上 下
612 / 682
狂い始める歯車

system_0612

しおりを挟む
「10日前、あんたを潰した後に心配そうにデパートの中に入って来てね。話を聞けば、あんたのガールフレンドだって言うじゃないか!」


香月の声よりも、なぜこんな所にこの人がいるんだという疑問が真治の頭を掻き乱す。


「ど、どうして……なんでこんな所にいるんだよ! 理沙!」


短剣を両手で握り締めて、ガタガタと震えながら目の前に現れたのは理沙だった。


どうしてここにというよりも、どうして武器を構えているのか。


何がなんだかわからないまま、日本刀を下ろしたが、結局は東軍と南軍。


こうなることは必然なのかもしれない。


「し、真治……お、お願い、死んで……」


武器を構えているということは、真治の命を奪おうとしているとわかる。


だが、理沙がこんなことをするまでに追い込まれた理由は何なのか。


「理沙に何をした!! こんなに怯えて! 理沙はこんなことをするような子じゃないんだよ!!」


不安と怒り、心の奥底で、その感情がくすぶる。


「何って、坊やがまた来るだろうって言ってたから、弱点を逃す手はないだろう? ちょっとお願いしただけさ。坊やを殺してくれたら、解放してやるってね」


そんなことを頼んでも、理沙が首を縦に振るはずはないだろう。


だから香月の言葉などは信用するに足りないものだった。


「何をしたって言ってるんだよ! 答えろ!」
しおりを挟む

処理中です...