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46話 王国崩壊へ
――カタンッ……
夜半、物音がして私は目を覚ました。体を撫でる夜風を不審に思い、窓の方を見た。揺れるカーテン奥、バルコニーに少しだけ欠けた月に照らされた人影がある。怖くは無かった。
「アルちゃん……」
不安げに震える声だった。夜に溶けて消えてしまいそうだった。私は胸が締めつけられた。
起き上がってその人物と向かい合うようにベットの端に座った。
「ごめん。最後に……どうしても会いたくて」
一歩一歩戸惑うように私に向かってアリスは歩を進める。いつも輝くように私を見つめるグリーンの瞳が絶望に染まって死んでいる。
「私も……会いたかったよ」
私の足元まで来たアリスは、崩折れて膝をつき、私の腰に抱きついた。アリスの柔らかな金髪を優しく撫でる。
「アルちゃん……好きにならなくていいから……お願いだから……嫌いにならないで……」
「嫌いになんてなるわけない。たとえアリスが何をしても、私になにかされても私はずっとずっとアリスが大好きだよ。だって私の天使だもん」
「……………………助けて……」
「ねぇ……一緒に死んじゃおっか。天使さん、天国に連れてってよ」
「えっ……」
アリスが驚いて顔を上げ、私を見上げた。私の天使はこんな時でも可愛い。愛想のない私は最大限おちゃめに見えるように明るくいった。
アリスは戸惑う表情見せるばかりで何も言わない。ううん、言えないんだと思う。
「死ぬのはやっぱり怖いけど、アリスと一緒なら淋しくないよ」
ずっと考えてた。私の結論。アリス殺されて魔王になったアリスが魔物だらけの大陸滅ぼして皆死ぬかなら、二人で死んでしまおうと思った。私を殺した罪悪感で魔王になってしまうアリスを遺していけないから。それにアリスは救えないけど、お父様やアンネなら救えるかもしれないから。
「僕……アルちゃんには生きていてほし…い。だってずっと笑っててほしかったから……ずっとアルちゃんの笑顔を守っていこうって……」
アリスは立ち上がって、バイバイと言って窓から出ていった。私は追いかけて窓まで来て叫んだ。
「私はアリスがいないと笑えないよーー!!」
アリスは夜の闇に紛れて消えた。
アリスの名前を何度も叫んだ。月が滲んで、頬に涙が伝った。泣いてもアリスはもう涙を拭ってくれない。
最近はどこも魔物が活性化して、凶暴になった魔物に襲われ沢山の国民が死んでいる。王都はビクターの張った強固な結界や騎士団本部もあり、戦力が集中している為、助けを求めて人が押し寄せて人口過多だ。食料も武器も物資も不足していて、お母さんの愛した庭園を潰して畑にした。とういうか、空いてる土地は全て畑になった。他所の国はわからないが、どこもそんなもんだろうと思う。学校は休校になり、アンネも音信不通だ。アリスも行方不明。
皆が不安に震えていて、今まではお伽噺のようだった魔王の再来に怯えている。
魔物を処理するぐらいしか出来ることがない日々が続く。何も出来ない自分が情けない。それでも自分が出来る事をするしかなくて、魔物討伐を手伝ったり、麦や野菜を作っている。
そうして過ごしているうちに、その日はやってきた。
今日は朝から大地が震えていた。屋敷の家人は皆何が起きるかわからず、身を寄せ合って恐怖に耐えている。何故大地が震えているのか、乙女ゲームをやっていた私は知っている。魔王化したアリスが王都来る。それに伴い大陸中の魔物が王都にやってきて地響きがしているからだった。
「お父様、おつかれでしょう……」
執務室で頭を抱えてお仕事しているお父様に紅茶と私が作ったマドレーヌをお出しした。今、世界中で食料不足でこういった嗜好品は手に入らない。
お父様の目は落ちくぼんで、隈ができている。服は3日前から同じだ。
「少しは休んでください」
「アルセナが食べなさい」
「お父様に食べてほしいんです」
私が出来る最後の親孝行だ。私は城壁に登ってアリスに会いに行くつもりだ。もうお父様に会うことは無いだろう。
「今まで感謝を込めて作ったんです。だからお父様に食べてほしいんです」
父はマドレーヌを手にとって食べた。
「美味しい。ありがとうアルセナ」
「お父様……今までありがとうございました。お父様がお母様分まで愛してくださって。お父様、大好きです」
「私もアルセナを愛している」
執務机に座っているお父様の首に手を回して抱きつけば、優しく背を撫でてくれた。
「ごめんなさい。もう行かないと……」
「こんな世界のどこに行くつもりだ?」
「アリスに会いに行くんです」
「殿下は行方不明だぞ」
「必ず王都に来るから……私ならもしかしたら止められるかもしれない」
「行くな! アルセナまで先に死なれたらどう生きていけばいい?」
「でもアリスを止められるのは、私しかいないの」
「殿下が……殿下が魔王に……」
今までお伽噺だった魔王。然しこの状況に皆、魔王の再来を言っている。
「アルセナの言うことなら可能性はあるかもしれん」
望みはないに等しいけど、一縷でも可能性があるならかけてみたい。
外は暴徒化した国民が多数いて、強盗、強姦、傷害、殺人何でもありの無法地帯だ。
私は謝罪と別れを告げ、引き止める父に振り返りもせず出ていった。玄関ホールでエバンが待っていた。
「私も連れてってください」
「だめよ。死ぬわよ」
「あなたは騎士をなんだと思っているのですか? 姫より後に死ぬなんて、騎士の恥です。もしご主人様が死ねば、俺は自死を選ぶでしょう」
「…………いいわ。一緒に来て頂戴」
「かしこまりました」
私達は王都外壁に向かった。
夜半、物音がして私は目を覚ました。体を撫でる夜風を不審に思い、窓の方を見た。揺れるカーテン奥、バルコニーに少しだけ欠けた月に照らされた人影がある。怖くは無かった。
「アルちゃん……」
不安げに震える声だった。夜に溶けて消えてしまいそうだった。私は胸が締めつけられた。
起き上がってその人物と向かい合うようにベットの端に座った。
「ごめん。最後に……どうしても会いたくて」
一歩一歩戸惑うように私に向かってアリスは歩を進める。いつも輝くように私を見つめるグリーンの瞳が絶望に染まって死んでいる。
「私も……会いたかったよ」
私の足元まで来たアリスは、崩折れて膝をつき、私の腰に抱きついた。アリスの柔らかな金髪を優しく撫でる。
「アルちゃん……好きにならなくていいから……お願いだから……嫌いにならないで……」
「嫌いになんてなるわけない。たとえアリスが何をしても、私になにかされても私はずっとずっとアリスが大好きだよ。だって私の天使だもん」
「……………………助けて……」
「ねぇ……一緒に死んじゃおっか。天使さん、天国に連れてってよ」
「えっ……」
アリスが驚いて顔を上げ、私を見上げた。私の天使はこんな時でも可愛い。愛想のない私は最大限おちゃめに見えるように明るくいった。
アリスは戸惑う表情見せるばかりで何も言わない。ううん、言えないんだと思う。
「死ぬのはやっぱり怖いけど、アリスと一緒なら淋しくないよ」
ずっと考えてた。私の結論。アリス殺されて魔王になったアリスが魔物だらけの大陸滅ぼして皆死ぬかなら、二人で死んでしまおうと思った。私を殺した罪悪感で魔王になってしまうアリスを遺していけないから。それにアリスは救えないけど、お父様やアンネなら救えるかもしれないから。
「僕……アルちゃんには生きていてほし…い。だってずっと笑っててほしかったから……ずっとアルちゃんの笑顔を守っていこうって……」
アリスは立ち上がって、バイバイと言って窓から出ていった。私は追いかけて窓まで来て叫んだ。
「私はアリスがいないと笑えないよーー!!」
アリスは夜の闇に紛れて消えた。
アリスの名前を何度も叫んだ。月が滲んで、頬に涙が伝った。泣いてもアリスはもう涙を拭ってくれない。
最近はどこも魔物が活性化して、凶暴になった魔物に襲われ沢山の国民が死んでいる。王都はビクターの張った強固な結界や騎士団本部もあり、戦力が集中している為、助けを求めて人が押し寄せて人口過多だ。食料も武器も物資も不足していて、お母さんの愛した庭園を潰して畑にした。とういうか、空いてる土地は全て畑になった。他所の国はわからないが、どこもそんなもんだろうと思う。学校は休校になり、アンネも音信不通だ。アリスも行方不明。
皆が不安に震えていて、今まではお伽噺のようだった魔王の再来に怯えている。
魔物を処理するぐらいしか出来ることがない日々が続く。何も出来ない自分が情けない。それでも自分が出来る事をするしかなくて、魔物討伐を手伝ったり、麦や野菜を作っている。
そうして過ごしているうちに、その日はやってきた。
今日は朝から大地が震えていた。屋敷の家人は皆何が起きるかわからず、身を寄せ合って恐怖に耐えている。何故大地が震えているのか、乙女ゲームをやっていた私は知っている。魔王化したアリスが王都来る。それに伴い大陸中の魔物が王都にやってきて地響きがしているからだった。
「お父様、おつかれでしょう……」
執務室で頭を抱えてお仕事しているお父様に紅茶と私が作ったマドレーヌをお出しした。今、世界中で食料不足でこういった嗜好品は手に入らない。
お父様の目は落ちくぼんで、隈ができている。服は3日前から同じだ。
「少しは休んでください」
「アルセナが食べなさい」
「お父様に食べてほしいんです」
私が出来る最後の親孝行だ。私は城壁に登ってアリスに会いに行くつもりだ。もうお父様に会うことは無いだろう。
「今まで感謝を込めて作ったんです。だからお父様に食べてほしいんです」
父はマドレーヌを手にとって食べた。
「美味しい。ありがとうアルセナ」
「お父様……今までありがとうございました。お父様がお母様分まで愛してくださって。お父様、大好きです」
「私もアルセナを愛している」
執務机に座っているお父様の首に手を回して抱きつけば、優しく背を撫でてくれた。
「ごめんなさい。もう行かないと……」
「こんな世界のどこに行くつもりだ?」
「アリスに会いに行くんです」
「殿下は行方不明だぞ」
「必ず王都に来るから……私ならもしかしたら止められるかもしれない」
「行くな! アルセナまで先に死なれたらどう生きていけばいい?」
「でもアリスを止められるのは、私しかいないの」
「殿下が……殿下が魔王に……」
今までお伽噺だった魔王。然しこの状況に皆、魔王の再来を言っている。
「アルセナの言うことなら可能性はあるかもしれん」
望みはないに等しいけど、一縷でも可能性があるならかけてみたい。
外は暴徒化した国民が多数いて、強盗、強姦、傷害、殺人何でもありの無法地帯だ。
私は謝罪と別れを告げ、引き止める父に振り返りもせず出ていった。玄関ホールでエバンが待っていた。
「私も連れてってください」
「だめよ。死ぬわよ」
「あなたは騎士をなんだと思っているのですか? 姫より後に死ぬなんて、騎士の恥です。もしご主人様が死ねば、俺は自死を選ぶでしょう」
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「かしこまりました」
私達は王都外壁に向かった。
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