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32話 凱旋式
先日、エバンを除く東部戦線に行っていた騎士たちが帰還し、本日凱旋式を行う予定だ。
私は、今、大通りにある噴水広場のホテルの最上階に来ている。パレードは大通りを通って最後は王城に到着する。ここからならエバンがはっきり見えるだろう。もう既に人が集まっていて騒がしい。
鐘塔の鐘が王都中に響き渡る。昼12刻告げる合図だ。パレードが始まる。鐘が止まり、辺りが静まり返る。ファンファーレが鳴り響き、歓声が聞こえ始めた。
凱旋した騎士の集団が見え始め、噴水広場を色とりどりの紙吹雪が舞う。王国の旗と騎士団の旗を掲げてこちらに歩いてくる。
――エバンだわ。
綺麗に磨かれた鎧をつけ、周りの馬より大きめな月毛の馬に乗っている。とても精悍な姿でこんな人に姫になってくれと言われたなんて、誇らしくそして少し面映ゆい。彼に見合うようなもっと素敵な女性になれるよう精進しようと思う。
ホテルの付近までエバンがやってきた。視線が合う。そしてエバンは柔らかな顔で、笑った。こんな大勢の中で、場所も知らせてないから私に気づく筈なんてないのに、でも確かに目が合ったと確信する。私も自然と笑って、応えた。エバンはとてもかっこよかった。まるでゲームの1枚のスチルみたいに。
夜会用のドレスに着替えた私はこれから勲章授与式に参席するため、王城にやってきた。城門までお父様が迎えに来てくれた。式典服に着替えたお父様はとても凛々しく素敵だ。私がお父様に腕を絡めると、お父様は目尻の皺を深めて、親の慈愛の籠もった笑みを見せた。これは娘である私だけに見せる特権だ。でも……
「お父様、大丈夫ですか?」
少し疲れているみたい。笑い顔にいつもの覇気がない気がする。
「心配するな。これくらいなんでもない。アルセナが元気で笑ってくれるだけで、私も元気になるのだから」
お父様は私の頭を撫でた。お父様、大好きです。もう恥ずかしくて言えないけど。
会場に謁見室の両端には、いつもはない長椅子が並んでいて、中央には真っ赤なカーペットが敷いてある。そしてその先、数段高くなった場所には玉座が威風堂々と鎮座している。高位貴族で国王陛下の側近である私達クリマスタ家は最前列に座った。
謁見室の両開きのドアが左右に開き、赤色マントを着け、手には錫杖を持ち、そして頭に燦然と輝く王冠を載せた国王陛下が恭しくレッドカーペットを歩き、玉座に座った。そして、あとから王妃と側妃、第一王子、第二王子が玉座の側に座った。
今回の戦争勝利の功労者であるエバンがやってきて玉座の前に膝を付き、頭を下げた。陛下が戦争の功を讃える。
「貴殿には元ポルカニガ自治区と伯爵の爵位を与える」
元ポルカニガ自治区とはこの王国では自国の領地だと主張しているが、ポルカニガ族は独立国だと思っているちょっと面倒くさい場所である。
「辞退します」
エバンはそうは一言告げ、立ち上がり歩く。会場中が静けさの中、喫驚する。
私は怯んだ。なぜならエバンが私の方にやってきてたから。
「また会える日を指折り数えてました。アルセナ姫に剣を捧げます。誓いを……」
エバンは抜剣し、恭しく頭上に剣を捧げた。私は真っ白になった頭で思わず渡されたから、それを受け取った。彼はいつもはなかった白銀にコバルトブルーの石が嵌ったイヤーカフを付けていて、両方の耳あるその一つだけを取り、私の耳付けた。これは知っている。護衛騎士が主の位置を把握する魔道具だ。他には恋人や夫婦、親子などが使ったりするが、とても高価なのであまり出回っていない。
「これは私の心臓も……この身も、心も全て貴方の…物という証だ」
「あ、あの……どうするんですか?」
そんなことより国王陛下を見てください。
「あぁ、領地と爵位がほしかったんですか?」
「そうではなく……」
「貴様、何をやっている?」
血を這うような声が聞こえた方を見れば、アリスが立っていた。何故か武者震いをしてしまう。
二人の剣呑な視線が絡み合う。ピリピリとした一髪触発の雰囲気。周りに人間が息を呑む。エバンに暴れられたら、ただでは済まない事をみんな知っているからだ。誰かの背が庇うように私の視線を遮る。それはお父様だった。
「うちの娘に迷惑をかけてただで済むと思うな」
――お父様~! 心配するのそこじゃない。国王陛下が悲しそうして困っているよ
――ゴ、ゴツンッ!!
「「うっ……」」
鉄拳がアリスとエバンに与えられた。スペンサー家当主で騎士団長で剣帝と呼ばれる屈強なる騎士だった。
「このバカ共!」
スペンサー騎士団長はエバンの親で、二人の剣の師匠である。スペンサー騎士団長は二人を担いで謁見室を出ていった。
お父様はそれを見届けてから座り、勲章授与式は進んでいった。
勲章授与が終われば、このあとはパーティである。今日の式典の主役であるエバンと第一王子で凱旋した騎士たちを労わなければならないアリスはどうするのだろうか……。不安だ。
私は、今、大通りにある噴水広場のホテルの最上階に来ている。パレードは大通りを通って最後は王城に到着する。ここからならエバンがはっきり見えるだろう。もう既に人が集まっていて騒がしい。
鐘塔の鐘が王都中に響き渡る。昼12刻告げる合図だ。パレードが始まる。鐘が止まり、辺りが静まり返る。ファンファーレが鳴り響き、歓声が聞こえ始めた。
凱旋した騎士の集団が見え始め、噴水広場を色とりどりの紙吹雪が舞う。王国の旗と騎士団の旗を掲げてこちらに歩いてくる。
――エバンだわ。
綺麗に磨かれた鎧をつけ、周りの馬より大きめな月毛の馬に乗っている。とても精悍な姿でこんな人に姫になってくれと言われたなんて、誇らしくそして少し面映ゆい。彼に見合うようなもっと素敵な女性になれるよう精進しようと思う。
ホテルの付近までエバンがやってきた。視線が合う。そしてエバンは柔らかな顔で、笑った。こんな大勢の中で、場所も知らせてないから私に気づく筈なんてないのに、でも確かに目が合ったと確信する。私も自然と笑って、応えた。エバンはとてもかっこよかった。まるでゲームの1枚のスチルみたいに。
夜会用のドレスに着替えた私はこれから勲章授与式に参席するため、王城にやってきた。城門までお父様が迎えに来てくれた。式典服に着替えたお父様はとても凛々しく素敵だ。私がお父様に腕を絡めると、お父様は目尻の皺を深めて、親の慈愛の籠もった笑みを見せた。これは娘である私だけに見せる特権だ。でも……
「お父様、大丈夫ですか?」
少し疲れているみたい。笑い顔にいつもの覇気がない気がする。
「心配するな。これくらいなんでもない。アルセナが元気で笑ってくれるだけで、私も元気になるのだから」
お父様は私の頭を撫でた。お父様、大好きです。もう恥ずかしくて言えないけど。
会場に謁見室の両端には、いつもはない長椅子が並んでいて、中央には真っ赤なカーペットが敷いてある。そしてその先、数段高くなった場所には玉座が威風堂々と鎮座している。高位貴族で国王陛下の側近である私達クリマスタ家は最前列に座った。
謁見室の両開きのドアが左右に開き、赤色マントを着け、手には錫杖を持ち、そして頭に燦然と輝く王冠を載せた国王陛下が恭しくレッドカーペットを歩き、玉座に座った。そして、あとから王妃と側妃、第一王子、第二王子が玉座の側に座った。
今回の戦争勝利の功労者であるエバンがやってきて玉座の前に膝を付き、頭を下げた。陛下が戦争の功を讃える。
「貴殿には元ポルカニガ自治区と伯爵の爵位を与える」
元ポルカニガ自治区とはこの王国では自国の領地だと主張しているが、ポルカニガ族は独立国だと思っているちょっと面倒くさい場所である。
「辞退します」
エバンはそうは一言告げ、立ち上がり歩く。会場中が静けさの中、喫驚する。
私は怯んだ。なぜならエバンが私の方にやってきてたから。
「また会える日を指折り数えてました。アルセナ姫に剣を捧げます。誓いを……」
エバンは抜剣し、恭しく頭上に剣を捧げた。私は真っ白になった頭で思わず渡されたから、それを受け取った。彼はいつもはなかった白銀にコバルトブルーの石が嵌ったイヤーカフを付けていて、両方の耳あるその一つだけを取り、私の耳付けた。これは知っている。護衛騎士が主の位置を把握する魔道具だ。他には恋人や夫婦、親子などが使ったりするが、とても高価なのであまり出回っていない。
「これは私の心臓も……この身も、心も全て貴方の…物という証だ」
「あ、あの……どうするんですか?」
そんなことより国王陛下を見てください。
「あぁ、領地と爵位がほしかったんですか?」
「そうではなく……」
「貴様、何をやっている?」
血を這うような声が聞こえた方を見れば、アリスが立っていた。何故か武者震いをしてしまう。
二人の剣呑な視線が絡み合う。ピリピリとした一髪触発の雰囲気。周りに人間が息を呑む。エバンに暴れられたら、ただでは済まない事をみんな知っているからだ。誰かの背が庇うように私の視線を遮る。それはお父様だった。
「うちの娘に迷惑をかけてただで済むと思うな」
――お父様~! 心配するのそこじゃない。国王陛下が悲しそうして困っているよ
――ゴ、ゴツンッ!!
「「うっ……」」
鉄拳がアリスとエバンに与えられた。スペンサー家当主で騎士団長で剣帝と呼ばれる屈強なる騎士だった。
「このバカ共!」
スペンサー騎士団長はエバンの親で、二人の剣の師匠である。スペンサー騎士団長は二人を担いで謁見室を出ていった。
お父様はそれを見届けてから座り、勲章授与式は進んでいった。
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