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職業に貴賤なし
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「てっ店長~!!」
斎藤は半泣きで店長を呼んだ。
店長も、あさみ達もキッチンに集まった。
「無理っす!マジ勘弁っす!こいつシャレんになんないですって!!」
「まあまあ、落ち着いて、ね??斎藤君」
店長が何とかなだめて、斎藤はようやく落ち着きを取り戻したが、もう、光を任せる事は無理のようだ。
しょうがないので、あさみが光を引き受けることにした。
あまり、フロアには出したくなかったが、仕方あるまい。
克己をキッチンに預け、光とあさみはフロアに入る。
「何がいけなかったでおじゃるか?まろは野菜を切っただけでおじゃる。」
光は納得がいってないようだが無視だ。
「とにかく、光はお客様がいなくなった後の食器を片付けて。あたしがやるのを見ててね。いい?基本的にはいなくなったところでいいからね?どうしてもお客様のいるテーブルを片付けないといけないときは、一言、これだけ覚えて。」
「??」
「失礼します!!」
「しつ・・・れい・・します??」
「そう!!もう、あとは余計な事しゃべらないで。いい?ほら、言ってみて?」
「失礼するでおじゃる」
「おじゃるは要らないの!!」
若干の不安は残ったもの、やり始めるとこの振り分けの方がスムーズに進んでいった。
光は一生懸命、お皿を片付け、机を拭いて、椅子を整えたりしている。
それだけでもやってくれると幾分も違うものだ。
あまりにも汗だくで、フロアを行き来しているせいか、意外とお客様も光には話かけてこない。
ある意味ラッキーな体格である。
一方の克己も、元々家でも料理をしていることもあって、持ち前の器用さで淡々とキッチン業務をこなしているようだ。
「いや~克己君、すごく筋がいいねぇ。お姉ちゃんと一緒にココで働いちゃう??」
「店長、無駄口叩いている暇あったらそこのじゃがいも洗ってくれます?しないなら、邪魔なんで引っ込んでてください。」
「あ…、すみません」
口の悪さは何処に行っても同じだが…。
そんな、こんなで、ピークも終わりに差し掛かろうとした時だった。
少しの気のゆるみ、もう終わるという安堵感があったせいかもしれない。
あさみはオーダーミスをしてしまった。
「お待たせしました。ハンバーグのAセットでございます。」
「は?俺が頼んだの、ハンバーグじゃなくてステーキなんだけど?」
「…!?」
やばい!!オーダーミスだ!
「すっすみません!直ぐに正しいものをお持ちします!」
若い男性客は苛立ってるようだった。
「直ぐにってさー、いつくるの?もう大分待ってるんだけど。」
「申し訳ございません!!」
あさみは必死で頭を下げる。
「もういいや。店長呼んで。あんたじゃ埒があかねえ。」
「あっ…えっと」
あさみが店長を呼びに行こうか迷っていると
「あさみ殿??」
光がお客の怒鳴り声に心配してやってきた。
「あんたが店長さん?」
「あっ、いや、この人は…」あさみが訂正しようとするが、お客は聞いていない。
「この子がさ~、オーダーミスしちゃってさー、こっちはずっと待ってたんだよ?わかる?どうしてくれんの?」
「…しつれいしますでおじゃる。」
「あぁ??」
やばい…!
光のすっとんきょうな回答がお客の火に油を注ぐ。
「てめえ、舐めてんの?」
客の眼光が益々鋭くなる。
「すみません!!この人は違うんです!!今、店長を呼びますので!!」
あさみが慌てて前へ出る。これ以上、怒らせてはいけない。
「姉ちゃんさあ、俺ねえ、あんたらと違って暇じゃないの。わかる?俺はさあ、頭使ってクリエイティブな仕事してんのよ。あんたらみたいに、楽で低レベルな仕事してないんだからさあ。あんたらファミレスの仕事なんて、俺らの言われた通りにオーダーとってりゃいいだけのぬる~い仕事だろ!?それも出来ねえならマジ終わってるよねえ!」
店内に客の怒声が響き渡る。
あさみは恥ずかしさと悔しさで体が震えてきて、立っているのがやっとだった。
「……なんだよ?その目は。開けてんのか開けてないのかわかんないような目ぇして。文句あんのかよ!」
いつの間にか光があさみの前に立っていた。
自分で言うのもなんだが、目は大きい方だぞと思っていたら、どうやら、光の事だった様だ。
「…光??」
「土下座しろよ。じゃないとおさまんねぇなあ。」
「ど…げ…ざ??」
「そうだよ、ほら、早く!」
客は高圧的に光達に土下座を要求する。
光とあさみはただ、立ち尽くす。
「できねえよな~?そんなこと。だったら、仕方ねえから、そっちの誠意の尽くし方みさせて…」
客が言いかけた時だった。
光が床に手をついて頭を下げた。
そう、土下座をしたのだ。
「…なっ!?」
客もまさか本当にするとは思ってなかったようで、戸惑っている様子だ。
「光!!」
「こちらの手違いで、お客殿に不快な思いをさせたことは本当に申し訳ないと思いまする。心からお詫びをするでおじゃる。」
「…なんだよ、変な言葉使って。マジ舐めてんのかよ…」
そう言いながらも、客の様子には明らかにさっきまでの勢いは無い。逆に、少しびびっている様だった。
すると、光が少しだけ頭をあげると、静かに言った。
「ですが、お客殿。職業に|貴賤《きせん
「は…?きせん??」
客が言葉の意味を掴めず、唖然としていると、店長が割って入った。
「お客様!うちの従業員が大変失礼しました!私が店長の畑です!!」
「やっと、出てきたのかよ~。店長さんよ~!まじ、話通じねえ奴ばっかりで困ってたのよ!」
客はあきらかにほっとした様子を見せると、光から目を背け、店長に文句を言う。
「本当に失礼しました。斎藤君!あれを。」
「はい!」
斎藤が店長に封筒を渡す。
「こちら、今日の分のお代です。もちろん、ステーキセットでご用意しております。」
客の目の色が明らかに変わった。表情がゆるんだ。
「随分、対応速いじゃん。」
客は封筒を上機嫌で受け取る。
「ですので、お客様。どうぞ今直ぐお帰り下さいませ。」
「…は?」
さっきまで上機嫌だったお客の表情が怒りに変わる。
「私達は皆、私達の仕事に誇りをもってやっております。お客様にバカにされる様な仕事をしているつもりはありません。職業に差はありませんから。」
店長が光の横で一緒になって土下座をした。
「どうぞ、御帰り下さい!!」
店内が次第にザワつき出す。
「何あれ?土下座してるよ。」
「やだあ、クレーマーじゃない??」
「動画サイトにアップして脅迫するんじゃね??怖~。」
「…くっ。帰るぞ!!」
客はバツが悪くなったのか、封筒を握りしめ、連れと店を出て行った。
「店長~!光!私のせいでごめんなさい!」
あさみが急いで二人に謝る。
「気にしないの~。従業員を守るのも店長の役目だからさ~。でも、光君には申し訳ないことさせちゃったね。」
店長がすまなそうに、光をみる。
「何がでおじゃるか?」
光は特に、土下座したことを気にしていない様だ。
「僕、店長が初めてカッコよく見えました。」
「え?斎藤君?初めては余計じゃない??」
ともあれ、なんとかピークも終え、あさみ達のシフトも終わりを迎えた。
「お疲れ様で~す」
「あっ、お疲れ~!ケーキ三人分奥に出してあるから食べてってね~!ケンカしないでよ!」
いくつだと思っているんだ。そもそもあのケーキにそんな魅力はねーよと思いながらも、今日は店長にお世話になったので、愛想笑で返す。
「店長、今日は本当にありがとうございました。私、この仕事好きですよ。」
あさみが笑顔で言う。
「そっか。良かった。さっきはああ言ったけど、正直、日々の仕事をこなすのに精一杯で、仕事に対してのプライドなんて無くしかけてたなぁ…前だったらてっとり早く、ただ謝ってた…。お客様第一じゃなくて、お客様と向き合うのが面倒になっていただけなんだよね。光君に当たり前の事を気付かされたよ!!な~んか変わってるけど、彼、独特の雰囲気あるよね??」
そりゃあ、平安の皇子様ですもの。雰囲気ありまくり…とは言えないが、あさみも感じていた。
光の現代とは全く違う概念の中にあって、それでいて1000年前から変わらない何かを。
「…まろは思ったことを言っているだけじゃが?」
光は何がおかしいのかわからないといった表情で店長を見る。それを見て、店長は笑った。
「あっそうだ、克己君、良かったらこれからも…」
「断わる。」
即答…!!
3人は着替え終えたので、店長が用意したケーキを食べて帰ることにした。
苺のロールケーキだ。上にも苺が乗っている。
「おっ。これは一応お店では美味しい方よ。当たりね。ハイ、光、克己」
あさみはケーキを2人に配る。
すると、克己が配られたケーキをあさみのものと取り替えた。
「…??」
「姉ちゃん、苺好きだろ?」
あさみの前に一番大きい苺が乗ったロールケーキを置く。
「克己…」
「まろも苺好きでおじゃるよ。」
「おめーはいいの!」
光は不満げに口をとがらせてみせたが、目は満足そうだった。
「…うん。いただきます!」
あさみは、弟の思わぬ優しさに触れてなんだかくすぐったい気分になった。
「そう言えば、光、よく土下座なんて知ってたね?」
あさみはロールケーキのイチゴをほおばりながら、さっき躊躇なく土下座をした光を思い出していた。あの時代土下座ってあったのだろうか。あったとしても高貴な光がそんな事簡単にできるはず…。
「それは…」
「来る前にテレビでたまたまやってたんだよ。」克己が口を挟む。
「んで、光に何かって聞かれたから教えてやった。この国で一番の誠意の尽くし方だって。これをすれば、大抵の人は許してくれるって。」
「店長も誠意を尽くされてたでおじゃるな。」
間違いではないけれど…。
「あんまり頻繁にやるものではないんだよ??」
このままじゃ何かにつけて土下座しかねない。
「そうでおじゃるか?誠意を尽くすのは大事であろう??」
「克己~!なんとか説明してよ!」
「日本文化って難しいな。」
そう言って克己は小さな苺の乗ったロールケーキを美味しそうに食べた。
斎藤は半泣きで店長を呼んだ。
店長も、あさみ達もキッチンに集まった。
「無理っす!マジ勘弁っす!こいつシャレんになんないですって!!」
「まあまあ、落ち着いて、ね??斎藤君」
店長が何とかなだめて、斎藤はようやく落ち着きを取り戻したが、もう、光を任せる事は無理のようだ。
しょうがないので、あさみが光を引き受けることにした。
あまり、フロアには出したくなかったが、仕方あるまい。
克己をキッチンに預け、光とあさみはフロアに入る。
「何がいけなかったでおじゃるか?まろは野菜を切っただけでおじゃる。」
光は納得がいってないようだが無視だ。
「とにかく、光はお客様がいなくなった後の食器を片付けて。あたしがやるのを見ててね。いい?基本的にはいなくなったところでいいからね?どうしてもお客様のいるテーブルを片付けないといけないときは、一言、これだけ覚えて。」
「??」
「失礼します!!」
「しつ・・・れい・・します??」
「そう!!もう、あとは余計な事しゃべらないで。いい?ほら、言ってみて?」
「失礼するでおじゃる」
「おじゃるは要らないの!!」
若干の不安は残ったもの、やり始めるとこの振り分けの方がスムーズに進んでいった。
光は一生懸命、お皿を片付け、机を拭いて、椅子を整えたりしている。
それだけでもやってくれると幾分も違うものだ。
あまりにも汗だくで、フロアを行き来しているせいか、意外とお客様も光には話かけてこない。
ある意味ラッキーな体格である。
一方の克己も、元々家でも料理をしていることもあって、持ち前の器用さで淡々とキッチン業務をこなしているようだ。
「いや~克己君、すごく筋がいいねぇ。お姉ちゃんと一緒にココで働いちゃう??」
「店長、無駄口叩いている暇あったらそこのじゃがいも洗ってくれます?しないなら、邪魔なんで引っ込んでてください。」
「あ…、すみません」
口の悪さは何処に行っても同じだが…。
そんな、こんなで、ピークも終わりに差し掛かろうとした時だった。
少しの気のゆるみ、もう終わるという安堵感があったせいかもしれない。
あさみはオーダーミスをしてしまった。
「お待たせしました。ハンバーグのAセットでございます。」
「は?俺が頼んだの、ハンバーグじゃなくてステーキなんだけど?」
「…!?」
やばい!!オーダーミスだ!
「すっすみません!直ぐに正しいものをお持ちします!」
若い男性客は苛立ってるようだった。
「直ぐにってさー、いつくるの?もう大分待ってるんだけど。」
「申し訳ございません!!」
あさみは必死で頭を下げる。
「もういいや。店長呼んで。あんたじゃ埒があかねえ。」
「あっ…えっと」
あさみが店長を呼びに行こうか迷っていると
「あさみ殿??」
光がお客の怒鳴り声に心配してやってきた。
「あんたが店長さん?」
「あっ、いや、この人は…」あさみが訂正しようとするが、お客は聞いていない。
「この子がさ~、オーダーミスしちゃってさー、こっちはずっと待ってたんだよ?わかる?どうしてくれんの?」
「…しつれいしますでおじゃる。」
「あぁ??」
やばい…!
光のすっとんきょうな回答がお客の火に油を注ぐ。
「てめえ、舐めてんの?」
客の眼光が益々鋭くなる。
「すみません!!この人は違うんです!!今、店長を呼びますので!!」
あさみが慌てて前へ出る。これ以上、怒らせてはいけない。
「姉ちゃんさあ、俺ねえ、あんたらと違って暇じゃないの。わかる?俺はさあ、頭使ってクリエイティブな仕事してんのよ。あんたらみたいに、楽で低レベルな仕事してないんだからさあ。あんたらファミレスの仕事なんて、俺らの言われた通りにオーダーとってりゃいいだけのぬる~い仕事だろ!?それも出来ねえならマジ終わってるよねえ!」
店内に客の怒声が響き渡る。
あさみは恥ずかしさと悔しさで体が震えてきて、立っているのがやっとだった。
「……なんだよ?その目は。開けてんのか開けてないのかわかんないような目ぇして。文句あんのかよ!」
いつの間にか光があさみの前に立っていた。
自分で言うのもなんだが、目は大きい方だぞと思っていたら、どうやら、光の事だった様だ。
「…光??」
「土下座しろよ。じゃないとおさまんねぇなあ。」
「ど…げ…ざ??」
「そうだよ、ほら、早く!」
客は高圧的に光達に土下座を要求する。
光とあさみはただ、立ち尽くす。
「できねえよな~?そんなこと。だったら、仕方ねえから、そっちの誠意の尽くし方みさせて…」
客が言いかけた時だった。
光が床に手をついて頭を下げた。
そう、土下座をしたのだ。
「…なっ!?」
客もまさか本当にするとは思ってなかったようで、戸惑っている様子だ。
「光!!」
「こちらの手違いで、お客殿に不快な思いをさせたことは本当に申し訳ないと思いまする。心からお詫びをするでおじゃる。」
「…なんだよ、変な言葉使って。マジ舐めてんのかよ…」
そう言いながらも、客の様子には明らかにさっきまでの勢いは無い。逆に、少しびびっている様だった。
すると、光が少しだけ頭をあげると、静かに言った。
「ですが、お客殿。職業に|貴賤《きせん
「は…?きせん??」
客が言葉の意味を掴めず、唖然としていると、店長が割って入った。
「お客様!うちの従業員が大変失礼しました!私が店長の畑です!!」
「やっと、出てきたのかよ~。店長さんよ~!まじ、話通じねえ奴ばっかりで困ってたのよ!」
客はあきらかにほっとした様子を見せると、光から目を背け、店長に文句を言う。
「本当に失礼しました。斎藤君!あれを。」
「はい!」
斎藤が店長に封筒を渡す。
「こちら、今日の分のお代です。もちろん、ステーキセットでご用意しております。」
客の目の色が明らかに変わった。表情がゆるんだ。
「随分、対応速いじゃん。」
客は封筒を上機嫌で受け取る。
「ですので、お客様。どうぞ今直ぐお帰り下さいませ。」
「…は?」
さっきまで上機嫌だったお客の表情が怒りに変わる。
「私達は皆、私達の仕事に誇りをもってやっております。お客様にバカにされる様な仕事をしているつもりはありません。職業に差はありませんから。」
店長が光の横で一緒になって土下座をした。
「どうぞ、御帰り下さい!!」
店内が次第にザワつき出す。
「何あれ?土下座してるよ。」
「やだあ、クレーマーじゃない??」
「動画サイトにアップして脅迫するんじゃね??怖~。」
「…くっ。帰るぞ!!」
客はバツが悪くなったのか、封筒を握りしめ、連れと店を出て行った。
「店長~!光!私のせいでごめんなさい!」
あさみが急いで二人に謝る。
「気にしないの~。従業員を守るのも店長の役目だからさ~。でも、光君には申し訳ないことさせちゃったね。」
店長がすまなそうに、光をみる。
「何がでおじゃるか?」
光は特に、土下座したことを気にしていない様だ。
「僕、店長が初めてカッコよく見えました。」
「え?斎藤君?初めては余計じゃない??」
ともあれ、なんとかピークも終え、あさみ達のシフトも終わりを迎えた。
「お疲れ様で~す」
「あっ、お疲れ~!ケーキ三人分奥に出してあるから食べてってね~!ケンカしないでよ!」
いくつだと思っているんだ。そもそもあのケーキにそんな魅力はねーよと思いながらも、今日は店長にお世話になったので、愛想笑で返す。
「店長、今日は本当にありがとうございました。私、この仕事好きですよ。」
あさみが笑顔で言う。
「そっか。良かった。さっきはああ言ったけど、正直、日々の仕事をこなすのに精一杯で、仕事に対してのプライドなんて無くしかけてたなぁ…前だったらてっとり早く、ただ謝ってた…。お客様第一じゃなくて、お客様と向き合うのが面倒になっていただけなんだよね。光君に当たり前の事を気付かされたよ!!な~んか変わってるけど、彼、独特の雰囲気あるよね??」
そりゃあ、平安の皇子様ですもの。雰囲気ありまくり…とは言えないが、あさみも感じていた。
光の現代とは全く違う概念の中にあって、それでいて1000年前から変わらない何かを。
「…まろは思ったことを言っているだけじゃが?」
光は何がおかしいのかわからないといった表情で店長を見る。それを見て、店長は笑った。
「あっそうだ、克己君、良かったらこれからも…」
「断わる。」
即答…!!
3人は着替え終えたので、店長が用意したケーキを食べて帰ることにした。
苺のロールケーキだ。上にも苺が乗っている。
「おっ。これは一応お店では美味しい方よ。当たりね。ハイ、光、克己」
あさみはケーキを2人に配る。
すると、克己が配られたケーキをあさみのものと取り替えた。
「…??」
「姉ちゃん、苺好きだろ?」
あさみの前に一番大きい苺が乗ったロールケーキを置く。
「克己…」
「まろも苺好きでおじゃるよ。」
「おめーはいいの!」
光は不満げに口をとがらせてみせたが、目は満足そうだった。
「…うん。いただきます!」
あさみは、弟の思わぬ優しさに触れてなんだかくすぐったい気分になった。
「そう言えば、光、よく土下座なんて知ってたね?」
あさみはロールケーキのイチゴをほおばりながら、さっき躊躇なく土下座をした光を思い出していた。あの時代土下座ってあったのだろうか。あったとしても高貴な光がそんな事簡単にできるはず…。
「それは…」
「来る前にテレビでたまたまやってたんだよ。」克己が口を挟む。
「んで、光に何かって聞かれたから教えてやった。この国で一番の誠意の尽くし方だって。これをすれば、大抵の人は許してくれるって。」
「店長も誠意を尽くされてたでおじゃるな。」
間違いではないけれど…。
「あんまり頻繁にやるものではないんだよ??」
このままじゃ何かにつけて土下座しかねない。
「そうでおじゃるか?誠意を尽くすのは大事であろう??」
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