イケメン?! 私の光る君(源氏物語より愛を込めて)

としろう

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新人の二人

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「あのっ店長…!」
あさみが呼び止める前に、店長はクルッとこっちを向き、恐ろしいくらいの笑顔でよってきた。
「まあま、あさみちゃん。君だってホール大変でしょう?猫の手も借りたいくらいな状況なわけだしさぁ。」
あさみちゃんなんて、呼ばれたことがない。
「バイト終わったら、ケーキ食べてもいいからさ!ねっ!」
いや、だから、あのケーキにそこまでの魅力ないんだってば…!
「いや、でもですね…」
克己はまだしも、光がバイトなんて無理だ。やっぱり断らなきゃ。
「店長~!!用意出来ましたぁ~。」
?!
振り向くと、秋山さんが制服に着替えた克己と光を連れてきた。
「ナイス!秋山さんはもう帰っていいよ~」
店長が笑顔で秋山さんに答える。
「は~い!」
秋山さんがニヤッとこっちを見て、帰って行った。
…秋山さんめ!自分が帰りたいが為に二人を生贄に出したな!!
そんな恨み節を言ってももう遅かった。店長はニコニコしながら、サクサクと二人を誘導していく。
「じゃあ、えっと、克己君がホールで、光君はキッチンに入ってもらおうかな」

「キッチンとはなんぞ?」
店長はシフトの目途が付いたことがよっぽど嬉しいのか、光の珍言動に、もはやスルーだ。

何もないことを祈ろう…。

観念したあさみは、とにかく仕事に集中することにした。
「克己、オーダーの取り方はわかる?言われたメニューのボタン押して、最後に送信ボタン押せばキッチンにオーダーが行くから。」
「多分大丈夫っしょ。」
びっくりするぐらいの軽い返事にあさみは若干イラッとしたが、こいつは昔から意外と器用なのだ。克己はすぐにオーダー方法を覚えた。
忙しくなる前に何組か実践させよう。
「じゃあ、10番さんのオーダー取ってきて」
「ほーい」
ほーいじゃないよっ、と思ったが、とりあえずやらせてみようとあさみは思った。
若い二人連れの女性だし、ちょっとたどたどしくても、若い男の子にきつくは言わないだろうなんて、多少の打算を持ちながら様子をうかがう。
「いらっしゃいませ、ご注文はおきまりですか?」
「じゃあ、このAセットふたつ。」
「ご一緒にドリンクバーはいかがですか?」
克己の営業スマイルがはじける。中々爽やかイイ笑顔だ。そういえばセリ達に、黙っていればイケメンと言われたことがあったっけ。
「あっ、じゃあ両方つけてください。」
少し、頬を赤らめながらお姉さん方が注文する。
これは、もしや思わぬ売上アップが期待できるかも??なんて思ったのは束の間だった。
「かしこまりました」
克己がメニューを取り終えて帰ろうとした時、片方の女性が克己を引き留めた。
「お兄さん、すごくカッコいいね。今日はシフト何時まで??彼女いるのぉ??」
女性は上目づかいで、克己に話しかけた。
…やばいっ!そう思った時にはもう遅かった。
「はあ?なんでそんなことあんたに答えないと行けないわけ?うぜーんだけど。っつか、人が仕事してるのに、関係のない話、してこないでもらえる?」
さっきまでの爽やかボーイが一変して、悪魔のような毒舌を吐き出したことに、彼女達の脳はまだ追いついいていないようである。
お姉さま方はポカンと口を開けている。

…今のうちに!

「失礼しました~!この子新人なもので…。口の利き方からしっかり教育させますので!では、失礼いたします~」
克己の頭を無理やりさげさせ、バックヤードに引っ込む。
「イテテっ!痛いって姉ちゃん!」
「…あんたはもう…なんて口の利き方なの!!」
「ええ~?だって向こうが関係ないこと聞いてくるのが悪いんじゃん??キモイってさマジ。」
…黙ってればねぇ。
あさみはため息をつく。その時、
「ぎゃあーーーっつ!」
キッチンから、誰かの叫び声が聞こえた。
「…まさかっ…」
あさみ達はキッチンに駆け込んだ。

―遡ること10分前。
「みんな、今日1日ヘルプで入ってくれる、えっと…」
「光でおじゃる。」
「そうそう!光君だ!今日1日だけど、みんな優しく教えてあげてね。」
キッチンスタッフ全員の頭に“おじゃる” が浮かんだが、店長があまりにも何もなかったかのように話を進めて行くので、誰もが突っ込むタイミングを失っていた。
「じゃあ、斉藤君!君、光君に教えてあげて~」そう言うと、店長は光を斉藤に預けて事務所に入っていった。事務仕事が途中だったらしい。
斉藤は妙に色白な小太り青年(年齢不詳)に少々戸惑いながらも、笑顔で接する。
「初めまして、斉藤です。光さんは名前?苗字は何て言うの?」
「斉藤殿、初めましてでおじゃる。ところで、苗字とはなんぞ?」
斉藤は思いがけもしない返しに驚いた。
「ええっ??その、苗字は苗字でしょ??もしかして光さん、外国人??」
「はて?外国人とはなんぞ??」
「…まあ、いいや。時間ないし。ちゃっちゃと仕事教えるね!えっと光さんはとりあえずここにある野菜切ってくれる?全部ざく切りでいいから。OK?」
斉藤は光をアジア系の外国人が、平安時代の映画でもみて日本語を勉強してしまったのだろうと思い、もう深く追求しないことにした。
日が暮れそうだし…。
「この包丁使ってね。…包丁くらい流石に使ったことあるよね??」
「失敬な!刀くらいは武士がいるとはいえ、護身用にやっておったでおじゃる!」
…刀?武士?斎藤のキャパをはるかに超えた返答に、斎藤は思考を完全にロックすることに決めた。
「まかせるでおじゃる!」
そう言うと光は包丁をまるで刀を持つように柄を握ると、何故かニンジンを左手に持つと、
「やあーーーー!!」
掛け声揚々、ニンジンを切った。

横、真っ二つに。

勢いよく振りぬかれた包丁は斎藤の鼻先をかすめた。
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