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罪と罰

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「ま、いいや。強いか弱いかなんて戦ってみればわかることだ。おいお前ら。このガキを殺したら褒美をやるぞ。殺れ」


池田がそう言うと、屋上にいる男女がニヤリと笑って次々と武器を取り出した。


敵軍でもない、自軍の中で自分が気に入らないやつがいるから殺そうというのか。


真治は戦うことに抵抗があった。人を殺すのだから当然そう思うだろう。敵と区別されても、それは憎み合う理由もない人達なのだから。


だが、ここにいる人間は違う。目の前の男は違う。


初めて自分の意思で戦いたいと思ったし、そのことに対する迷いは一切なかった。


「明美さんの攻撃を偶然防いだからっていい気になるなよクソガキが! 金棒の山田がお前を殺す男の名だ! 死んでも覚えて……おひ?」


その名の通り、金棒を担いで満面の笑みで近寄って来た山田だったが、武器を振り上げると同時に上半身と下半身が分断され、床に崩れ落ちて弾けるように光の粒へと変わったのだ。


「ごめん。ちょっと怒ってるから人の名前を覚える余裕はないかも」


この場にいる人間を殺すことには何の躊躇いもない。


日本刀による精神耐性が強いというのもあるが、それ以上に池田達への憎しみが勝っていたのだろう。


あまりにも殺意の純度が高く、素早い攻撃に、池田以外は何が起こったのかわからないようだった。
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