た日も満月だったよなあ?」
克己があさみに同意を求める。
「…そう言えば、そうね。」
あさみは光が現れた夜の事を思い出していた。
巻物から現れた?謎の男。
およそ現代のイケメンとは程遠い下膨れ、白ブタの様な男。
誰も知り合いのいない、見知らぬ世界に迷い込んだ男。
それでも“月が綺麗だ”と微笑んだ男。
そしてー。
「若紫はー」
「若紫は大事なく、過ごしているであろうか。」
光がポツリと言った。
若紫。
光源氏が生涯で最も愛した女性だ。
そう、光は向こうに最愛の女性を待たせている。
戻りたい…はずだ。
「光は向こうに戻りたいの?」
!?
克己が何の躊躇もなく、光に聞く。
突然の質問に光も少々戸惑っているようだった。
克己ってば、ばかじゃないの?そんなのわかりきっているじゃない。
戻りたいに決まっているでしょう?
あさみは履いていた靴を靴箱にしまう。
わかりきっている。それなのに、わかっていても耳を傾けてしまう。
そして、願ってしまう。
「…戻りたい。…もちろん!きっと久しくまろが会いに来なくて、心細い日々を過ごしているはず!今直ぐにでも若紫をこの手で抱きしめてあげたいでおじゃる!!」
そりゃ、そうよね。
大好きな人が待っているんだもの。
それに、向こうじゃイケメン皇子なんだし。
こんな白ブタ扱いする世界に未練なんてないわよねぇ。
「なのじゃが…なんということか。まろとしたことが、今のいままで、そのような事を忘れてしまっていたでおじゃる…」
「うわっ!マジ??光、ひでーな!やっぱり光はたらしだな!」
克己が呆れて言う。
「たらし??まあ、でも確かにまろ自身も酷いと思っているでおじゃるよ。いくら、あまりにも違う暮らしぶりに驚いてしまったとはいえ、どうして、愛しい女性の事をも思い出さなかったのか…。どうしてなのか…のお?…あさみ殿。」
光が急にあさみの方を見る。
あさみは急に自分に振られて、びっくりしてしまった。
「え??や、そんなの…光が根っからのプレイボーイだからよ!!」
そう言うと、あさみは階段を駆け登った。
…気持ち…見透かされた?
「あさみ殿!?」
残された光と克己。
克己が光の肩を叩いて言った。
「嫌われたな」
「なっ!?またでおじゃるか!?」
克己はケラケラ笑いながらリビングに戻っていった。
「…さみ、あさみってば、聞いてる!?」
…!?
「…え??」
「もう~、さっきから呼んでるのに全然返事しないんだから!」
見ると、ゆみがふくれっ面であさみの目の前に立っていた。
セリが隣でクスクス笑っている。
「…あ、ごめん、ぼーっとしてた」
「まったく。今日、あさみバイト休みって言ってたでしょ??前から言ってたカヌレチュロスでも食べて帰ろうよ」
「あっ、いいね!行こう!」
そんな話したんだっけ?そもそもカヌレチュロスってカヌレ?チュロス??と思いながらも、あさみは直ぐに帰り支度を始めたのだった。
「…大丈夫??」
ふと、セリがあさみに尋ねた。
「え?何が??」
「…いや、だってあさみ、朝からぼーっとしてたよ。ねえ?」
セリがゆみに振る。
ゆみも頷く。
「あんた、今日、いつも以上にオカシイよ。」
いつも以上には余計じゃないかと思いつつ、自分でも心ここに非ずな状態だったと思う。
昨日はあんまり寝られなかった。
原因は…わかっている。
考えようとしなくても、どうしても考えてしまう。
そして、辿り着く。
でも、認めたくない。
まさか。
まさか、イケメン好きのあたしがどうして。
光の事を…
「好き?」
「ええっ!?」
あさみは思わず、大声を出してしまった。
ゆみがビックリしてこっちを見る。
「いや、ここのお店って、しめじバターとマツタケ醤油が二大人気らしいんだけどどっちが好きかと思って聞いたんだけど…そんなにびっくりされると思わなかったわ。」
「ああっ…ごめん、えっと、しめじバター?」
え?その二択しかないの?っと思いつつもあさみは答えた。
「そうね、なんせ"香りマツタケ味しめじ"ですものね」
「なんせね」
そう言って、よくわからないが二人が納得したようなので、あさみはとりあえず、ほっとした。
もう、認めるしかないのだろうか。
あさみはカヌレなのかチュロスなのかよくわからい、カヌレチュロスを食べながら、光と過ごしたこの一か月間を思い起こしていた。
そして、
あさみはある結論に達した。
「ねえ、ゆみ、セリ、あのさ…」
「ん??」
「カヌレにキノコ味を求めなくても良くない?!いや、チュロスか?!」
二人は目を合わせる。
「…そうだね。」
「…まずいってわけじゃないんだけどね。」
3人はその後、無言でカヌレチュロスを完食した。
「…元気だった?じゃないわよ!お見舞いも行かないで何やってたのよ!」
「まあ、そう怒んなって。今度の日曜にでも行くからさ!」
「たくっ、調子いいんだから。」
「光、病院はどうだった??」
あさみの小言をひらりとかわし、克己は光に話を振った。
「栗羊羹が美味しかったでおじゃる。」
「…いや、他に感想あるだろ?!」
「そういえば、明日は満月と聞いたでおじゃる。克己殿!明日は皆でお月見と行きましょうぞ!」
「お月見~??俺はパス!興味ないわ」
「なんと?!お月見に興味なき者がこの世におるとは?!」
「いや、普通にいっぱいいるだろ。大体、光も団子とか食べたいだけだろ?」
「なっ!?失敬な!!」
光は憤慨しているが、克己は無視して話を進める。
「あっ、そう言えば、光がウチに来た日も満月だったよなあ?」
克己があさみに同意を求める。
「…そう言えば、そうね。」
あさみは光が現れた夜の事を思い出していた。
巻物から現れた?謎の男。
およそ現代のイケメンとは程遠い下膨れ、白ブタの様な男。
誰も知り合いのいない、見知らぬ世界に迷い込んだ男。
それでも“月が綺麗だ”と微笑んだ男。
そしてー。
「若紫はー」
「若紫は大事なく、過ごしているであろうか。」
光がポツリと言った。
若紫。
光源氏が生涯で最も愛した女性だ。
そう、光は向こうに最愛の女性を待たせている。
戻りたい…はずだ。
「光は向こうに戻りたいの?」
!?
克己が何の躊躇もなく、光に聞く。
突然の質問に光も少々戸惑っているようだった。
克己ってば、ばかじゃないの?そんなのわかりきっているじゃない。
戻りたいに決まっているでしょう?
あさみは履いていた靴を靴箱にしまう。
わかりきっている。それなのに、わかっていても耳を傾けてしまう。
そして、願ってしまう。
「…戻りたい。…もちろん!きっと久しくまろが会いに来なくて、心細い日々を過ごしているはず!今直ぐにでも若紫をこの手で抱きしめてあげたいでおじゃる!!」
そりゃ、そうよね。
大好きな人が待っているんだもの。
それに、向こうじゃイケメン皇子なんだし。
こんな白ブタ扱いする世界に未練なんてないわよねぇ。
「なのじゃが…なんということか。まろとしたことが、今のいままで、そのような事を忘れてしまっていたでおじゃる…」
「うわっ!マジ??光、ひでーな!やっぱり光はたらしだな!」
克己が呆れて言う。
「たらし??まあ、でも確かにまろ自身も酷いと思っているでおじゃるよ。いくら、あまりにも違う暮らしぶりに驚いてしまったとはいえ、どうして、愛しい女性の事をも思い出さなかったのか…。どうしてなのか…のお?…あさみ殿。」
光が急にあさみの方を見る。
あさみは急に自分に振られて、びっくりしてしまった。
「え??や、そんなの…光が根っからのプレイボーイだからよ!!」
そう言うと、あさみは階段を駆け登った。
…気持ち…見透かされた?
「あさみ殿!?」
残された光と克己。
克己が光の肩を叩いて言った。
「嫌われたな」
「なっ!?またでおじゃるか!?」
克己はケラケラ笑いながらリビングに戻っていった。
「…さみ、あさみってば、聞いてる!?」
…!?
「…え??」
「もう~、さっきから呼んでるのに全然返事しないんだから!」
見ると、ゆみがふくれっ面であさみの目の前に立っていた。
セリが隣でクスクス笑っている。
「…あ、ごめん、ぼーっとしてた」
「まったく。今日、あさみバイト休みって言ってたでしょ??前から言ってたカヌレチュロスでも食べて帰ろうよ」
「あっ、いいね!行こう!」
そんな話したんだっけ?そもそもカヌレチュロスってカヌレ?チュロス??と思いながらも、あさみは直ぐに帰り支度を始めたのだった。
「…大丈夫??」
ふと、セリがあさみに尋ねた。
「え?何が??」
「…いや、だってあさみ、朝からぼーっとしてたよ。ねえ?」
セリがゆみに振る。
ゆみも頷く。
「あんた、今日、いつも以上にオカシイよ。」
いつも以上には余計じゃないかと思いつつ、自分でも心ここに非ずな状態だったと思う。
昨日はあんまり寝られなかった。
原因は…わかっている。
考えようとしなくても、どうしても考えてしまう。
そして、辿り着く。
でも、認めたくない。
まさか。
まさか、イケメン好きのあたしがどうして。
光の事を…
「好き?」
「ええっ!?」
あさみは思わず、大声を出してしまった。
ゆみがビックリしてこっちを見る。
「いや、ここのお店って、しめじバターとマツタケ醤油が二大人気らしいんだけどどっちが好きかと思って聞いたんだけど…そんなにびっくりされると思わなかったわ。」
「ああっ…ごめん、えっと、しめじバター?」
え?その二択しかないの?っと思いつつもあさみは答えた。
「そうね、なんせ"香りマツタケ味しめじ"ですものね」
「なんせね」
そう言って、よくわからないが二人が納得したようなので、あさみはとりあえず、ほっとした。
もう、認めるしかないのだろうか。
あさみはカヌレなのかチュロスなのかよくわからい、カヌレチュロスを食べながら、光と過ごしたこの一か月間を思い起こしていた。
そして、
あさみはある結論に達した。
「ねえ、ゆみ、セリ、あのさ…」
「ん??」
「カヌレにキノコ味を求めなくても良くない?!いや、チュロスか?!」
二人は目を合わせる。
「…そうだね。」
「…まずいってわけじゃないんだけどね。」
3人はその後、無言でカヌレチュロスを完食した。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
清掃員と僕の密やかな情状
MisakiNonagase
恋愛
都心のオフィスビルで働く会社員の26歳・高城蓮(たかぎれん)。彼の無機質な日常に唯一の彩りを与えていたのは、夕方から現れる70歳の清掃員・山科和子だった。
青い作業服に身を包み、黙々と床を磨く彼女を、蓮は「気さくなおばあちゃん」だと思っていた。あの日、立ち飲み屋で私服姿の彼女と再会するまでは――。
肉じゃがの甘い湯気、溶けゆく氷の音、そして重ねた肌の温もり。
44歳の年齢差を超え、孤独を分かち合った二人が辿り着いた「愛の形」とは。これは、一人の青年が境界線の向こう側で教わった、残酷なまでに美しい人生の記録。
ポンコツ気味の学園のかぐや姫が僕へのラブコールにご熱心な件
鉄人じゅす
恋愛
平凡な男子高校生【山田太陽】にとっての日常は極めて容姿端麗で女性にモテる親友の恋模様を観察することだ。
ある時、太陽はその親友の妹からこんな言葉を隠れて聞くことになる。
「私ね……太陽さんのこと好きになったかもしれない」
親友の妹【神凪月夜】は千回告白されてもYESと言わない学園のかぐや姫と噂される笑顔がとても愛らしい美少女だった。
月夜を親友の妹としか見ていなかった太陽だったがその言葉から始まる月夜の熱烈なラブコールに日常は急変化する。
恋に対して空回り気味でポンコツを露呈する月夜に苦笑いしつつも、柔和で優しい笑顔に太陽はどんどん魅せられていく。
恋に不慣れな2人が互いに最も大切な人になるまでの話。
7月14日 本編完結です。
小説化になろう、カクヨム、マグネット、ノベルアップ+で掲載中。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
俺をフッた女子に拉致されて、逃げ場のない同棲生活が始まりました
ちくわ食べます
恋愛
大学のサークル飲み会。
意を決して想いを告げた相手は、学内でも有名な人気女子・一ノ瀬さくら。
しかし返ってきたのは――
「今はちょっと……」という、曖昧な言葉だった。
完全にフラれたと思い込んで落ち込む俺。
その3日後――なぜか自分のアパートに入れなくなっていた。
俺が宝くじで10億円当選してから、幼馴染の様子がおかしい
沢尻夏芽
恋愛
自他共に認める陰キャ・真城健康(まき・けんこう)は、高校入学前に宝くじで10億円を当てた。
それを知る、陽キャ幼馴染の白駒綾菜(しらこま・あやな)はどうも最近……。
『様子がおかしい』
※誤字脱字、設定上のミス等があれば、ぜひ教えてください。
現時点で1話に繋がる話は全て書き切っています。
他サイトでも掲載中。
俺にだけツンツンする学園一の美少女が、最近ちょっとデレてきた件。
甘酢ニノ
恋愛
彼女いない歴=年齢の高校生・相沢蓮。
平凡な日々を送る彼の前に立ちはだかるのは──
学園一の美少女・黒瀬葵。
なぜか彼女は、俺にだけやたらとツンツンしてくる。
冷たくて、意地っ張りで、でも時々見せるその“素”が、どうしようもなく気になる。
最初はただの勘違いだったはずの関係。
けれど、小さな出来事の積み重ねが、少しずつ2人の距離を変えていく。
ツンデレな彼女と、不器用な俺がすれ違いながら少しずつ近づく、
焦れったくて甘酸っぱい、青春ラブコメディ。
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる