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2章 画家のトニファ
2 僕は落第生でも売れないわけでもない、ちょっぴり遅咲きなだけさ!
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2 僕は落第生でも売れないわけでもない、ちょっぴり遅咲きなだけさ!
学園都市アカデミア。ここはケイプランドスの学問の中心地であり、文学史学や化学物理学、そして魔法学といった様々な学問のトップと優秀な学生たちが暮らしている。僕は大きめのカバンに荷物を放り込み、寮を後にした。今日は実にいい天気だ。風も穏やかで射し込む日差しはぽかぽかしている。ああ、なんて素晴らしい日なんだ! まるでこの僕を祝福しているかのようだ!
僕はルンルンとスキップなんてしながら、僕が所属する工学部機械工学科の教授のもとへ訪れた。そして満面の笑みを浮かべて紙を差し出した。
「はい教授、退学届け!」
「ブフー!」
教授は驚いたのか、飲んでいたコーヒーを噴き出した。
そしてケホケホと咳をして、まじまじと僕を見る。
「トニファよ、いきなりどうしたのだ? 気が狂ったのか?」
「まさかぁ。僕は何時だって正常ですよ。教授こそ、大丈夫ですか? さっき噴き出したコーヒーが書きかけ
の論文を台無しにしてますけど」
「なにぃ? それを早く言わんか!」
教授は慌てて論文を救出した。しかし手遅れだったらしく、泣きそうな顔で僕を見た。
「僕は悪くないですからね。じゃあ、これで失礼します」
僕は恨めし気な教授を尻目に研究室を飛び出した。そして満面の笑みを浮かべながら学長や寮長に退学届けを出し、学友たちに別れを告げる。
「ああ、今日はなんて素晴らしい日なんだ。この僕の画家としての人生がスタートするんだ。周りの人間に白い
目で見られたってかまうもんか!」
そんな晴れやかな気分で学園都市を飛び出そうとした矢先、変なものに出会った。
「おい、人を変なもの呼ばわりするとはいい度胸じゃねーの?」
俺、ラビスはやけにテンションの高い学生と出会った。
隣には難しげな表情をしている女……カナデがいる。そう、あの時俺を脅して連れ出した性格の悪い女だ。まあ、
盗賊の俺が言えたことではないが。
「だって変なものは変なものだろう? ほかにどう表現しろと言うんだい? 服装もぼろっちいし、傷だらけ
だし……そういえば医学部が人体実験を繰り返しているという都市伝説があるが、もしかして君らはその被験体かい?」
学園都市アカデミアにある小さな飯屋で、俺らと奇妙な学生は出会った。俺がカナデにスリのやり方を教えようとターゲットにしたのが、運悪くこいつだった。この学生は俺の存在に気づくと、怒るでも訴えるでもなく絵を売りつけようとしてきた。別に下手ではないが、だからといって上手いとも思わない。いや、上手いっちゃ上手いんだが……どこにでもありそうな絵だった。
「おい学生。お前なぁ……こんな絵を売りつけようだなんて詐欺もいいところだぞ?」
「うん、私もそう思う」
芸術に興味がなさそうなカナデですら、学生の絵に顔をしかめていた。
「これは猫か?」
「ライオンなんだけど……」
学生はむっとした口調で俺たちに向かって言う。
「まったく、これだから絵心のないやつは……いいかい、絵というものはね、なにもわかりやすければ良いというモノではないんだよ」
「でも何が描いてあるのかが伝わらなきゃ意味ねぇだろ」
「いいや、意味はあるね。大ありさ!」
学生はふふんと偉そうに言う。
「大体ね、この僕の絵を詐欺だと言うのなら、君だって泥棒みたいなものじゃないか!」
俺は心の中で舌打ちをした。こいつ、俺がスリのターゲットにしたことに気づいてやがる。こういう察しのいいやつはあまり好きではない。だが、俺は盗む前に絵を売りつけられたんだ。今回に限ってはこいつが悪い。
「いや、知っているさ」
学生は声を潜めてささやくように言った。
「君、スキトーリ湖の盗賊だろう?」
学生に正体がバレていた俺は、そのことを秘密にしてもらう代わりに奴の食事代を払うこととなった。もちろん、無一文のカナデの分もだ。盗賊たる俺様がたかられるだなんて……最悪だ。気分が非常に悪い。
「で、何でお前は俺のことを知ってたんだ? というかお前誰だよ」
学園都市の人気のない路地裏で、俺は威嚇するように学生に問うた。
「あのねぇ、さっきから僕の事を学生って呼んでいるけど、違うからね。僕はトニファ、元学生さ! 君のことはスキトーリ湖の水質調査を行ったときに聞いたんだ。その時に教えてもらった特徴とよく似ていたのでね、すぐにわかったさ」
トニファは男性にしては長い茶髪を後ろでくくり、エプロンを身に着けていた。エプロンには絵具がはねたような染みがいくつもあり、カラフルに染まっている。
「で、どうして盗賊さんは学園都市なんかに? 言っておくけど、学生はお金なんて持っていないよ。まあ、お金持ちもいるけど、そういう人はセキュリティ意識も高いと思うし」
「今は盗賊は休業中だ。あと俺は盗賊さんじゃねぇ、ラビス様だ!」
「そうかい、ラビス様」
「様付けはやめろ。からかわれているようで嫌だ」
「からかってるんだよ」
「……」
俺とトニファがこんなやり取りをしている最中にも、カナデはどこか上の空なようであった。ぼんやりしているように見える。腹でも減ったのだろうか。さっき散々食べたくせに。俺の金で月見うどんとオニオンサラダと天ぷらとアイスクリームまで食べたくせに!
「で、彼女は何者なんだい? フードファイターかい?」
「知らね。俺の雇い主だよ」
俺は横目でカナデを睨みつけながらそう言った。こいつのことはあまり知らない。知っているのは、こいつの名前がカナデで、記憶喪失で、しかも暗黒帝カルロスをぶっ倒そうとしている、ということだけだ。
「ほーう、暗黒帝をねぇ……君たち、どうかしてるよ」
呆れた顔でトニファが言う。
「だって暗黒帝だよ? 強化人間であちこちに侵攻している暗黒帝だよ? 自分で暗黒帝とか名乗っちゃってる暗黒帝だよ? 倒そうだなんて無謀すぎるよ。そういうのは防衛軍とか各地方の支配者に任せておけばいいのさ。ちなみに学園都市アカデミアの支配者、学園長は抗議はするけど手は出せないってさ」
からからと笑って言うトニファに、若干切れつつ俺が応える。
「俺だってやりたかねぇよ。だけど仕方がねぇ、命がかかってるんだからな」
そう言いつつ背を向けているカナデにあかんべーをする。すると、突然カナデが振り返ったので、あわてて舌をしまった。カナデは厳しそうな表情で俺を、そしてトニファを見た。
「あの学舎、何があるんだ?」
カナデが指さす先には、他の学舎よりもひときわ大きくて立派な学舎がある。薄暗い時間ではあるが、灯りが付いている。なんて熱心な学徒なんだろ!
「ああ、あそこは医学部の研究室だよ。危険な薬品がやたらと多いらしくてね、入れるのは医学部のごく一部だけらしいよ」
トニファがそう呟くように言うと、カナデはニヤリと笑って言った。
「乗り込むぞ」
「え?」
俺とトニファの声が重なった。
何故、僕のような人間が天井裏に入り込んで埃まみれになっているのだろう? 画家へと華麗に転身する今日のためにわざわざ素敵な服だって準備したのに、それももう黒く汚れている。最悪だ。
「最悪なのは俺の方だ。何でただでさえボロボロの服をもっと傷めつけなきゃいけない? あーあ、誰かさんが乗り込むなんて言わなけりゃなぁ」
ラビスがそう言ってカナデを見る。カナデは気にしていないようで、天井裏をずんずんと進んでいく。
「いったいどこを目指しているんだい? 医学部の教授のカツラと入れ歯なら学長室の金庫にあるよ」
「そんなつまらない物なんか探していない。ここの学舎に強化人間がいる。そいつを倒しに行くだけだ」
僕は目を丸くして言う。
「なんだって? それ、本気かい? いやまあ、君らはもともとおかしかったけどさ、それはちょっと難しいと思うよ」
ラビスも続けて言う。
「おうよ、トニファの言う通りだ。つーかさ、何でここに強化人間がいるって分かったんだ?」
「そんな気がしたからだよ」
カナデの適当な言い分に、僕とラビスは顔をしかめた。
しばらく天井裏を這っていると、カナデの足が止まった。その後ろをついてきていた僕らは、突然の停止でぶつかりそうになる。
「なんだよ、さっさと行けよ!」
ラビスがぶつくさ言うのも聞かず、カナデは天井裏の板を蹴り飛ばして開けた。そして空いた隙間からひらりと飛び降りる。
「おい、待てよ!」
ラビスもそれに続き、僕も恐る恐る天井裏から降りた。
そこはどうやら、研究室であったようだ。数々の医薬品や顕微鏡、実験器具などが所狭しと置かれていて、消毒の嫌なにおいが鼻をつく。部屋の中心には、一人の学生と向き合うカナデの姿があった。
「やあ、天井裏からお客さんだなんて、びっくりするなぁ……。あいにくお茶は切らしていてね、クロロホルムならあるんだけど」
学生は冗談めかしてそう言うと、僕の姿を捉えた。
「あれ、トニファ君じゃん。機械工学科で飛び級を繰り返し、いくつもの発明で表彰されてきた超優秀学生でありながら学問をやめてしまったトニファ君!」
「君は……クラム君だったよね。医学部に入りたてのころから様々な薬品の効能を明らかにし、不治の病とされたアール病の治療薬を開発した、医学界の期待の星」
僕は刀をむき出しておっかない顔をしているカナデを諫めようと、クラム君の前に立とうとした。しかし、ラビスに手を引かれ、二人の間に割って入ることは叶わなかった。
「何するんだよラビス君」
「お前、あいつの言ってたこと忘れたのかよ」
「あいつって、カナデのこと?」
僕はカナデとクラム君を交互に見渡しながら、彼のどこが強化人間なんだよ……と呟いた。
「見てわからねーのかよ。刀を持った人間と見知らぬ俺が天井から落ちてきたってのに、こいつはなんも怖がっちゃいない。普通なら叫ぶかなんかするだろ」
ラビスはどうもクラム君を疑っているようで、いつでも戦えるようにと短剣の柄を握っていた。
「クラム君……」
僕はもう一度クラム君を見る。やはり怖がりもせずに笑っている。カナデが口をおもむろに開いた。
「お前……絶対に強化人間だ! ここで倒してやる!」
「うーん……随分と決めつけが酷いと思うよ。ねぇトニファ君」
「僕に振られてもね……」
困ったように頭をかく僕に、クラム君がさらに話しかけてくる。まるでカナデもラビスもその場にいないかのように!
「ねぇトニファ君、僕、君とはずっと話してみたかったんだ。頭もいいし、作図も奇麗だし、絵は……うん……だけど、君のような天才なら、僕の考えが理解できると思うんだ!」
嬉しそうに話すクラム君に、僕は冷や汗をかいて後ずさった。
「き、君の考えとは言うけどね、僕はもう学生じゃないんだよ……」
そう言って首をぶんぶんと横に振る。クラム君が何を考えているのかはわからないが、あまり関わりたくなかった。
「まあまあ、話だけでも聞いてってよ、きっと気に入ると思うからさ! ……僕はね、最強の人間を作りたいんだ! 誰よりも速く、誰よりも強く、誰よりも賢く、五感も鋭くて、感情を読み取るのも上手い! そんな人間を作ってみないかい?」
目をキラキラさせてそう言うクラム君に、カナデは舌打ちした。
「口では奇麗なこと言っちゃって……どうせ強化人間を増やそうって魂胆だろ」
吐き捨てるように言うカナデに、初めてクラム君は反応した。
「うるさいなぁ……僕はトニファ君と話しているというのに……」
カナデとクラム君の睨み合いが始まる。お互いに鋭い視線をぶつけ合い、いつ飛び掛かってやろうかと探り合っているようだ。
(最強の人間を作る……か……)
僕は自慢の頭をフル回転させ、考え込む。
「おい画家野郎、お前あのマッドな学生に同調するつもりかよ」
ラビスの冷たい問いかけに首を振って否定すると、僕は怖い顔をしているクラム君に向き直る。
「クラム君、君ら医学部にある、人体実験を繰り返しているって都市伝説。あれはさ、君が関わっているのかい?」
「もちろんさ。何人かの学生には尊い犠牲になってもらったけど……まあ言っちゃえばさ、君も僕の誘いを断ったらそうなるって話だよね」
「うわぁ」
僕は半ば脅しの勧誘を受け、げっそりとした顔をした。こんなことを言われるのは初めてだ。そして、こんな頭のおかしい人間を見るのも初めてだ。
「さあ、どうする、トニファ君?」
「うーん……遠慮しとくよ」
僕の返答に、クラム君は怒りの表情を見せた。思い通りに事が進まないのがどうにも気に食わないらしい。
「そうかそうか……残念だよ!」
突如、クラム君の右頬が鈍く光った。光は段々と広がっていき、ひし形を敷き詰めたような模様に落ち着いた。
「おぉ、カルロス軍の紋章じゃねーの。カナデの言ってた事は当たってたんだな」
「最初からそう言っている」
何故か冷静な二人を横目で見つつ、僕は逃げ道を探す。さっき降りてきた天井は……足場がなければ登れそうもない。この部屋の出口は……うん、ここから逃げた方がよさそうだ。僕は二人がクラム君の足止めをしてくれることを祈りながら、急いで出口へ向かう。
「おっと、させないよ!」
クラム君の声とともに、足に何かが掠る。見ると、鋭いもので割かれたような血の筋が一つ入っていた。そして、床にメスが刺さっている。あいつが投げたのか、なかなかやるな!
「なかなかやるな! ……じゃねーんだよ! お前一人だけ逃げようとするなよな」
「そうだぞ。お前性格が最悪だな!」
二人からの鋭い批判が降りかかる。ああそうとも、逃げようとしたさ! それの何が悪い!
「開き直るなよな」
「君に言われると何でかムカつくなぁ、ラビス君」
僕は渋々逃げるのをやめ、ラビスの隣に立つ。そしてラビスの足を軽く蹴飛ばす。
「なんだよ」
「別に」
他人の行動にグチグチ言う泥棒にはキックをお見舞いだ! 僕は心の中でそう言った。
「ああもう、イライラするなぁ! せっかくここで優秀な生徒を強化人間へと変えてやったというのに! 君も僕のように生まれ変われるというのに! ああまったく、残念だよ! しかも、邪魔も入るしさ! 本当にイライラする!」
クラム君はそう叫びながら、左腕を変形させていった。指が紫色に染まり、それに触れた机が音を立てて腐り落ちた。
「なんだよアイツ……おいカナデ、こいつも耳の後ろを狙ってりゃいいのか?」
「ああ。おそらくは」
二人は応答を終えた瞬間、同時に飛び出した。まずカナデがクラム君の両手を止めるように刀を動かす。その間にラビスが後ろを取る。クラム君はメスをナイフのように扱い、カナデの腕を斬りつけようとした。カナデはそれを察して身を引いたが、運悪くクラム君の紫の手に刀が触れる。刀はジュウジュウ言いながらみるみるうちに刃こぼれした。ラビスはクラム君の耳を狙い斬りつけるも、あまり効いていないようであった。
「おや、我々強化人間の弱点を知っているんだ? そうだよ、強化人間の弱点は耳の裏。だけどね、それは一つ前のプロトタイプまでの話だ。そして僕は医学に精通している。自分の弱点をなくすことも可能なんだよ!」
「こいつ、よくしゃべるじゃねーの」
ラビスは舌打ちをしながら距離を取る。カナデも距離をとり、硬直状態が続いた。
(今なら逃げられる……)
クラム君も二人も、今は戦いに集中している。今なら、そこの扉を開けて逃げることができる。そして医学部の教授や学園長に言いつけてやればいい。
(でも、そうできたとしても、クラム君はここでは信用されているし、二人の悪者に襲われた哀れな学生を演じるだろう。そして二人は牢屋行き)
僕は一瞬考えると、ポーチに手を伸ばした。
俺とカナデとマッドな学生。俺らはなんとか弱点を探そうと攻撃するが、相手は触れるだけでこちらの武器をボロボロにしてしまう。人数はこちらの方が多いが、戦況は不利だ。
「カナデ! 何か作戦は?」
「ない!」
「くそっ!」
俺は神経を研ぎ澄ました。研ぎ澄ましていると、何やらおかしな挙動をしているトニファを発見する。
(何してやがる、アイツ)
トニファはポーチから瓶に入った液体を取り出すと、それをマッドな学生に向かって投げつけた! 瓶はマッドな学生に当たって割れて、中の液体が降りかかる。
「二人とも離れて!」
トニファの声に反応し、俺とカナデは咄嗟に身を引いた。トニファはそれを確認すると、火のついたマッチを投げつけた。火はマッドな学生をなめるように覆い隠し、マッドな学生の断末魔が響き渡った。
「何?」
カナデが驚いたようにトニファを見る。トニファは無表情で燃え盛る火を見つめ、ふぅとため息をついた。
「機械油だよ。それも、うんと上等なものだ。クラム君、君は残念だと言ったよね。僕も残念だよ。学生の時、君とは議論を交わしたいと思ったものだったよ。だが、そうしなくて正解だった」
炎の中でもがくクラムに、トニファは語り掛ける。
「君はいったい、どれくらいの犠牲者を出したんだい? どれくらいの学生を、闇に葬り去ってきたんだい? ……もう口もきけないか。だけどね、僕は君を許さないよ。一人の学生だった者として」
トニファの言葉の端々から、怒りや悲しみがうかがえる。マッドな学生クラムは、炎の中で朽ち果てた。トニファは棚から薬品をいくつか取り出し、それを組み合わせたものを火にかけた。火は次第に勢いを失い、そこには焼けただれた人が残った。
「さてと、この国では放火は死刑か終身刑、殺人もそうだったよね」
「そう言われてもわからねぇよ。つーか、逃げちまえばいいじゃねーの? そうしたら罰則なんざ関係ない」
「君と一緒にしないでくれよ、盗賊さん。でも、今回ばかりは捕まるわけにはいかないな……。ねえカナデ、僕も君の旅に同行させてくれよ。きっと君の役に立つよ。なんて言ったって、僕は天才だからね」
「ええーお前……なんか油臭いんだよね……まあいい。同行を許す」
なんだか偉そうなカナデに苦笑しつつ、俺はトニファを見た。どうやら聞き捨てならない言葉を聞いてしまったらしく、複雑そうな表情をしている。数秒後、トニファはふっと笑って言った。
「さあ、早くここを去ろう。でないと、学園の者に見つかって悪者扱いされるよ」
俺とカナデは頷いた。
学園都市アカデミア。ここはケイプランドスの学問の中心地であり、文学史学や化学物理学、そして魔法学といった様々な学問のトップと優秀な学生たちが暮らしている。僕は大きめのカバンに荷物を放り込み、寮を後にした。今日は実にいい天気だ。風も穏やかで射し込む日差しはぽかぽかしている。ああ、なんて素晴らしい日なんだ! まるでこの僕を祝福しているかのようだ!
僕はルンルンとスキップなんてしながら、僕が所属する工学部機械工学科の教授のもとへ訪れた。そして満面の笑みを浮かべて紙を差し出した。
「はい教授、退学届け!」
「ブフー!」
教授は驚いたのか、飲んでいたコーヒーを噴き出した。
そしてケホケホと咳をして、まじまじと僕を見る。
「トニファよ、いきなりどうしたのだ? 気が狂ったのか?」
「まさかぁ。僕は何時だって正常ですよ。教授こそ、大丈夫ですか? さっき噴き出したコーヒーが書きかけ
の論文を台無しにしてますけど」
「なにぃ? それを早く言わんか!」
教授は慌てて論文を救出した。しかし手遅れだったらしく、泣きそうな顔で僕を見た。
「僕は悪くないですからね。じゃあ、これで失礼します」
僕は恨めし気な教授を尻目に研究室を飛び出した。そして満面の笑みを浮かべながら学長や寮長に退学届けを出し、学友たちに別れを告げる。
「ああ、今日はなんて素晴らしい日なんだ。この僕の画家としての人生がスタートするんだ。周りの人間に白い
目で見られたってかまうもんか!」
そんな晴れやかな気分で学園都市を飛び出そうとした矢先、変なものに出会った。
「おい、人を変なもの呼ばわりするとはいい度胸じゃねーの?」
俺、ラビスはやけにテンションの高い学生と出会った。
隣には難しげな表情をしている女……カナデがいる。そう、あの時俺を脅して連れ出した性格の悪い女だ。まあ、
盗賊の俺が言えたことではないが。
「だって変なものは変なものだろう? ほかにどう表現しろと言うんだい? 服装もぼろっちいし、傷だらけ
だし……そういえば医学部が人体実験を繰り返しているという都市伝説があるが、もしかして君らはその被験体かい?」
学園都市アカデミアにある小さな飯屋で、俺らと奇妙な学生は出会った。俺がカナデにスリのやり方を教えようとターゲットにしたのが、運悪くこいつだった。この学生は俺の存在に気づくと、怒るでも訴えるでもなく絵を売りつけようとしてきた。別に下手ではないが、だからといって上手いとも思わない。いや、上手いっちゃ上手いんだが……どこにでもありそうな絵だった。
「おい学生。お前なぁ……こんな絵を売りつけようだなんて詐欺もいいところだぞ?」
「うん、私もそう思う」
芸術に興味がなさそうなカナデですら、学生の絵に顔をしかめていた。
「これは猫か?」
「ライオンなんだけど……」
学生はむっとした口調で俺たちに向かって言う。
「まったく、これだから絵心のないやつは……いいかい、絵というものはね、なにもわかりやすければ良いというモノではないんだよ」
「でも何が描いてあるのかが伝わらなきゃ意味ねぇだろ」
「いいや、意味はあるね。大ありさ!」
学生はふふんと偉そうに言う。
「大体ね、この僕の絵を詐欺だと言うのなら、君だって泥棒みたいなものじゃないか!」
俺は心の中で舌打ちをした。こいつ、俺がスリのターゲットにしたことに気づいてやがる。こういう察しのいいやつはあまり好きではない。だが、俺は盗む前に絵を売りつけられたんだ。今回に限ってはこいつが悪い。
「いや、知っているさ」
学生は声を潜めてささやくように言った。
「君、スキトーリ湖の盗賊だろう?」
学生に正体がバレていた俺は、そのことを秘密にしてもらう代わりに奴の食事代を払うこととなった。もちろん、無一文のカナデの分もだ。盗賊たる俺様がたかられるだなんて……最悪だ。気分が非常に悪い。
「で、何でお前は俺のことを知ってたんだ? というかお前誰だよ」
学園都市の人気のない路地裏で、俺は威嚇するように学生に問うた。
「あのねぇ、さっきから僕の事を学生って呼んでいるけど、違うからね。僕はトニファ、元学生さ! 君のことはスキトーリ湖の水質調査を行ったときに聞いたんだ。その時に教えてもらった特徴とよく似ていたのでね、すぐにわかったさ」
トニファは男性にしては長い茶髪を後ろでくくり、エプロンを身に着けていた。エプロンには絵具がはねたような染みがいくつもあり、カラフルに染まっている。
「で、どうして盗賊さんは学園都市なんかに? 言っておくけど、学生はお金なんて持っていないよ。まあ、お金持ちもいるけど、そういう人はセキュリティ意識も高いと思うし」
「今は盗賊は休業中だ。あと俺は盗賊さんじゃねぇ、ラビス様だ!」
「そうかい、ラビス様」
「様付けはやめろ。からかわれているようで嫌だ」
「からかってるんだよ」
「……」
俺とトニファがこんなやり取りをしている最中にも、カナデはどこか上の空なようであった。ぼんやりしているように見える。腹でも減ったのだろうか。さっき散々食べたくせに。俺の金で月見うどんとオニオンサラダと天ぷらとアイスクリームまで食べたくせに!
「で、彼女は何者なんだい? フードファイターかい?」
「知らね。俺の雇い主だよ」
俺は横目でカナデを睨みつけながらそう言った。こいつのことはあまり知らない。知っているのは、こいつの名前がカナデで、記憶喪失で、しかも暗黒帝カルロスをぶっ倒そうとしている、ということだけだ。
「ほーう、暗黒帝をねぇ……君たち、どうかしてるよ」
呆れた顔でトニファが言う。
「だって暗黒帝だよ? 強化人間であちこちに侵攻している暗黒帝だよ? 自分で暗黒帝とか名乗っちゃってる暗黒帝だよ? 倒そうだなんて無謀すぎるよ。そういうのは防衛軍とか各地方の支配者に任せておけばいいのさ。ちなみに学園都市アカデミアの支配者、学園長は抗議はするけど手は出せないってさ」
からからと笑って言うトニファに、若干切れつつ俺が応える。
「俺だってやりたかねぇよ。だけど仕方がねぇ、命がかかってるんだからな」
そう言いつつ背を向けているカナデにあかんべーをする。すると、突然カナデが振り返ったので、あわてて舌をしまった。カナデは厳しそうな表情で俺を、そしてトニファを見た。
「あの学舎、何があるんだ?」
カナデが指さす先には、他の学舎よりもひときわ大きくて立派な学舎がある。薄暗い時間ではあるが、灯りが付いている。なんて熱心な学徒なんだろ!
「ああ、あそこは医学部の研究室だよ。危険な薬品がやたらと多いらしくてね、入れるのは医学部のごく一部だけらしいよ」
トニファがそう呟くように言うと、カナデはニヤリと笑って言った。
「乗り込むぞ」
「え?」
俺とトニファの声が重なった。
何故、僕のような人間が天井裏に入り込んで埃まみれになっているのだろう? 画家へと華麗に転身する今日のためにわざわざ素敵な服だって準備したのに、それももう黒く汚れている。最悪だ。
「最悪なのは俺の方だ。何でただでさえボロボロの服をもっと傷めつけなきゃいけない? あーあ、誰かさんが乗り込むなんて言わなけりゃなぁ」
ラビスがそう言ってカナデを見る。カナデは気にしていないようで、天井裏をずんずんと進んでいく。
「いったいどこを目指しているんだい? 医学部の教授のカツラと入れ歯なら学長室の金庫にあるよ」
「そんなつまらない物なんか探していない。ここの学舎に強化人間がいる。そいつを倒しに行くだけだ」
僕は目を丸くして言う。
「なんだって? それ、本気かい? いやまあ、君らはもともとおかしかったけどさ、それはちょっと難しいと思うよ」
ラビスも続けて言う。
「おうよ、トニファの言う通りだ。つーかさ、何でここに強化人間がいるって分かったんだ?」
「そんな気がしたからだよ」
カナデの適当な言い分に、僕とラビスは顔をしかめた。
しばらく天井裏を這っていると、カナデの足が止まった。その後ろをついてきていた僕らは、突然の停止でぶつかりそうになる。
「なんだよ、さっさと行けよ!」
ラビスがぶつくさ言うのも聞かず、カナデは天井裏の板を蹴り飛ばして開けた。そして空いた隙間からひらりと飛び降りる。
「おい、待てよ!」
ラビスもそれに続き、僕も恐る恐る天井裏から降りた。
そこはどうやら、研究室であったようだ。数々の医薬品や顕微鏡、実験器具などが所狭しと置かれていて、消毒の嫌なにおいが鼻をつく。部屋の中心には、一人の学生と向き合うカナデの姿があった。
「やあ、天井裏からお客さんだなんて、びっくりするなぁ……。あいにくお茶は切らしていてね、クロロホルムならあるんだけど」
学生は冗談めかしてそう言うと、僕の姿を捉えた。
「あれ、トニファ君じゃん。機械工学科で飛び級を繰り返し、いくつもの発明で表彰されてきた超優秀学生でありながら学問をやめてしまったトニファ君!」
「君は……クラム君だったよね。医学部に入りたてのころから様々な薬品の効能を明らかにし、不治の病とされたアール病の治療薬を開発した、医学界の期待の星」
僕は刀をむき出しておっかない顔をしているカナデを諫めようと、クラム君の前に立とうとした。しかし、ラビスに手を引かれ、二人の間に割って入ることは叶わなかった。
「何するんだよラビス君」
「お前、あいつの言ってたこと忘れたのかよ」
「あいつって、カナデのこと?」
僕はカナデとクラム君を交互に見渡しながら、彼のどこが強化人間なんだよ……と呟いた。
「見てわからねーのかよ。刀を持った人間と見知らぬ俺が天井から落ちてきたってのに、こいつはなんも怖がっちゃいない。普通なら叫ぶかなんかするだろ」
ラビスはどうもクラム君を疑っているようで、いつでも戦えるようにと短剣の柄を握っていた。
「クラム君……」
僕はもう一度クラム君を見る。やはり怖がりもせずに笑っている。カナデが口をおもむろに開いた。
「お前……絶対に強化人間だ! ここで倒してやる!」
「うーん……随分と決めつけが酷いと思うよ。ねぇトニファ君」
「僕に振られてもね……」
困ったように頭をかく僕に、クラム君がさらに話しかけてくる。まるでカナデもラビスもその場にいないかのように!
「ねぇトニファ君、僕、君とはずっと話してみたかったんだ。頭もいいし、作図も奇麗だし、絵は……うん……だけど、君のような天才なら、僕の考えが理解できると思うんだ!」
嬉しそうに話すクラム君に、僕は冷や汗をかいて後ずさった。
「き、君の考えとは言うけどね、僕はもう学生じゃないんだよ……」
そう言って首をぶんぶんと横に振る。クラム君が何を考えているのかはわからないが、あまり関わりたくなかった。
「まあまあ、話だけでも聞いてってよ、きっと気に入ると思うからさ! ……僕はね、最強の人間を作りたいんだ! 誰よりも速く、誰よりも強く、誰よりも賢く、五感も鋭くて、感情を読み取るのも上手い! そんな人間を作ってみないかい?」
目をキラキラさせてそう言うクラム君に、カナデは舌打ちした。
「口では奇麗なこと言っちゃって……どうせ強化人間を増やそうって魂胆だろ」
吐き捨てるように言うカナデに、初めてクラム君は反応した。
「うるさいなぁ……僕はトニファ君と話しているというのに……」
カナデとクラム君の睨み合いが始まる。お互いに鋭い視線をぶつけ合い、いつ飛び掛かってやろうかと探り合っているようだ。
(最強の人間を作る……か……)
僕は自慢の頭をフル回転させ、考え込む。
「おい画家野郎、お前あのマッドな学生に同調するつもりかよ」
ラビスの冷たい問いかけに首を振って否定すると、僕は怖い顔をしているクラム君に向き直る。
「クラム君、君ら医学部にある、人体実験を繰り返しているって都市伝説。あれはさ、君が関わっているのかい?」
「もちろんさ。何人かの学生には尊い犠牲になってもらったけど……まあ言っちゃえばさ、君も僕の誘いを断ったらそうなるって話だよね」
「うわぁ」
僕は半ば脅しの勧誘を受け、げっそりとした顔をした。こんなことを言われるのは初めてだ。そして、こんな頭のおかしい人間を見るのも初めてだ。
「さあ、どうする、トニファ君?」
「うーん……遠慮しとくよ」
僕の返答に、クラム君は怒りの表情を見せた。思い通りに事が進まないのがどうにも気に食わないらしい。
「そうかそうか……残念だよ!」
突如、クラム君の右頬が鈍く光った。光は段々と広がっていき、ひし形を敷き詰めたような模様に落ち着いた。
「おぉ、カルロス軍の紋章じゃねーの。カナデの言ってた事は当たってたんだな」
「最初からそう言っている」
何故か冷静な二人を横目で見つつ、僕は逃げ道を探す。さっき降りてきた天井は……足場がなければ登れそうもない。この部屋の出口は……うん、ここから逃げた方がよさそうだ。僕は二人がクラム君の足止めをしてくれることを祈りながら、急いで出口へ向かう。
「おっと、させないよ!」
クラム君の声とともに、足に何かが掠る。見ると、鋭いもので割かれたような血の筋が一つ入っていた。そして、床にメスが刺さっている。あいつが投げたのか、なかなかやるな!
「なかなかやるな! ……じゃねーんだよ! お前一人だけ逃げようとするなよな」
「そうだぞ。お前性格が最悪だな!」
二人からの鋭い批判が降りかかる。ああそうとも、逃げようとしたさ! それの何が悪い!
「開き直るなよな」
「君に言われると何でかムカつくなぁ、ラビス君」
僕は渋々逃げるのをやめ、ラビスの隣に立つ。そしてラビスの足を軽く蹴飛ばす。
「なんだよ」
「別に」
他人の行動にグチグチ言う泥棒にはキックをお見舞いだ! 僕は心の中でそう言った。
「ああもう、イライラするなぁ! せっかくここで優秀な生徒を強化人間へと変えてやったというのに! 君も僕のように生まれ変われるというのに! ああまったく、残念だよ! しかも、邪魔も入るしさ! 本当にイライラする!」
クラム君はそう叫びながら、左腕を変形させていった。指が紫色に染まり、それに触れた机が音を立てて腐り落ちた。
「なんだよアイツ……おいカナデ、こいつも耳の後ろを狙ってりゃいいのか?」
「ああ。おそらくは」
二人は応答を終えた瞬間、同時に飛び出した。まずカナデがクラム君の両手を止めるように刀を動かす。その間にラビスが後ろを取る。クラム君はメスをナイフのように扱い、カナデの腕を斬りつけようとした。カナデはそれを察して身を引いたが、運悪くクラム君の紫の手に刀が触れる。刀はジュウジュウ言いながらみるみるうちに刃こぼれした。ラビスはクラム君の耳を狙い斬りつけるも、あまり効いていないようであった。
「おや、我々強化人間の弱点を知っているんだ? そうだよ、強化人間の弱点は耳の裏。だけどね、それは一つ前のプロトタイプまでの話だ。そして僕は医学に精通している。自分の弱点をなくすことも可能なんだよ!」
「こいつ、よくしゃべるじゃねーの」
ラビスは舌打ちをしながら距離を取る。カナデも距離をとり、硬直状態が続いた。
(今なら逃げられる……)
クラム君も二人も、今は戦いに集中している。今なら、そこの扉を開けて逃げることができる。そして医学部の教授や学園長に言いつけてやればいい。
(でも、そうできたとしても、クラム君はここでは信用されているし、二人の悪者に襲われた哀れな学生を演じるだろう。そして二人は牢屋行き)
僕は一瞬考えると、ポーチに手を伸ばした。
俺とカナデとマッドな学生。俺らはなんとか弱点を探そうと攻撃するが、相手は触れるだけでこちらの武器をボロボロにしてしまう。人数はこちらの方が多いが、戦況は不利だ。
「カナデ! 何か作戦は?」
「ない!」
「くそっ!」
俺は神経を研ぎ澄ました。研ぎ澄ましていると、何やらおかしな挙動をしているトニファを発見する。
(何してやがる、アイツ)
トニファはポーチから瓶に入った液体を取り出すと、それをマッドな学生に向かって投げつけた! 瓶はマッドな学生に当たって割れて、中の液体が降りかかる。
「二人とも離れて!」
トニファの声に反応し、俺とカナデは咄嗟に身を引いた。トニファはそれを確認すると、火のついたマッチを投げつけた。火はマッドな学生をなめるように覆い隠し、マッドな学生の断末魔が響き渡った。
「何?」
カナデが驚いたようにトニファを見る。トニファは無表情で燃え盛る火を見つめ、ふぅとため息をついた。
「機械油だよ。それも、うんと上等なものだ。クラム君、君は残念だと言ったよね。僕も残念だよ。学生の時、君とは議論を交わしたいと思ったものだったよ。だが、そうしなくて正解だった」
炎の中でもがくクラムに、トニファは語り掛ける。
「君はいったい、どれくらいの犠牲者を出したんだい? どれくらいの学生を、闇に葬り去ってきたんだい? ……もう口もきけないか。だけどね、僕は君を許さないよ。一人の学生だった者として」
トニファの言葉の端々から、怒りや悲しみがうかがえる。マッドな学生クラムは、炎の中で朽ち果てた。トニファは棚から薬品をいくつか取り出し、それを組み合わせたものを火にかけた。火は次第に勢いを失い、そこには焼けただれた人が残った。
「さてと、この国では放火は死刑か終身刑、殺人もそうだったよね」
「そう言われてもわからねぇよ。つーか、逃げちまえばいいじゃねーの? そうしたら罰則なんざ関係ない」
「君と一緒にしないでくれよ、盗賊さん。でも、今回ばかりは捕まるわけにはいかないな……。ねえカナデ、僕も君の旅に同行させてくれよ。きっと君の役に立つよ。なんて言ったって、僕は天才だからね」
「ええーお前……なんか油臭いんだよね……まあいい。同行を許す」
なんだか偉そうなカナデに苦笑しつつ、俺はトニファを見た。どうやら聞き捨てならない言葉を聞いてしまったらしく、複雑そうな表情をしている。数秒後、トニファはふっと笑って言った。
「さあ、早くここを去ろう。でないと、学園の者に見つかって悪者扱いされるよ」
俺とカナデは頷いた。
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