★完結 【R18】変態だらけの18禁乙女ゲーム世界に転生したから、死んで生まれ変わりたい

石原 ぴと

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40話 夜会

 オーダーしていた新品のドレスを来て鏡の前で何度も確認する。

「やっぱり変かしら?」
「いいえ、とても素敵ですよ」
「やっぱりこっちのドレスのほうが……」

 少しでもいいから可愛くなりたい。アンネのような可愛らしい……あの子の……中庭で会ったあの子のような可愛らしさが羨ましい。ゴシック調のドレスなんて私には似合わない。無理に着ても虚しいだけだ。私は小さく溜息を零した。

「いいえ、このままでは大丈夫」

 アリスに会えるのは嬉しいけど、冷たくされたらと思うと悲しい。

「化粧が……」

 目に涙が滲みそうになるのをぐっと堪えた。最近、泣き虫になったみたい。アリスがいないだけでこんなに心細くなるなんて……。

 ドアをノックする音が聞こえたので、入室の許可を出した。エバンが濃紺の典礼服を着ている姿は、逞しいその体躯もあり、目が惹きつけられる。いつもはセットされていない銀髪を後ろに流している姿は、一介の騎士にはもったいないくらいの風格が漂っていた。今日の夜会は――領地で問題があった為――お父様は欠席なので、エバンをパートナーに連れて行きなさいと言われた。苦い顔でいないよりましだとか言っていたっけ。お父様は私の護衛騎士になること許しはしたが、あまりエバンのことを快く思ってないみたいだ。

「用意出来ましたか?」
「ええ、大丈夫です」
「姫、今日のドレスも一段と素敵です」

 恥ずかしがるすきもないくらいに流れるように自然に跪いて、私の手の甲にキスを落とした。

「いいのに……無理してお世辞なんて」
「いいえ、本当に綺麗だからそう言ったんです。すいません、俺、女性を褒める言葉が拙くて……綺麗だとしか思わないんです。こんな素敵な人をエスコートできるなんて嬉しいです」
「ありがとう。エバンもとっても素敵だわ。あら、本当ね。私もエバンのこと素敵だから、そうとしか思わないわね」

 クスクスと二人で笑う。少し心が軽くなった。何となく大丈夫な気がしてくる。

「さぁ行きましょうか」
「ええ」

 差し出されたエバンの腕にそっと手を乗せた。




 いつものように招待客が揃ってから王族がファンファーレと共に入室した。アリスの隣にはこないだの美少女がアリスと腕を組んで降りてきた。胸がチリチリする。どうやらこの美少女がバーレミオン王国の王族らしい。いつも、アリスは私を見つけて微笑んでくれたのに、今日は目さえ合わない。あれ? 今、バーレミオン王女と目があった気がしたけど、気のせいだろうか。

 祝宴が始まり、宮廷楽師が曲を奏で始めた。

「姫、どうか私と踊る栄誉をください」

 跪いて私に手を差し出すエバン様は理想の騎士様で、照れてしまう。彼の手に私の手を重ねれば、彼は嬉しそうに破顔する。その顔はいつもより無邪気な感じで、身近に彼を感じた。
 少しばかり……他の女性の嫉妬と羨望の目が痛いが、エバンは私の顔を一心に見つめるから、気恥ずかしいながらも私も彼の視線を受け止めて彼だけ見つめれば、周りの視線も気にならなくなった。

 エバンとのダンスはお父様やアリスと違い力強いリードでいつもよりも激しく、まるで競技ダンスのようで新鮮で楽しかった。

 荒くなった呼吸を整える。エバンはさすが騎士様とでも言うように、全く呼吸は乱れていない。

「私の姫はダンスもうまいんですね。疲れてませんか?」
「息が上がってしまって、少し座りたいです」
「申し訳……」
「楽しかったからいいんです。また一緒に踊ってくださいね」

 しょんぼりして反省するエバンの言葉を遮って、言葉を重ねた。
 
「もちろんです」
「きゃっ」

 エバンが私をお姫様だっこして椅子まで運んでくれたけど、慣れない出来事に恥ずかった。周りの視線が気になり、ジャケットを握り胸に顔を寄せてやり過ごした。最近馴染み深くなった爽やかな新緑のようなエバンのコロンの匂いがした。

「少しお待ちください」

 そう言ってエバンはグラスを2つ持って、急いでかえって来た。そして気泡が立つ琥珀色の液体が入ったシャンパングラスを受け取った。

「そんなに慌てなくてもいいのよ」
「一人したくないので。……それに、少しでも長くい、一緒にいられたなと……」

 エバンのが恥ずかしそうに俯いて顔を朱に染めるから、私もつられて顔が熱くなる。それを冷やそうと手で仰ぎ、グラスの液体を飲み干した。アップルサイダーのさっぱりした甘さが喉を潤す。

「よおっ!」
「グライス!!」
「最近、付き合いわりーじゃん」

 エバンに肩を掛けた男はグライスというらしい。鍛えているのが服越しでもわかるこの男性は同じ騎士だろうか?

「姫、申し訳ありません。すぐに追い払いますので」

 エバンが私に声を掛ければ、グライスは私に気づき挨拶をしてきた。エバンの影になって気づかなかったのだろう。

「あっ、いえ、いいんですよ。ここのところずっと私に付いていらっしゃるのですから、羽でも伸ばして来てはいかがでしょうか?」
「いえ、こいつは学舎時代からの腐れ縁ですので、構わずとも大丈夫です」
「クスクスッ……グライス様も寂しげにですから。私も幼子ではございませんから、一人でも大丈夫です」

 無碍にされたグライス様があまりにも寂しそうにするから笑ってしまった。それにしても、お父様もアリスもエバンさえも私を一人にさせてくれない。そんなにに頼りないのだろうか? 前世と合わせたらおばあちゃんみたいな年齢になるのに。

「これ、おかわり持ってくるから、どうぞごゆっくり」

 グラスを上げて水を向けたあと、私は手を降ってエバンを置いてその場から去った。
 宣言通り、アップルサイダーをもう一杯飲んだ。が、一人の男性に声を掛けられダンスに誘われた。私はモテないから不憫に思ったのだろう。ボランティア精神に溢れるとても優しい人だ。すると何故か他の男性たちがこぞって声を掛けて来て、私は男性に囲まれそうになったけど、その前に慌てて逃げ出し、テラスの階段を降り庭園へ向かった。ここは既知の場所だ。幼少期からよく知っている。

 草むらの影に誰かが蹲っている。大変だ、具合が悪いのだろうか?

「あの、大丈夫ですか?」

 声を掛けて振り返った男性は酒臭かった。

「ああ僕のことが好きで追いかけてきたんだね、小鳥ちゃん」
「違います。具合が悪そうだから心配で声をかけた……きゃっ」

 男性は私の手首を掴んできて、引き寄せようと力を入れたので振り払おうと手を力いっぱい振るが外れなかった。

「僕のことが好きだから心配なんでしょう?」
「違います。貴方のことは好きではありません! 離してください!!」

 駄目だ、話しが通じない。

「いてっ……いてててててて……」
「嫌がる女の子に無理強いはだめでしょう!?」

 そこにはバーレミオン王国の王女様が、男性の腕を捻りあげていた。そして、胸を蹴り飛ばし、転がって尻もちを着いた男股間にハイヒールを履いた足を乗せ、笑った。

「金玉踏み潰されたく無かったら、さっさとどっか行ってくんない?」

 すでに踏み潰されていた男は痛みに悲鳴を上げながら、大事そうに股間に手を当て走り去った。

「大丈夫? 僕、バーレミオン王国のライリー・フェル・バレンシアです」

 最上級の淑女の礼を持って、私も自己紹介をした。頭を下げた私の首筋の匂いをライリー様は嗅いで一言”美味しそうだね”と言った。
 驚いて顔を上げると可愛らしい笑顔をしたライリー様と目が合う。何故が背筋がゾクッとした。
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