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死神と荒獅子
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慌てて立ち上がり、ふらつきながら浴室へと向かった真治に、奈央は眉をひそめて尋ねる。
「私ってそんなに魅力ない? それとも真治くんの好みじゃないとか? なんかショックだなぁ」
そんな言葉が返って来るとは思いもよらなかった真治は、取り繕うかのように言葉を選んで。
「そ、そうじゃなくて。多分、そういう関係になったら俺は、ずっと奈央さんのことばかり考えてしまうと思います。それこそ、前田と変わらないくらい奈央さんを求めてしまうかもしれません」
そう言ったものの、未経験ゆえにそうなる未来が真治には想像出来なかった。
ではなぜ、その誘惑に乗らなかったのかと言われたら、脳裏を過ぎったのは黒井や吹雪、そしてドクロのヘルメットを被った死神の姿。
「俺は……奈央さんの為にもっと強くなりたいんです。人を殺すのはまだ抵抗がありますけどね。じゃ、じゃあそういうことなので!」
照れたように、それだけを言うと脱衣所に入った真治。
「ああああっ! セックスしたかった!」
聞こえないと思ったのか、浴室で真治が叫ぶ。誰もいなくなったリビングで、奈央はその言葉を聞いてクスッと笑ってしまった。
「かっこつけちゃって。でも、やっぱりそういうところが似てるよ。穂鷹さんじゃないってわかってるはずなのに……」
シャワーの音、そして窓の外の雨音。
どれがどちらの音かわからない中で、奈央は遠い日の思い出をなぞるように、目から溢れた涙を拭った。
「私ってそんなに魅力ない? それとも真治くんの好みじゃないとか? なんかショックだなぁ」
そんな言葉が返って来るとは思いもよらなかった真治は、取り繕うかのように言葉を選んで。
「そ、そうじゃなくて。多分、そういう関係になったら俺は、ずっと奈央さんのことばかり考えてしまうと思います。それこそ、前田と変わらないくらい奈央さんを求めてしまうかもしれません」
そう言ったものの、未経験ゆえにそうなる未来が真治には想像出来なかった。
ではなぜ、その誘惑に乗らなかったのかと言われたら、脳裏を過ぎったのは黒井や吹雪、そしてドクロのヘルメットを被った死神の姿。
「俺は……奈央さんの為にもっと強くなりたいんです。人を殺すのはまだ抵抗がありますけどね。じゃ、じゃあそういうことなので!」
照れたように、それだけを言うと脱衣所に入った真治。
「ああああっ! セックスしたかった!」
聞こえないと思ったのか、浴室で真治が叫ぶ。誰もいなくなったリビングで、奈央はその言葉を聞いてクスッと笑ってしまった。
「かっこつけちゃって。でも、やっぱりそういうところが似てるよ。穂鷹さんじゃないってわかってるはずなのに……」
シャワーの音、そして窓の外の雨音。
どれがどちらの音かわからない中で、奈央は遠い日の思い出をなぞるように、目から溢れた涙を拭った。
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