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一進、一退ッ!
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仁村達が74式戦車と戦っている頃、C組陣地周辺ではA組ゲリラの掃討が進んでいた。
「くそ~、どこ行っても敵おるやん…」
本田はC組の掃討部隊から辛くも逃げ延びていた。
タタタ…タタタ…
本田は時おり聞こえる銃撃音が徐々に包囲するように動いていることに気がついていた。
「このまんまやと囲まれるかもしれへんなー」
バイクに跨がったまま腕を組んで考え込む。
「うーん…どないしょ…」
しかし考えても頭は真っ白なままで名案どころか案の1つも浮かばない。
「ま、ええわ。テキトーに進んだろ」
考えるのを止めた本田は道の良さそうな所を選んでバイクを走らせた。
その先は奇しくもC組の本陣がある方向だった。
────────────────────
74式戦車の追撃をUH-60に任せた仁村達は目標制圧エリアの目の前まで迫っていた。
「もうすぐ目標地点だ。周藤、みんなの様子はどうだ?」
仁村が戦車に直接跨乗している周藤に仲間の様子を訊いた。
「大半の者が被弾を免れた。被弾した者も処置をして戦える…が、やはり万全ではない者もいるな」
先程の逃走劇で被弾したのだろう。
手足末端に弾を受けたなら処置のしようもあるが、胴に受けた者はやがて麻酔が回り戦死となる。
現に仁村の乗るレオパルト2の車体の上で横になっている隊員がいた。
『はっ!はっ!う、撃たれた!助けて!』
『大丈夫だ!安心しろ!今助けてやる』
『はっ!はぁっ!い、意識が…!ああ!ママ!ママ!』
『おい!こいつを押さえろ!落ちるぞ!』
『大丈夫だ!落ち着け!弾を取るぞ、ちょっとの間頑張れ!』
そう言ってお腹に刺さった小さな針付きのゴム弾を抜く。
『もう大丈夫だぞ、よく頑張った』
しかしその頃にはもう被弾した隊員は虚ろな眼をしていた。
『ひゅー、ひゅー、ママ…マ、マ…ぐぅZzz 』
『おい…?オイ!目を覚ませ!』
『…クソ!クソッ!』
静かに(麻酔的な意味で)眠りについた隊員を囲んで皆涙を流していた。
「…楽しんでないか?」
「こういう展開は好きだろう?」
ニヤリとした周藤は楽しんでいるようだ。
あながち否定できない仁村はポリポリと頬を掻いて話を元に戻した。
「そろそろ下車用意頼むわ」
「分かっている」
うなずいて真剣な表情に戻った周藤は戦死者を後送する用意を始める。
仁村は警戒を促した。
「そろそろ陣地が見えてくる。アンブッシュに注意だ」
米田も頭を出して全周警戒している。
陣地に守備は必須だが、あれだけ前線に戦力を割いた後だ。そんなにガッチリ固めてはないだろ。
そう考えていた矢先に米田が敵を見つけた。
「敵戦車だ」
ほぼ同時に仁村も見つけていた。
A組の90式戦車が地面の起伏の後ろに隠れて、砲塔をこちらに指向している。
「1輌か、突破しよう。行進間射撃で突っ切るぞ!」
レオパルト2とPL-01の砲も90式戦車を指向する。
肌を焼くようなピリッとした緊張が張りつめた。
「撃てッ!」
ドドン!ドン!
3輌がほぼ同時に火を吹いた。
『こちらタイガー2!履帯をやられた!』
とっさに振り返るとスピードが落ちて、みるみる距離が開いていくPL-01の姿があった。
反対に90式戦車は被弾を免れ、健在だ。
「まずいぞ!追撃喰らう前に仕留めろ!」
「装填よし!いつでも撃てるぞ!」
仁村の指示に米田の素早いレスポンスが返ってくる。
「よし、撃──」
PL-01から正面の敵90式戦車に視線を戻す刹那、仁村の眼が雑木林からこちらを狙う砲身を捉えた。
「発射!」
しかし時すでに遅く、的場はその正確無比な照準で引き金を引いた。
ズドン!ドン!
(しまった…)
後方からの砲撃に仁村は失敗を悟った。
振り返ると完全に停止したPL-01がランプを光らせていた。
「くそ~、どこ行っても敵おるやん…」
本田はC組の掃討部隊から辛くも逃げ延びていた。
タタタ…タタタ…
本田は時おり聞こえる銃撃音が徐々に包囲するように動いていることに気がついていた。
「このまんまやと囲まれるかもしれへんなー」
バイクに跨がったまま腕を組んで考え込む。
「うーん…どないしょ…」
しかし考えても頭は真っ白なままで名案どころか案の1つも浮かばない。
「ま、ええわ。テキトーに進んだろ」
考えるのを止めた本田は道の良さそうな所を選んでバイクを走らせた。
その先は奇しくもC組の本陣がある方向だった。
────────────────────
74式戦車の追撃をUH-60に任せた仁村達は目標制圧エリアの目の前まで迫っていた。
「もうすぐ目標地点だ。周藤、みんなの様子はどうだ?」
仁村が戦車に直接跨乗している周藤に仲間の様子を訊いた。
「大半の者が被弾を免れた。被弾した者も処置をして戦える…が、やはり万全ではない者もいるな」
先程の逃走劇で被弾したのだろう。
手足末端に弾を受けたなら処置のしようもあるが、胴に受けた者はやがて麻酔が回り戦死となる。
現に仁村の乗るレオパルト2の車体の上で横になっている隊員がいた。
『はっ!はっ!う、撃たれた!助けて!』
『大丈夫だ!安心しろ!今助けてやる』
『はっ!はぁっ!い、意識が…!ああ!ママ!ママ!』
『おい!こいつを押さえろ!落ちるぞ!』
『大丈夫だ!落ち着け!弾を取るぞ、ちょっとの間頑張れ!』
そう言ってお腹に刺さった小さな針付きのゴム弾を抜く。
『もう大丈夫だぞ、よく頑張った』
しかしその頃にはもう被弾した隊員は虚ろな眼をしていた。
『ひゅー、ひゅー、ママ…マ、マ…ぐぅZzz 』
『おい…?オイ!目を覚ませ!』
『…クソ!クソッ!』
静かに(麻酔的な意味で)眠りについた隊員を囲んで皆涙を流していた。
「…楽しんでないか?」
「こういう展開は好きだろう?」
ニヤリとした周藤は楽しんでいるようだ。
あながち否定できない仁村はポリポリと頬を掻いて話を元に戻した。
「そろそろ下車用意頼むわ」
「分かっている」
うなずいて真剣な表情に戻った周藤は戦死者を後送する用意を始める。
仁村は警戒を促した。
「そろそろ陣地が見えてくる。アンブッシュに注意だ」
米田も頭を出して全周警戒している。
陣地に守備は必須だが、あれだけ前線に戦力を割いた後だ。そんなにガッチリ固めてはないだろ。
そう考えていた矢先に米田が敵を見つけた。
「敵戦車だ」
ほぼ同時に仁村も見つけていた。
A組の90式戦車が地面の起伏の後ろに隠れて、砲塔をこちらに指向している。
「1輌か、突破しよう。行進間射撃で突っ切るぞ!」
レオパルト2とPL-01の砲も90式戦車を指向する。
肌を焼くようなピリッとした緊張が張りつめた。
「撃てッ!」
ドドン!ドン!
3輌がほぼ同時に火を吹いた。
『こちらタイガー2!履帯をやられた!』
とっさに振り返るとスピードが落ちて、みるみる距離が開いていくPL-01の姿があった。
反対に90式戦車は被弾を免れ、健在だ。
「まずいぞ!追撃喰らう前に仕留めろ!」
「装填よし!いつでも撃てるぞ!」
仁村の指示に米田の素早いレスポンスが返ってくる。
「よし、撃──」
PL-01から正面の敵90式戦車に視線を戻す刹那、仁村の眼が雑木林からこちらを狙う砲身を捉えた。
「発射!」
しかし時すでに遅く、的場はその正確無比な照準で引き金を引いた。
ズドン!ドン!
(しまった…)
後方からの砲撃に仁村は失敗を悟った。
振り返ると完全に停止したPL-01がランプを光らせていた。
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