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罪と罰

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「な、何……あいつがこんなに強いなんて嘘でしょ……私を見殺しにするようなやつがこんなに強いわけがない!」


「じゃあ、なんで俺の手下があっという間に殺されたんだよ。こいつは強いぜ。まあ、俺の次くらいにだけどよ」


明美の服の中から手を抜いて、池田が取り出したのはメリケンサック。


それは美優と同じ物で、手も足も出ずに殺されそうになった苦い記憶が思い出される。


「どうして皆、名乗ってるんだ。おかしな人達だな」


日本刀を振り、刃に付いた血を払った真治が周囲を見回すと手下は残り二人。そしてビルの縁に立たされた男と新崎がいる。


「そりゃあよ、自分を殺した相手の名前がわからないのは悲劇だろ。それに、挨拶は人間関係を築く上で大事なものだしよ。てかお前らビビってんじゃねえよ。もういい、お前らは処刑の続きやってろ。客が待ってるだろうがよ」


残りの手下にそう言って、追い払うように手を振ると、両手のメリケンサックをガンガンと打ち鳴らしながら池田が真治に近付いた。


手下達はすぐにビルの縁に立たせた二人の元に走り、新崎ではない方をビルから突き落としたのだ。


「!? やめろ! それ以上やるなら許さないぞ!」


真治が吠えると、今度はそれに恐れをなしたのかまた動きを止める。
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