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罪と罰

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ビルの縁まで連れて行かれた新崎の首にロープが掛けられる。


「処刑人数は変更出来ないからよ、お前が代わりに死んでくれ。だってお前弱いんだもん。敵を強くする前に死ぬのが南軍の為ってもんだぜ」


屋上にいる人達が全員新崎を見て笑う。かつての仲間であった明美でさえも楽しそうに。


そんな中で、ゆっくりと立ち上がる黒い影。


「嘘! 直撃したはずなのに!」


明美の言葉に、左手に握り締めた鞘に納められている日本刀を真治は突き出した。


鞘に、明美が撃ったボルトの跡があり、これで防いでいたのだと見せ付けたのだ。


「何となくそんな気がしました。明美さんが俺に助けてなんて言うはずがないんですよ。いつも『見捨てた』って嘘ばかり言って。だから怪しいと思ったんです。直撃は防いだけど、ちょっとだけ気を失いましたけどね」


ゆっくりと周囲を見回し、この世の終わりのような顔の新崎に目を向けると、バツが悪そうに目を逸らした。


「おいおい明美。本当にこいつ弱いのかよ? 確かに賞金額はゴミみたいだけどよ、そんなゴミにこんな芸当が出来るか?」


「え、だって本当に弱いんだって! 私を見捨てて自分だけ生き残ろうとするし、逃げてばかりだし……強いはずがないよ」


その物言いに、真治の眉間にシワが寄った。


敵であっても、自分を助けてくれた人には優しくしてくれて、休む場所を提供してくれたり匿ってくれたというのにこいつは。
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