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本部、工作ッ!
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優木の活躍で人知れず(本人も知らず)迫撃砲隊が平穏を取り戻した頃、本部に無線が入ってきた。
『HQこちらタイガー1、レンジャー2の援護に向かう途中で3名の仲間と合流した。引き続き前進する』
それはレンジャー1から派遣した仁村・周藤の別動隊が目的地域に入った事を示すものだった。
今村は作戦地域に彼我の位置が詳細に記された地図の横に置かれた無線機を取った。
「タイガー1、よくやった。その調子で頼むね」
仁村からの短い返答を聞き流すと、今村は腕組みをして改めて地図を眺めた。
状況は予想だにしない方向へと進んでいた。
一度崩れたレンジャー2は退がってなんとか抗戦しているし、対処策も施した。
防衛線を突破したゲリラへの対処も横田率いるスカウトチームがやってくれている。
ただ不安要素もあった。
密林を巧く利用したゲリラが突発的に本部を襲う事。先程も見廻りの隊員と戦闘が起き、お互いに損耗が出たばかりだ。
そしてもう1つ。レンジャー2を襲ったA組の謎の高速移動だ。
これには今村も頭を抱えていた。
「さて…どうしたもんかね」
今村はため息をついた。
「…今村」
「ぅわぁっ!?」
突如背後から話しかけられ、今村は小さく飛び上がった。
「…驚かせるつもりはなかった」
「あ、ああ。横田ちゃんか。いつからいたんだい?」
てっきり1人だと思っていたが…。今村は冷や汗を流す。
「…今入ったところ」
「そっか。流石というか、全然気がつかなかったよ。それで、何か用かな?」
横田の影の薄さに戦慄を覚えつつ本題を切り出した今村は、そこで横田がある物を持っている事に気がついた。
「マウンテンバイク?」
「…そう」
横田は深い緑色のまだら模様に塗られたマウンテンバイクを持っていた。
今村の頭の中で歯車が噛み合った気がした。
「…さっきの戦いで倒したA組の人が乗ってた」
「(なるほどね。密林の中で静かにかつ高速で動けた理由はこいつだったのか。)」
「…それと」
今村が1人納得していると横田が再び話し始めた。
「ん?」
「…A組の参謀が変わったという情報がある」
「それは本当かい!?」
「…(こくり)」
横田が静かに頷いた。
今村の頭の中の歯車が回りだす。
「(前回、今回と大掛かりな突撃が無いのはそれが理由か。頭がすげ替わっているなら、団結はまだ弱い。そこを突けばあるいは…)」
すっと顔を上げた今村は地図に目を転じて一点、レンジャー2と対峙しているA組集団を指差した。地図を睨む眼光は鋭い。
「横田ちゃん、ここの指揮官は誰か分かるかい?どんな奴か調べてくれ」
横田は頷くと携帯端末を取り出し、どこかに連絡を取り始めた。
すぐに返信が届く。
「…猪頭曹長。脳筋で、『突撃命令はまだか!』としきりに怒鳴ってるらしい」
「脳筋て…」
どんな人物だったかと今村は頭をひねる。
「猪頭、猪頭…。あ」
ふと、以前クラス対抗でサッカーをした時のことを思い出した。ひたすらタックルをかます巨漢がいた。
「あのラグビー部みたいなやつか」
普段の交流は無いが、同学年。大体の顔と名前は把握している。
「これは恰好の相手だねぇ。よし、横田ちゃん。情報を流してくれ」
そう言って今村が耳打ちすると横田は一言「…了解」と言って天幕を出ていった。
再び1人になった今村。
「優勢は士気を高める。が、それで調子に乗ると脆い。…さて、1度勝った将の兜は締まってるかな?」
無線機を取ると次の指示を出し始めた。
『HQこちらタイガー1、レンジャー2の援護に向かう途中で3名の仲間と合流した。引き続き前進する』
それはレンジャー1から派遣した仁村・周藤の別動隊が目的地域に入った事を示すものだった。
今村は作戦地域に彼我の位置が詳細に記された地図の横に置かれた無線機を取った。
「タイガー1、よくやった。その調子で頼むね」
仁村からの短い返答を聞き流すと、今村は腕組みをして改めて地図を眺めた。
状況は予想だにしない方向へと進んでいた。
一度崩れたレンジャー2は退がってなんとか抗戦しているし、対処策も施した。
防衛線を突破したゲリラへの対処も横田率いるスカウトチームがやってくれている。
ただ不安要素もあった。
密林を巧く利用したゲリラが突発的に本部を襲う事。先程も見廻りの隊員と戦闘が起き、お互いに損耗が出たばかりだ。
そしてもう1つ。レンジャー2を襲ったA組の謎の高速移動だ。
これには今村も頭を抱えていた。
「さて…どうしたもんかね」
今村はため息をついた。
「…今村」
「ぅわぁっ!?」
突如背後から話しかけられ、今村は小さく飛び上がった。
「…驚かせるつもりはなかった」
「あ、ああ。横田ちゃんか。いつからいたんだい?」
てっきり1人だと思っていたが…。今村は冷や汗を流す。
「…今入ったところ」
「そっか。流石というか、全然気がつかなかったよ。それで、何か用かな?」
横田の影の薄さに戦慄を覚えつつ本題を切り出した今村は、そこで横田がある物を持っている事に気がついた。
「マウンテンバイク?」
「…そう」
横田は深い緑色のまだら模様に塗られたマウンテンバイクを持っていた。
今村の頭の中で歯車が噛み合った気がした。
「…さっきの戦いで倒したA組の人が乗ってた」
「(なるほどね。密林の中で静かにかつ高速で動けた理由はこいつだったのか。)」
「…それと」
今村が1人納得していると横田が再び話し始めた。
「ん?」
「…A組の参謀が変わったという情報がある」
「それは本当かい!?」
「…(こくり)」
横田が静かに頷いた。
今村の頭の中の歯車が回りだす。
「(前回、今回と大掛かりな突撃が無いのはそれが理由か。頭がすげ替わっているなら、団結はまだ弱い。そこを突けばあるいは…)」
すっと顔を上げた今村は地図に目を転じて一点、レンジャー2と対峙しているA組集団を指差した。地図を睨む眼光は鋭い。
「横田ちゃん、ここの指揮官は誰か分かるかい?どんな奴か調べてくれ」
横田は頷くと携帯端末を取り出し、どこかに連絡を取り始めた。
すぐに返信が届く。
「…猪頭曹長。脳筋で、『突撃命令はまだか!』としきりに怒鳴ってるらしい」
「脳筋て…」
どんな人物だったかと今村は頭をひねる。
「猪頭、猪頭…。あ」
ふと、以前クラス対抗でサッカーをした時のことを思い出した。ひたすらタックルをかます巨漢がいた。
「あのラグビー部みたいなやつか」
普段の交流は無いが、同学年。大体の顔と名前は把握している。
「これは恰好の相手だねぇ。よし、横田ちゃん。情報を流してくれ」
そう言って今村が耳打ちすると横田は一言「…了解」と言って天幕を出ていった。
再び1人になった今村。
「優勢は士気を高める。が、それで調子に乗ると脆い。…さて、1度勝った将の兜は締まってるかな?」
無線機を取ると次の指示を出し始めた。
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