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6話 鼻が痛いです。切実に
四つん這いになった理事長の上で優雅にお茶を飲んでいると、ドアが開いた。慌ててそちらを向けば、アリスとその護衛騎士で攻略対象者のエバンが居た。
私は頭を高速回転させてうまくごまかす方法は探った。が、しかし、名案は思い浮かばなかった為、平静を装った。
「アルちゃん、ここに居たんだね」
いつもと変わらない笑顔のアリス。内心では動揺しまくりだけど、それを隠してあえて鷹揚に立ち上がる。無表情のエバン。
「あ、うん。そうね……エドモンド、もう結構よ。直りなさい」
動揺のあまり、昨晩、ゲームに沿って理事長を名前で呼ぶ練習をした成果が発揮されてしまう。
「毎日一緒に帰ろうねって言っていたのに」
不満げにぷっくりと頬を膨らますアリス。
――なんで椅子にされてる理事長を見てスルーなの!? 逆に怖いわ。
「そう……だったかしら?」
「昨日言ったでしょ? まぁ上の空だったから聞いてないかなとは思ったけど。……さあ、帰ろ」
私は、アリスに手を引っ張られながら、理事長室を後にした。後ろを振り返ると、理事長が声を掛けようとしていたが、何故か慌てて止めた。
アリスと一緒に馬車に乗って自宅へ向かう。ガラガラと車輪が石畳を転がる。
「僕、知らなかったな。いつの間に伯父さんと仲良くなっていたのかな?」
「仲良くなんて……昨日、呼ばれて、それで今日お茶に誘われただけよ」
「ふーん」
私とは逆方向の窓の外を眺めるアリス。その手が白くなるほど力強く握られていることに気づき、両手で包み手を開かせると、ぬるりとした感触がした。不審に思い手を見れば、鮮血が手についていた。
「どうしたの!」
掌にはくっきりと詰めが食い込んだ後があった。ポケットから取り出したハンカチで傷口を押さえた。
「アルちゃんが僕の事忘れて、伯父さんと仲良くしてるなんて淋しくて……」
潤んだ哀愁のこもった目で見つめられ、たまらず抱きしめた。
「ごめんなさい」
正直に言えば、理事長と会っていたのは悪くないと思う。でも、帰る約束を破ってしまったのは私だから謝辞を口にした。
「じゃあ、悪いと思うなら、僕以外の男の所になんて行かないで……」
「それは出来ないの。私は、この学生生活の間に公爵家当主に相応しい人生の伴侶を探さないといけないの」
悲しげに言うアリス願いをはっきりと断った。気まずい沈黙が流れるたまま時間は過ぎ、自宅へ着いた。アリスのエスコートを断るとエバンが馬車を降りる時に手を貸してくれた。
――ん?なんかこっち見てる?
私が今まで見てなかったからか、今まで合わなかった視線がぶつかった。エバンは玄関までついてこようとしたが、手サインで断った。一人で玄関まで歩いた。
自宅で食事を済ませて、外出用のドレスに着替える。この世界は性に奔放な世界で華人――という名の娼婦に房中術を教えて貰ったりもする。この西洋建築溢れる世界観に何故か花街がある。心当たりはこのクソゲーを創った会社が遊郭を舞台にしたエロ乙女ゲームがあったからだろうか。
私も太夫に教えを乞うために花街へ向かうため、馬車に乗り込んだ。
玄関を出て石畳をガラガラと馬車で進むが、門に差し掛かると壁にぶつかった様な衝撃を受けた。
「ぶっ!」
全身が馬車と見えない壁挟まれとても痛い。それでも馬車を引こうと馬は走ろうとするが、前に進まない。私の鼻は、一層潰れてしまい、涙目になる。不審に思った御者が馬を止め、こちらにやってきた。異様な押し潰された格好の私を見て、息を呑んだ。
よろよろと馬車を降りて門を潜ろうとするが、でられなかった。私だけ。このキチガイの魔法に心当たりは一つだけだが、私は彼に会った事もない。
攻略対象者のビクター・アルセナだ。彼が天才と呼ばれる所以は、空間魔法を使えて、更にそれに様々な効果を付与できるからである。この国が戦争と無縁なのは、国全体を空間魔法で包み、この王国と王族に害意のある人間は入ってこれないからだ。国民の個人に対する害意は対象ではないし、この国で生まれた悪人もいるので、善人だけの国と言う訳ではない。
理由がわかり、この魔法が解けるのも本人しかいないので諦めて屋敷戻った。
太夫には料金だけ払って、キャンセルした。
しかし、潰された鼻が未だに痛い。本気で痛い。
自室で赤くなった鼻を鏡で眺めていると、父から呼び出された。
「おかえりなさいませ。お父様」
スカートを摘んで、腰を折る。ソファ腰掛ける様に言われ座った。
私は頭を高速回転させてうまくごまかす方法は探った。が、しかし、名案は思い浮かばなかった為、平静を装った。
「アルちゃん、ここに居たんだね」
いつもと変わらない笑顔のアリス。内心では動揺しまくりだけど、それを隠してあえて鷹揚に立ち上がる。無表情のエバン。
「あ、うん。そうね……エドモンド、もう結構よ。直りなさい」
動揺のあまり、昨晩、ゲームに沿って理事長を名前で呼ぶ練習をした成果が発揮されてしまう。
「毎日一緒に帰ろうねって言っていたのに」
不満げにぷっくりと頬を膨らますアリス。
――なんで椅子にされてる理事長を見てスルーなの!? 逆に怖いわ。
「そう……だったかしら?」
「昨日言ったでしょ? まぁ上の空だったから聞いてないかなとは思ったけど。……さあ、帰ろ」
私は、アリスに手を引っ張られながら、理事長室を後にした。後ろを振り返ると、理事長が声を掛けようとしていたが、何故か慌てて止めた。
アリスと一緒に馬車に乗って自宅へ向かう。ガラガラと車輪が石畳を転がる。
「僕、知らなかったな。いつの間に伯父さんと仲良くなっていたのかな?」
「仲良くなんて……昨日、呼ばれて、それで今日お茶に誘われただけよ」
「ふーん」
私とは逆方向の窓の外を眺めるアリス。その手が白くなるほど力強く握られていることに気づき、両手で包み手を開かせると、ぬるりとした感触がした。不審に思い手を見れば、鮮血が手についていた。
「どうしたの!」
掌にはくっきりと詰めが食い込んだ後があった。ポケットから取り出したハンカチで傷口を押さえた。
「アルちゃんが僕の事忘れて、伯父さんと仲良くしてるなんて淋しくて……」
潤んだ哀愁のこもった目で見つめられ、たまらず抱きしめた。
「ごめんなさい」
正直に言えば、理事長と会っていたのは悪くないと思う。でも、帰る約束を破ってしまったのは私だから謝辞を口にした。
「じゃあ、悪いと思うなら、僕以外の男の所になんて行かないで……」
「それは出来ないの。私は、この学生生活の間に公爵家当主に相応しい人生の伴侶を探さないといけないの」
悲しげに言うアリス願いをはっきりと断った。気まずい沈黙が流れるたまま時間は過ぎ、自宅へ着いた。アリスのエスコートを断るとエバンが馬車を降りる時に手を貸してくれた。
――ん?なんかこっち見てる?
私が今まで見てなかったからか、今まで合わなかった視線がぶつかった。エバンは玄関までついてこようとしたが、手サインで断った。一人で玄関まで歩いた。
自宅で食事を済ませて、外出用のドレスに着替える。この世界は性に奔放な世界で華人――という名の娼婦に房中術を教えて貰ったりもする。この西洋建築溢れる世界観に何故か花街がある。心当たりはこのクソゲーを創った会社が遊郭を舞台にしたエロ乙女ゲームがあったからだろうか。
私も太夫に教えを乞うために花街へ向かうため、馬車に乗り込んだ。
玄関を出て石畳をガラガラと馬車で進むが、門に差し掛かると壁にぶつかった様な衝撃を受けた。
「ぶっ!」
全身が馬車と見えない壁挟まれとても痛い。それでも馬車を引こうと馬は走ろうとするが、前に進まない。私の鼻は、一層潰れてしまい、涙目になる。不審に思った御者が馬を止め、こちらにやってきた。異様な押し潰された格好の私を見て、息を呑んだ。
よろよろと馬車を降りて門を潜ろうとするが、でられなかった。私だけ。このキチガイの魔法に心当たりは一つだけだが、私は彼に会った事もない。
攻略対象者のビクター・アルセナだ。彼が天才と呼ばれる所以は、空間魔法を使えて、更にそれに様々な効果を付与できるからである。この国が戦争と無縁なのは、国全体を空間魔法で包み、この王国と王族に害意のある人間は入ってこれないからだ。国民の個人に対する害意は対象ではないし、この国で生まれた悪人もいるので、善人だけの国と言う訳ではない。
理由がわかり、この魔法が解けるのも本人しかいないので諦めて屋敷戻った。
太夫には料金だけ払って、キャンセルした。
しかし、潰された鼻が未だに痛い。本気で痛い。
自室で赤くなった鼻を鏡で眺めていると、父から呼び出された。
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