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死神と荒獅子

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優が光の壁を通って東軍に帰って行ったのを見届けて、吹雪はぼんやりとしている真治に近付き、肩を組んでいたずらっぽく笑って見せた。


「キスされて嬉しいのか少年。いいねいいね、童貞のそういう反応大好きだよ。にゃはは」


「わ、わわっ!  な、何してるんですか吹雪さん。胸が顔に……」


もはやキスどころの騒ぎではない。


柔らかく震える胸が、真治の顔に押し付けられているのだから。


「やめないか吹雪。少年が困っているではないか。優は、少年も助けてくれたと言っていたが、少年は助けていないと言った。それは違うぞ。服を貸したこともそうだが、私と黒井が戦っている時に優の前に立ち、守ろうとしていたではないか」


死神に止められ、つまらなさそうに真治から離れた吹雪もそれに続く。


「そうそう。女の子って、そういう細かいところも見てるもんだよ?  きっと少年の気持ちは、あの子の支えになったと思う」


「そ、そんなもんですか……それなら良かったです。俺がいた意味はあったってことですね」


強者との戦闘において、自分は何の役にも立っていないと思っていた真治には、その言葉は嬉しいものだった。


そして、別れ際に黒井が言った言葉が、真治の心の奥に熱い何かを灯そうとしていたのだ。
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