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襲い来る野獣

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見える範囲に罠はないと判断したが、だからといって全く仕掛けられていないとは言い切れない。


日本刀を手に、慎重に歩を進める。


結局恵梨香がどこにいるのかはわからないまま。


津堂は館内放送が出来る場所にいるのだろうが、放送設備がどこにあるのかわからない真治にとっては全方位に意識を集中させるしかない。


入り口の近くにある、洋服を着たマネキンでさえも、津堂が化けているのではないかと思えてしまう。


極力壁際を避け、廊下の真ん中を歩きながら奥へ奥へと進む。


ゆっくりと歩いて、エスカレーターがある場所までやって来た。


ここは少しまずいと真治は感じていた。


エスカレーターがあるということは、二階から狙い撃ちも可能だということだ。


並の弓矢での攻撃なら、今の真治なら簡単に回避出来るだろうが、なんと言ってもここは東軍四天王の津堂がいる場所だ。


その手下が異常に強いとも限らないのだから、油断することは出来なかった。


そう思って上を見た時……真治の目にそれは映った。


二階から吊るされ、エスカレーターの直上でぶら下がる十字架に磔られた恵梨香の姿を。
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