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貴女のいる時間の中で
⑦
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早速、辞令がでて、特任課の係長となる自分がいた。
森田常務から呼ばれて、部屋に向かうと、蒼井常務も居て、満面の笑みで見てくれた。森田常務から頑張れとはっぱをかけられて、受け取った事例は紙一枚であったが、とても重く感じて身震いしてしまったが、蒼井常務の表情を見ると、その表情に応えたいと心からふつふつと湧き起こってきた。
「成田。お前なら、これくらいできるとは思っているからこその、今回の件だから。踏ん張ってやって欲しい。蒼井さんも、随分推薦してくれたから。気合いいれてな。期待してるぞ」
そう森田常務は話されると、手を差し伸べて硬い握手をした。
その感触と、温もりと、あと蒼井さんのあの笑顔は、忘れることがないだろう。
辞令が出た後に、若葉病院へ江田看護部長や、各師長たちへ報告をするために向かった。先週末、そんな話になるとは思っていなかっただけに、今日山本師長たちに伝えるのが少し照れるような感じがした。
でも、絶対に良かったやないですか。って褒めてくれるんだろうな。
あと、今日は淳子さんは出勤してるのかなぁ。週末のこととか話したい。そんなことを考えながら若葉病院まで車を走らせた。
FMを付けていたら、back numberの曲が流れていた。
雪が綺麗と笑うのは君がいい
でも寒いねって嬉しそうなのも
転びそうになって掴んだ手のその先で
ありがとうって楽しそうなのも
それも君がいい
この君ってところに、真っ先に降りてきたのが、淳子さんであった。あの一晩の時間を過ごしたことで、今まで見れなかった淳子さんの素の部分が垣間見れたこと。それが大きい。
これまで、淳子さんの看護師としての姿は見てきたから、そこにはリスペクトしてこれた。かっこいいなと思っていた。その成田淳子の大きな木にいっぱいいろんなものがくっついて、より魅力的な、綺麗な木になってしまった。
そんな気持ちにこのback numberの曲を聴きながら感じてしまった。
今日淳子さんに声をかけるときにどんな顔して話しかけたらいいのかがわからないが、確実に気持ちは持っていかれている。
これからどうしたらいいのだろう…
モヤモヤの気持ちのまま車は若葉病院に到着した。院内に早速入ると事務所のドアから、江田看護部長が出てきた。
「成田さん。早速辞令の通達が出てましたね。係長昇進したんですね。ますます頑張らなきゃですね。偉くなりました。私たち看護部の子たちをよろしくお願いしますね。まぁ、成田さんに任せておけば大丈夫かぁ。」
少しいたずらな笑みを含みながら、話しておられた看護部長の後ろから、山本師長も出てこられ、
「え?成田さん。昇進したんですか?すごいじゃないですか。おいそれともう、成田さんって呼ばないですね。もうこれからは係長って呼ばなきゃですね。」
と看護部長に続いて、ぼくを囃し立てた。
「お二人ともそんな大袈裟に言わないでください。何もぼくは変わらないですよ。ぼくがすることには変わらないですから。これからもよろしくお願いしますね。」
山本師長は、ぼくの話にかぶさるかのような勢いで更にニヤリとしながら話を続けられてこられた。
「あー。係長になられると話されることが変わるんですね。そんなに謙遜しなくてもよろしいんではないですか?ねぇ。部長」
「ほんとですね。山本師長のおっしゃる通りです。そうも変わるんですね。偉くなったなぁ。成田さん。あ、ごめんなさい。成田係長でしたね。」
「もう、そんな茶化さないでくださいよ。2人して…。山本師長。今日、松岡さん来てますか?出勤されてるなら、一度お会いしたいんですが…。」
「あ、『成田係長』が話を逸らした。」
さらに師長はたたみかけてきたので、さすがに看護部長も、申し訳ないと感じたのか、ようやくあいだに入ってくれたことで鎮静した。
「松岡さん、少し気持ちが沈んでいるって師長話してましたよね。その件かしら。」
「あ、はい。その件です。先週に成田さんに、ウチの成田さんと話しております。松岡さんは、今日は日勤でしっかり出勤しております。今日の朝からの様子は今まで通りで変わりありません。この週末休みでしたので、気持ちの切り替えができたのかもしれないですね。」
ようやく師長も、トーンダウンして普段の様子に戻り話し出した。話の切り替え成功した。
「あら、山本師長良かったじゃない。先週末のやり取りの後、すぐの対応、さすが成田さん。対応が早いわね。それにも感謝だわ。安心して任せてられるわ。法人内の施設の中で、看護師の離職率一番低いのも、成田さんのおかげかな…。」
「何をおっしゃってるんですか。それだけではここまではできません。現場の師長さんや、江田看護部長の対応の賜物ですよ。ぼくの力なんて微々たるもんです。皆さんのお力の上にぼくの対応が乗っかってるだけです。こちらこそ感謝です。」
森田常務から呼ばれて、部屋に向かうと、蒼井常務も居て、満面の笑みで見てくれた。森田常務から頑張れとはっぱをかけられて、受け取った事例は紙一枚であったが、とても重く感じて身震いしてしまったが、蒼井常務の表情を見ると、その表情に応えたいと心からふつふつと湧き起こってきた。
「成田。お前なら、これくらいできるとは思っているからこその、今回の件だから。踏ん張ってやって欲しい。蒼井さんも、随分推薦してくれたから。気合いいれてな。期待してるぞ」
そう森田常務は話されると、手を差し伸べて硬い握手をした。
その感触と、温もりと、あと蒼井さんのあの笑顔は、忘れることがないだろう。
辞令が出た後に、若葉病院へ江田看護部長や、各師長たちへ報告をするために向かった。先週末、そんな話になるとは思っていなかっただけに、今日山本師長たちに伝えるのが少し照れるような感じがした。
でも、絶対に良かったやないですか。って褒めてくれるんだろうな。
あと、今日は淳子さんは出勤してるのかなぁ。週末のこととか話したい。そんなことを考えながら若葉病院まで車を走らせた。
FMを付けていたら、back numberの曲が流れていた。
雪が綺麗と笑うのは君がいい
でも寒いねって嬉しそうなのも
転びそうになって掴んだ手のその先で
ありがとうって楽しそうなのも
それも君がいい
この君ってところに、真っ先に降りてきたのが、淳子さんであった。あの一晩の時間を過ごしたことで、今まで見れなかった淳子さんの素の部分が垣間見れたこと。それが大きい。
これまで、淳子さんの看護師としての姿は見てきたから、そこにはリスペクトしてこれた。かっこいいなと思っていた。その成田淳子の大きな木にいっぱいいろんなものがくっついて、より魅力的な、綺麗な木になってしまった。
そんな気持ちにこのback numberの曲を聴きながら感じてしまった。
今日淳子さんに声をかけるときにどんな顔して話しかけたらいいのかがわからないが、確実に気持ちは持っていかれている。
これからどうしたらいいのだろう…
モヤモヤの気持ちのまま車は若葉病院に到着した。院内に早速入ると事務所のドアから、江田看護部長が出てきた。
「成田さん。早速辞令の通達が出てましたね。係長昇進したんですね。ますます頑張らなきゃですね。偉くなりました。私たち看護部の子たちをよろしくお願いしますね。まぁ、成田さんに任せておけば大丈夫かぁ。」
少しいたずらな笑みを含みながら、話しておられた看護部長の後ろから、山本師長も出てこられ、
「え?成田さん。昇進したんですか?すごいじゃないですか。おいそれともう、成田さんって呼ばないですね。もうこれからは係長って呼ばなきゃですね。」
と看護部長に続いて、ぼくを囃し立てた。
「お二人ともそんな大袈裟に言わないでください。何もぼくは変わらないですよ。ぼくがすることには変わらないですから。これからもよろしくお願いしますね。」
山本師長は、ぼくの話にかぶさるかのような勢いで更にニヤリとしながら話を続けられてこられた。
「あー。係長になられると話されることが変わるんですね。そんなに謙遜しなくてもよろしいんではないですか?ねぇ。部長」
「ほんとですね。山本師長のおっしゃる通りです。そうも変わるんですね。偉くなったなぁ。成田さん。あ、ごめんなさい。成田係長でしたね。」
「もう、そんな茶化さないでくださいよ。2人して…。山本師長。今日、松岡さん来てますか?出勤されてるなら、一度お会いしたいんですが…。」
「あ、『成田係長』が話を逸らした。」
さらに師長はたたみかけてきたので、さすがに看護部長も、申し訳ないと感じたのか、ようやくあいだに入ってくれたことで鎮静した。
「松岡さん、少し気持ちが沈んでいるって師長話してましたよね。その件かしら。」
「あ、はい。その件です。先週に成田さんに、ウチの成田さんと話しております。松岡さんは、今日は日勤でしっかり出勤しております。今日の朝からの様子は今まで通りで変わりありません。この週末休みでしたので、気持ちの切り替えができたのかもしれないですね。」
ようやく師長も、トーンダウンして普段の様子に戻り話し出した。話の切り替え成功した。
「あら、山本師長良かったじゃない。先週末のやり取りの後、すぐの対応、さすが成田さん。対応が早いわね。それにも感謝だわ。安心して任せてられるわ。法人内の施設の中で、看護師の離職率一番低いのも、成田さんのおかげかな…。」
「何をおっしゃってるんですか。それだけではここまではできません。現場の師長さんや、江田看護部長の対応の賜物ですよ。ぼくの力なんて微々たるもんです。皆さんのお力の上にぼくの対応が乗っかってるだけです。こちらこそ感謝です。」
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