イケメン?! 私の光る君(源氏物語より愛を込めて)

としろう

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これぞ平安色男の定義なり

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「…あさみ。」
「雄太君…」
「雄太の知り合いなのぉ?」
女は男の腕に腕を一層絡ませて、猫撫で声で男に尋ねる。
「あっ、ああ、知り合いなんだ!駅が一緒で、近くの女子校の子。だよな??あさみ??」
男はあさみに同意を求めて強い口調で言った。
あさみは動揺しつつもその気迫に押されて、
「あっ…はい。雄太君の知り合いのあさみです。」
自分でも何を言っているのか。
どうしてそう言ったのか。
よくわからない。
ただ
ただの知り合い。
その言葉にショックを受け過ぎて、何も言葉が出て来なかった。
言われるがままに答えた。
それだけ。

「こちら本日入荷しました目玉商品で~す!どうぞショーケースからも出せますので、中で見てって下さいね~」
陽気な蝶ネクタイをした、銀歯がチラッと見える男が、新商品をショーケースに飾った。
新作のサイフの未使用品が、定価の30%OFFの値段になっていた。
あさみは全てを偶然で見過ごす事はもう無理だと悟った。

「あさみ殿の知り合いでおじゃるか?」
ふと、何も知らない光が呑気にあさみに尋ねた。
「…!ぷっ」
雄太と連れの女は堪らず笑いだした。
「ちょ!お前、マジで言ってんの?その言葉使い!なんかのパクリ?」
「何オタ系??ちょ~斬新なんですけどぉ?!」
「人の話方を笑うとはなんたる無礼な!!」
「やだ~もしかして怒ってる?」
「キモいんだよ!デブ!」
雄太が突き放す様に言う。
あさみの大好きだったアーモンド型の瞳は、歪められ、ウジ虫の様にうごめいていた。

「雄太君、この前あげたサイフ使ってる?」
「え?あ…もったいなくて使ってないよ」
「ふーん、そうなんだ。じゃあキーケースは?」
「アレもほら!もったいなくて…」
「じゃあ今度持ってきて?」
「え?…いや…それは…」
続け様にあさみは言う。
「雄太君、このショーケースに出てるキーケースとサイフあたしがあげたやつだよね??」
「え?何言ってんの?たまたま、偶然同じやつでしょ?」慌てて、雄太はあさみにいつもの笑顔を向ける。いつものアーモンド型の瞳だ。
でももう、あさみはその笑顔に何も感じなくなった。
「製造番号。ブランド品ってそういうのしっかりしてるから。私、何かあった時の為にメモって置いたの。確か…」
あさみは携帯を取り出した。

「ちぇっ、抜けてる様に見えて、案外あざといとこ、あんじゃん??」
雄太の態度が豹変する。
「そうだよ!これもこれもぜーんぶ、あんたから貰ったもん!これでいい?でも何も文句は言わせねーぜ?俺買ってなんて頼んだことねーし!第一、貰ったらもう俺のもんでしょ?」

パンッ
「サイテー」

「光、行くよ」
あさみは二度と振り返らなかった。

「…っつ何なんだよ!あの女!」
雄太は赤くなった頬を触りながら大声で文句を言う。
「災難だったわね~大丈夫?」
女が腫れた頬にハンカチを当てる。
「なんだよ?!まだ俺らに様があんのかよ?」
こっちをじっと見て何か言いたそうな光に雄太が啖呵を切る。
「何人の女と同時に付き合おうとそなたの自由じゃ。」
「…なんだよ。案外話解るじゃねーか、オッさん。そうだろ?自由なんだよ。ましてあさみは付き合ってねーし」
「しかし、男が一度、情を通じたおなごには最後まで情けをかけるのが男の筋であろう。養いきれないのであれば、最初から手を出してはいけぬ。」
「え?ちょっと?言ってる意味が…」
「間違っても」
「いや、おっさん?」
「間違っても、男なら、情を通じる前の女にいくら貢いでも貢がれることがあってはならない」
「は?」
「それが男女の習わしであろう?」
あまりにも、キッパリと光が言い切るので、雄太は唖然としてしまった。
「は?デブな上に説教とか、マジキモいんですけど!」
女は心底気持ち悪いという様に、光を見た。
「あのさ、オッさん?マジで何言ってるかわかんないんだけど。…女に貢ぐのはいいのに貢がれるのはダメな訳??」
雄太は困惑気味に光に言った。
女は一刻も早くこの場から立ち去りたいのか、後ろで雄太を急かしている。
「女とは皆、美しく儚いもの。その美しいモノを手に入れる為だったら、多少の出費は仕方がないこと。また、そのモノが美しくなくなっていっても施しを辞めてはいけない。
財が無いのなら女を愛してはならない。まして、女に施しを受ける事は畜生以下の行為。女の施しで別の女を囲うなど、もってのほか」
キョトンとする雄太と女をよそに、光の目は至って真剣だ。

「お主はその女を最後まで、情けをかけ続ける覚悟があっての事か?」

雄太は何も言えなかった。

言ってる意味が半分以上、いや、殆どわからなかったのだ…!

ただ
俺はこの女、咲にこれからもどんだけ金をかけてでも本当に一緒に居たいのだろうか?お金に余裕がある時じゃなく、苦しい時でも、いつでも…。
大学生の年上の女性と歩くことに優越感を感じ、年下でも財力があるっていう見栄をはりたいだけだったんじゃないか?
あさみに貰ったプレゼントを売り飛ばし、俺には貢いでくれる女が入るってアピールしたかっただけなんじゃないか?

てか、俺、咲の事そんなに好きだったっけか?

そんな疑問があたまに浮かんできた。

光は言うだけ言うと、小走り(本人的には全力疾走)であさみを追いかけた。
「あっあさみ殿~!お待ち下され~」

「なにあれ?走り方まで不細工だわ」
咲は呆れた様に言った。
「そんな事より、はやく美味しいモノ食べに行こう?」
咲はいつもの猫撫で声に戻った。
「って雄太?聞いてる??ちょっ…どこ行くの?!雄太?雄太!!」

雄太は立ち上がるとぼんやりと人混みを歩いて行った。

歩きながら咲のアドレスを消した。
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