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穴があったら入りたい
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「あ…あさみ殿…おっ…お待ち下され…」
5分と歩いていないのに、もはやハーフマラソンくらいは余裕で走ったかのごとく汗だくの光を見て、あさみは仕方なく足を止めた。
商店街を出て、ほどなくした所にある児童公園のベンチに二人で腰かけた。
滑り台にブランコ、鉄棒、そして砂場があるだけの小さな公園だ。
砂場で男の子とお父さんの親子が一組、トンネルをつくっていた。
他には、あさみと光以外誰もいない。
「…はあ~っ…」
「…はあああっ…」
「…はあ~っ」
「…って何であたしよりあんたの方が思いっきり落ち込んでるのよ?!」
あさみは、半場呆れて光に言う。
先ほどから、光は大きなため息を何度もしているのである。
あさみは正直落ち込みたいのはこっちだよ!と思った。
「しかし、あさみ殿、まろはあの青年に〝女に貢がせるなど畜生以下”と言っておきながら、まろ自身はこれも!これも!全部あさみ殿に貢いで貰った物を着ているではないか!なんとも自分が恥ずかしい!!」
光は顔を手で覆って背中を丸めてふさぎ込んだ。どうやら本気で落ち込んでいるみたいだ。
「そんなこと雄太君に言ったの??まあでもさ、光の場合は貢いだっていうのとはちょっと違うし…」
あれで歩かれてはこっちが困る。
「いや、男として、まろは失格じゃ!なんとも…穴があったら入りたい気分でおじゃる…。」
光はまた大きなため息をついた。
あさみはめんどくさい男だなと思いながら、ふと砂場に目をやった。
あさみは意地悪い顔で、砂場で親子が造っているトンネルを指さした。
「光、穴ならあそこにあるよ」
「そうそう、ああゆう穴探してたんだよね、入ってこよう…って入れるかーー!あんな小さいの無理だわー!っつかトンネルだから入ったところで結局でてきちゃうわーー!」
……。
公園に静寂が現れた…。
いきなり水知らずのおじさん(ほんとは青年)の張り上げた声にびっくりして、砂場の男の子は思わず泣き出してしまった。
一緒にいたお父さんは眉をひそめて光を見る。
光は急いで、男の子に近寄り、平謝りをする。
「いや、その、つい…脅かすつもりは…」
あさみは…
―こっ…これが平安流乗りツッコミ!!―
どうでもいいことを考えていた。
「じゃあ、あたしバイトだからそろそろ行くね。」
あさみがベンチから立ち上がった。
光は反省の念を込めて男の子と一緒にトンネルをつくっていた手を止めて、あさみの所へ向かった。
「バイトとはお金を稼ぐことであろう?もう無理に稼ぐ必要はないのでは??」
手についた砂を払いながら言った。
「それとこれとは別!シフト空けたら他の人に迷惑がかかっちゃうからね!」
あさみは笑顔で答えた。
バイトは嫌いじゃないし、人に迷惑はかけたくない。
最初は正直、もうバイトなんて休んじゃおうかなっとも思った。
だけど、光と男の子が仲良くトンネルづくりをしている様子を見ているうちに、失恋なんかでバイトを休むことが、かえってバカらしく思えてきた。
「それなら良いが…」
光はまだ何か納得してない様子であったが、そんな光をみてあさみは続けた。
「光、今日はその、ありがとね」
「??何がでおじゃる?」
「何て言うか、あたし一人だったら、雄太君に本当のこと聞けてなかったと思うの。昔からさ、肝心な所で逃げちゃう自分がいて…でも、さっきは光がいたから冷静に状況を見ることができたの。あんたのおじゃる言葉に救われたってこと!」
あさみは恥ずかしそうに笑いながら言った。
「おじゃる言葉とはなんぞ…?まあ、あさみ殿が救われたのならそれでよいが…」
光は納得したようなしてないような微妙な顔で答えた。
あさみはそれをみてフッと笑った。
「そう言えば、せい…ぞう番号?なるものはどのような物でもあるのでおじゃるか??あれで、雄太殿は観念したようでおじゃったが…」
光は思い出した様に言った。
「ああ…、あれね…さあ?どうなんだろう?よく知らな~い。あったとしてもそんなのいちいち覚書なんてしないよね~!」
「え?」
光が驚ろくと、あさみは悪戯っぽく笑った。
「なんと?!…やはりおなごとは、どの時代も強い生き物なのであろうか…いやはや、なんとも…」
「何、ブツブツ言ってるの?…あっ!そうだ、光にこれあげるよ」
財布から一枚の紙幣を取り出し、光に渡した。
「これは…紫…式部?!」
それは源氏物語が描かれた二千円紙幣だった。
大分前に沖縄サミットを記念して、発行されたものだがあまり普及していなく、最近は殆ど見ることのない紙幣だった。
「お母さんが若い頃につくられた記念紙幣なんだけど、源氏物語が描かれてるの。お金が貯まるかもってお母さんにもらったんだけど、光にあげるわ」
「もしかしてこれがまろ??」
光が下膨れの男の一人を指さす。
「…たぶん??」
光は興奮して何度もお札を眺めていた。
が、急にはっとしてあさみを振り返る。
あさみはその真意に気づき、
「ああっ、それはお礼だから。貢いだわけじゃないよ。恩・返・し!」
そう言って、また悪戯っぽい笑顔を見せた。
何か吹っ切れた様なあさみの笑顔を見て、光は素直に綺麗だと思った。
5分と歩いていないのに、もはやハーフマラソンくらいは余裕で走ったかのごとく汗だくの光を見て、あさみは仕方なく足を止めた。
商店街を出て、ほどなくした所にある児童公園のベンチに二人で腰かけた。
滑り台にブランコ、鉄棒、そして砂場があるだけの小さな公園だ。
砂場で男の子とお父さんの親子が一組、トンネルをつくっていた。
他には、あさみと光以外誰もいない。
「…はあ~っ…」
「…はあああっ…」
「…はあ~っ」
「…って何であたしよりあんたの方が思いっきり落ち込んでるのよ?!」
あさみは、半場呆れて光に言う。
先ほどから、光は大きなため息を何度もしているのである。
あさみは正直落ち込みたいのはこっちだよ!と思った。
「しかし、あさみ殿、まろはあの青年に〝女に貢がせるなど畜生以下”と言っておきながら、まろ自身はこれも!これも!全部あさみ殿に貢いで貰った物を着ているではないか!なんとも自分が恥ずかしい!!」
光は顔を手で覆って背中を丸めてふさぎ込んだ。どうやら本気で落ち込んでいるみたいだ。
「そんなこと雄太君に言ったの??まあでもさ、光の場合は貢いだっていうのとはちょっと違うし…」
あれで歩かれてはこっちが困る。
「いや、男として、まろは失格じゃ!なんとも…穴があったら入りたい気分でおじゃる…。」
光はまた大きなため息をついた。
あさみはめんどくさい男だなと思いながら、ふと砂場に目をやった。
あさみは意地悪い顔で、砂場で親子が造っているトンネルを指さした。
「光、穴ならあそこにあるよ」
「そうそう、ああゆう穴探してたんだよね、入ってこよう…って入れるかーー!あんな小さいの無理だわー!っつかトンネルだから入ったところで結局でてきちゃうわーー!」
……。
公園に静寂が現れた…。
いきなり水知らずのおじさん(ほんとは青年)の張り上げた声にびっくりして、砂場の男の子は思わず泣き出してしまった。
一緒にいたお父さんは眉をひそめて光を見る。
光は急いで、男の子に近寄り、平謝りをする。
「いや、その、つい…脅かすつもりは…」
あさみは…
―こっ…これが平安流乗りツッコミ!!―
どうでもいいことを考えていた。
「じゃあ、あたしバイトだからそろそろ行くね。」
あさみがベンチから立ち上がった。
光は反省の念を込めて男の子と一緒にトンネルをつくっていた手を止めて、あさみの所へ向かった。
「バイトとはお金を稼ぐことであろう?もう無理に稼ぐ必要はないのでは??」
手についた砂を払いながら言った。
「それとこれとは別!シフト空けたら他の人に迷惑がかかっちゃうからね!」
あさみは笑顔で答えた。
バイトは嫌いじゃないし、人に迷惑はかけたくない。
最初は正直、もうバイトなんて休んじゃおうかなっとも思った。
だけど、光と男の子が仲良くトンネルづくりをしている様子を見ているうちに、失恋なんかでバイトを休むことが、かえってバカらしく思えてきた。
「それなら良いが…」
光はまだ何か納得してない様子であったが、そんな光をみてあさみは続けた。
「光、今日はその、ありがとね」
「??何がでおじゃる?」
「何て言うか、あたし一人だったら、雄太君に本当のこと聞けてなかったと思うの。昔からさ、肝心な所で逃げちゃう自分がいて…でも、さっきは光がいたから冷静に状況を見ることができたの。あんたのおじゃる言葉に救われたってこと!」
あさみは恥ずかしそうに笑いながら言った。
「おじゃる言葉とはなんぞ…?まあ、あさみ殿が救われたのならそれでよいが…」
光は納得したようなしてないような微妙な顔で答えた。
あさみはそれをみてフッと笑った。
「そう言えば、せい…ぞう番号?なるものはどのような物でもあるのでおじゃるか??あれで、雄太殿は観念したようでおじゃったが…」
光は思い出した様に言った。
「ああ…、あれね…さあ?どうなんだろう?よく知らな~い。あったとしてもそんなのいちいち覚書なんてしないよね~!」
「え?」
光が驚ろくと、あさみは悪戯っぽく笑った。
「なんと?!…やはりおなごとは、どの時代も強い生き物なのであろうか…いやはや、なんとも…」
「何、ブツブツ言ってるの?…あっ!そうだ、光にこれあげるよ」
財布から一枚の紙幣を取り出し、光に渡した。
「これは…紫…式部?!」
それは源氏物語が描かれた二千円紙幣だった。
大分前に沖縄サミットを記念して、発行されたものだがあまり普及していなく、最近は殆ど見ることのない紙幣だった。
「お母さんが若い頃につくられた記念紙幣なんだけど、源氏物語が描かれてるの。お金が貯まるかもってお母さんにもらったんだけど、光にあげるわ」
「もしかしてこれがまろ??」
光が下膨れの男の一人を指さす。
「…たぶん??」
光は興奮して何度もお札を眺めていた。
が、急にはっとしてあさみを振り返る。
あさみはその真意に気づき、
「ああっ、それはお礼だから。貢いだわけじゃないよ。恩・返・し!」
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