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狂い始める歯車

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「好きな人を殺されて、泣くのもダメなんですか!! 守りたかった人なのに、もう守る事も出来なくなったんですよ!」


駄々っ子のように、ただ怒りをぶちまけて声を上げた俺に、もう一度平手打ちが飛ぶ。


「あなたがしなければならないことは何!? 泣いていて津堂が倒せるのなら、いくらでも泣いてなさい!! 黒井がまだ戦ってるんでしょ!? 加勢に行かなくてどうするの!」


津堂……理沙を拷問して、真治を殺すように恐怖を植え付けた張本人だ。


自分がここに来たから、理沙が捕まってしまった。


誰が悪いって……全部自分が悪いのだと、真治は自身を責める。


「……行かないのね。でも、私は役目を果たすわ。泣きたいなら、ずっとそうやってなさい」


肩から手を離し、呆れたようにそう言うと、美優は立ち上がって再び駆け出して行った。


残されたのは真治と理沙だけ。


大切な人を殺されて、泣く事しか出来ないのかと自分が嫌になる。


悲しんでもらう為に、理沙は自分を犠牲にして助けてくれたわけではない。


ここで戦いから逃げ出せば、昔と一緒じゃないか。


嫌なことから逃げ出して、その状況に文句だけ言っていた頃と。
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