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襲い来る野獣

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『……やっと来たな高山真治。だが、お前はバカなのか? 罠があるかもしれない場所に、真正面からやって来るとは。それとも、自分は世界最強だと勘違いした高校生特有の自信かそれは』


その言葉に呆れたように首を横に振った。


高校生くらいの年齢なら、自分は強くてどんな相手でも喧嘩で勝てると思うこともあるだろうが、いじめに遭っている真治にはそんな妄想は無縁のことだった。


「おい! 恵梨香さんはどこだ! 言われた通り来たんだから、恵梨香さんを返せ!」


『まあなんでもいい。そういった思い上がったガキを解体するのが俺の楽しみでね。お前の内側はどんな色と匂いをしているのか楽しみだ』


全然話が噛み合ってない。


冷静に考えてみれば、館内放送が出来る場所にいるのだろうから真治の声が聞こえないのは無理もない。


入って来たのは、監視カメラででも見ているに違いない。


『それはさておき。ナイトに瀕死の重傷を負わされるやつが、バベルの塔に向かうなどとは片腹痛い。その覚悟が本物か、試させてもらうぞ』


そう言い、恐らく津堂だと思われる人物は館内放送を終了した。


現段階で津堂の目的が何なのか、真治にはさっぱりわからない。


どんな理由があって恵梨香を捕らえて、どんな理由があって真治をここに呼んだのか。


何にしても真治がやることは、恵梨香を探して助け出すことだ。
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