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1話 前世なんぞ犬に食わせて、忘れたい
馬車を降りると桜吹雪が待っていた。薄紅色の木々の先には魔法を志す者の聖地とも言われる王立魔法学校の煉瓦造りの校舎が威風堂々と建っている。この学校のに通うほとんどが王族、貴族や裕福な商家の子弟だ。高貴な血には魔力が宿るとか、選民思想の輩が宣っているが、私はそれだけじゃないと思う。もちろん遺伝的性質もあるが、幼少から鍛錬で魔力量や魔法行使力が跳ね上がのであろうと。魔法偏差値史上主義のこの国では、裕福な家は皆魔法学の家庭教師をつけてるからだ。
校門ぬけると、花壇には祝福するように唱歌花が讃美歌を合唱している。赤白、黄色の花が可憐な花弁を震わせて歌っているが、下手な歌手より余程上手い。
案内に従って入学式会場の大講堂に向かった。案内係の上級生が私の姿を見て、制服である腰丈のショートローブに花をつけて、席に案内してくれた。中に入ると全員に注目されたが、それも自意識過剰ではない。なぜなら、アルセナ・クリマスタ公爵令嬢の私は新入生の中で王子に次ぐ有名人なのだから。上級生に案内してもらった礼をし、背筋を伸ばして座り、私の見た目で脅えさせては不憫なので、誰とも目が合わないように真っすぐ前を見た。お父様譲りの濃い紫の吊り上がった瞳におばあ様譲りの白菫色の髪は、陽に透けると銀色に煌めき神秘的と言われている。美少女と言っても差し支えないほど整っていると思うが、こんな容姿では話しかける者はいなかった。
背後が騒がしくなった。振り返るとこの国の第一王子であるアリスフォードと第二王子ヨハイムがいて得心がいった。アリスフォードは柔らかなウェーブがかった金髪に薄茶の瞳を持つ、天使の様に美しい少年である。ヨハイムは黒髪を後ろで一つで縛っていて、肉食獣のように強い金色の瞳で精悍な顔は整っているが、アリスフォードとは反する野性的な魅力の男である。因みに私とヨハイムとは顔見知り程度の仲だ。正妃の息子のアリスフォードと側妃の息子のヨハイムは、4か月違いの異母兄弟である。どちらもご令嬢が雌豹のように狙っている。
理事長、校長、教頭先生が入場して入学式が始まった。理事長がステージ上にある教卓に立ち、挨拶をした。この理事長の公爵は、現王の弟で大変見目麗しい男である。金茶の髪は理事長が動くたびにサラサラ揺れ、意志の強そうな深い青い瞳は教育者としての熱意に溢れているようだ。最後に冗談を言って挨拶を締め、男女問わず虜にした。
新入生代表の挨拶はアリスフォードだ。普段は優しく虫も殺せない私の幼馴染は、今日は凛々しく男の子の顔をしていて、不覚にもほんのちょびっとだけドキドキしてしまった。
今年は王子達が入学するので特別に陛下と王妃様がいらしていて吃驚したが、滞りなく入学式は終わった。
教室に移動しようと振り返ると、ある少女が目に入った。
――知っている。私はこの少女を知っている。
そう思った瞬間、雷に打たれてような衝撃とともに前世の記憶が蘇った。そして”あぁ、今まで夢で見ていた異世界の事は前世の出来事だった”と理解した。その情報処理に脳が耐え切れなくなり、私はその場で意識を失い倒れた。
目を覚ますとアリスフォードが私の手を握っていた。後ろにはアリスフォードの護衛騎士の男が立っている。
「アルちゃん! 大丈夫?」
まだ頭も気持ちも整理がつかないけど心配そうに濡れた瞳を揺らしてて――う゛うっ、私の天使が――アリスが私を見ているから、安心させる様に頷き微笑んだ。幼馴染の私たちは愛称でお互いを呼んでいた。
アリスは水を私に寄越して、礼を言ってグラスを受け取り、其れを一気に飲み干した。余程喉が渇いていたのか、とてもおいしく感じた。
「そんなことより、今日凄くかっこよかったわ。とても堂々としていて……これご褒美よ」
ポケットからキャラメルを取り出して、アリスの口に入れてあげればアリスは嬉しそうに口元が緩んだけど、すぐに口を引き締めて気づかわし気に私を見た。
――抱きしめたいぐらい可愛い。流石にあまり最できなくなってきたけどね。
「本当に大丈夫なの?アルちゃん」
「もう平気よ。帰りましょう」
もう下校時刻で外はもう日が傾きかけている。フォードが出した手を取り、ベットから立ち上がり、馬車止めに向かって廊下を歩いた。
「アルちゃん、…………ずっと……しょに…………うね」
「……うん」
しまった、生返事をしてしまった。
もう、何をはなしていたのかわからない。幼馴染の天使の顔を隅々まで見た。
「どうしたの?」
私の天使が首を傾げたけど、物凄く可愛い。持って帰りたい……。
「なんでもないわ。本当に今日のアリスはかっこよかったなって」
「ん⁉」
彼は私に頭を差し出した。
今度は私が首を傾げた。
「じゃあ、ご褒美ちょうだい」
ヒールの分だけ私より低い彼の滑らかな絹糸のようで、真綿の様に柔らかな髪を撫でた。撫でるたびにシャンプーの良い匂いがする。あぁ癒やされる。私と彼とは同じ年だが姉と弟のような関係だから普段からお菓子を上げたり、頭を撫でたりしていた。
「へへへっ」
最近の彼は大人に近づいたからか、頭を撫でると少し照れたように笑うようになった。それもとても可愛らしくいつまでも撫でていたくなる。でも……やっぱりかわいい!我慢できずに私は彼を抱きしめた。
「アルちゃん、もう僕たちは子供じゃないんだよ!?」
アリスは少しすねた顔をして、それがまた可愛くて彼を抱いた腕の力を込めた。
「苦しいよぅ、アルちゃん」
この天使を性欲魔王にしてはいけないと思った。
校門ぬけると、花壇には祝福するように唱歌花が讃美歌を合唱している。赤白、黄色の花が可憐な花弁を震わせて歌っているが、下手な歌手より余程上手い。
案内に従って入学式会場の大講堂に向かった。案内係の上級生が私の姿を見て、制服である腰丈のショートローブに花をつけて、席に案内してくれた。中に入ると全員に注目されたが、それも自意識過剰ではない。なぜなら、アルセナ・クリマスタ公爵令嬢の私は新入生の中で王子に次ぐ有名人なのだから。上級生に案内してもらった礼をし、背筋を伸ばして座り、私の見た目で脅えさせては不憫なので、誰とも目が合わないように真っすぐ前を見た。お父様譲りの濃い紫の吊り上がった瞳におばあ様譲りの白菫色の髪は、陽に透けると銀色に煌めき神秘的と言われている。美少女と言っても差し支えないほど整っていると思うが、こんな容姿では話しかける者はいなかった。
背後が騒がしくなった。振り返るとこの国の第一王子であるアリスフォードと第二王子ヨハイムがいて得心がいった。アリスフォードは柔らかなウェーブがかった金髪に薄茶の瞳を持つ、天使の様に美しい少年である。ヨハイムは黒髪を後ろで一つで縛っていて、肉食獣のように強い金色の瞳で精悍な顔は整っているが、アリスフォードとは反する野性的な魅力の男である。因みに私とヨハイムとは顔見知り程度の仲だ。正妃の息子のアリスフォードと側妃の息子のヨハイムは、4か月違いの異母兄弟である。どちらもご令嬢が雌豹のように狙っている。
理事長、校長、教頭先生が入場して入学式が始まった。理事長がステージ上にある教卓に立ち、挨拶をした。この理事長の公爵は、現王の弟で大変見目麗しい男である。金茶の髪は理事長が動くたびにサラサラ揺れ、意志の強そうな深い青い瞳は教育者としての熱意に溢れているようだ。最後に冗談を言って挨拶を締め、男女問わず虜にした。
新入生代表の挨拶はアリスフォードだ。普段は優しく虫も殺せない私の幼馴染は、今日は凛々しく男の子の顔をしていて、不覚にもほんのちょびっとだけドキドキしてしまった。
今年は王子達が入学するので特別に陛下と王妃様がいらしていて吃驚したが、滞りなく入学式は終わった。
教室に移動しようと振り返ると、ある少女が目に入った。
――知っている。私はこの少女を知っている。
そう思った瞬間、雷に打たれてような衝撃とともに前世の記憶が蘇った。そして”あぁ、今まで夢で見ていた異世界の事は前世の出来事だった”と理解した。その情報処理に脳が耐え切れなくなり、私はその場で意識を失い倒れた。
目を覚ますとアリスフォードが私の手を握っていた。後ろにはアリスフォードの護衛騎士の男が立っている。
「アルちゃん! 大丈夫?」
まだ頭も気持ちも整理がつかないけど心配そうに濡れた瞳を揺らしてて――う゛うっ、私の天使が――アリスが私を見ているから、安心させる様に頷き微笑んだ。幼馴染の私たちは愛称でお互いを呼んでいた。
アリスは水を私に寄越して、礼を言ってグラスを受け取り、其れを一気に飲み干した。余程喉が渇いていたのか、とてもおいしく感じた。
「そんなことより、今日凄くかっこよかったわ。とても堂々としていて……これご褒美よ」
ポケットからキャラメルを取り出して、アリスの口に入れてあげればアリスは嬉しそうに口元が緩んだけど、すぐに口を引き締めて気づかわし気に私を見た。
――抱きしめたいぐらい可愛い。流石にあまり最できなくなってきたけどね。
「本当に大丈夫なの?アルちゃん」
「もう平気よ。帰りましょう」
もう下校時刻で外はもう日が傾きかけている。フォードが出した手を取り、ベットから立ち上がり、馬車止めに向かって廊下を歩いた。
「アルちゃん、…………ずっと……しょに…………うね」
「……うん」
しまった、生返事をしてしまった。
もう、何をはなしていたのかわからない。幼馴染の天使の顔を隅々まで見た。
「どうしたの?」
私の天使が首を傾げたけど、物凄く可愛い。持って帰りたい……。
「なんでもないわ。本当に今日のアリスはかっこよかったなって」
「ん⁉」
彼は私に頭を差し出した。
今度は私が首を傾げた。
「じゃあ、ご褒美ちょうだい」
ヒールの分だけ私より低い彼の滑らかな絹糸のようで、真綿の様に柔らかな髪を撫でた。撫でるたびにシャンプーの良い匂いがする。あぁ癒やされる。私と彼とは同じ年だが姉と弟のような関係だから普段からお菓子を上げたり、頭を撫でたりしていた。
「へへへっ」
最近の彼は大人に近づいたからか、頭を撫でると少し照れたように笑うようになった。それもとても可愛らしくいつまでも撫でていたくなる。でも……やっぱりかわいい!我慢できずに私は彼を抱きしめた。
「アルちゃん、もう僕たちは子供じゃないんだよ!?」
アリスは少しすねた顔をして、それがまた可愛くて彼を抱いた腕の力を込めた。
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