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厳しい優しさ

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「えっと……吹雪さんが全裸で寝てるので……」


頬をポリポリと掻きながら引きつった笑みを浮かべたが、恵梨香は「情けない」と言わんばかりに首を横に振った。


「少年はそれでも男なのか? 女が無防備な姿で寝ているなら、ありがたく頂こうとは思わないのか?」


いきなりこの人は何を言っているんだろう。頭のネジが取れているのかなと、真治は冷めた目で恵梨香を見ることしか出来なかった。


吹雪は恵梨香の仲間だというのに、襲わせようとするのはさすがに理解に苦しむ。


「ほら、入るぞ少年!」


「え!? あ、う、嘘でしょ!?」


腕を掴まれて、強引に中に入れられた真治は見てしまった。


布団を被ってはいるが、大きな胸をボロンと露出して大の字で寝息を立てている吹雪の姿を。


「……襲ってくださいと言っているようなものだな。ほら、少年」


クイクイと吹雪を指差して、本気か冗談かわからないことを言う恵梨香に、真治は困惑することしか出来ない。


「なんだ、こんな絶好のチャンスを逃すのか? まあ良い。吹雪が寝ているなら、私も身体を休めるとするか。少年もどうだ? 疲れは取っておくべきだぞ?」


吹雪一人でも遠慮したというのに、そこに恵梨香まで加わったら、ますます眠れる気がしないと首を横に振る。


「い、いえ……外にいます」


詐欺かと思うほどの甘い誘惑に乗る事は出来なかった。
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