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狂い始める歯車

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津堂に指示されるように、前回恵梨香が吊るされていた場所にやって来た真治は、そこにあるベンチに座っている香月を見付けた。


金棒を床に突いて、まるで今、ここに来るのがわかっていたかのように。


「おやおや、本当に来たね。津堂の言う通りだ。またやって来るなんて、この金砕棒に叩き潰される快感に目覚めたのかい?」


一度殺した相手を見付けて、いやらしい笑みを浮かべて立ち上がった香月は、その圧倒的な破壊力をもつ金棒を肩に乗せて笑って見せた。


以前殺しているという余裕からなのだろうか。


「俺はあんたを倒して、津堂から恵梨香さんを取り返す!」


「口の聞き方を知らない子だね! ちゃんと『えりさん』って呼びな! だけどまあ、この前面白い子を見付けてね。私の前に、是非ともこの子と戦ってほしいんだけどさ」


面白い子とは一体誰のことなのか。なるべく体力を使いたくないと思い、他の人間とは戦うつもりはなかったのだが。


「ほら! 出番だよ! 早く来な!」


エスカレーターの横、香月に目が行って視界に入っていなかったが、そこに誰かが座っているのが見えた。


その人影が立ち上がり、ゆっくりと真治にに向かって歩いて来る。


悪いが誰であろうと負けるつもりはないと、日本刀の切っ先をその人影に向けたが。




「そ、そんな……う、嘘だろ?」



予想すらしていなかったその人物に、真治は思わず声を漏らした。
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