★完結 【R18】変態だらけの18禁乙女ゲーム世界に転生したから、死んで生まれ変わりたい

石原 ぴと

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59話

 身支度を整えたアンが朝食を取りに、部屋を出ていった。

「姫、おはよう」

 二人きりになった途端、エバンは私にキスをした。唇を合わせるだけのキスじゃ物足りなくて、もっとせがみたかったけど、はしたないのが恥ずかしくて言えなかった。エバンが私を抱きしめる。腕を回して、厚くて逞しい胸板に頬を擦り寄せる。

「愛してる。今日もかわいい」
「うん、ありがとう。いつもエバンに感謝してる」

 髪を手で梳いて、私の頭にキスを落とした。嬉しくて、幸せだけど……

 まだ一度もエバンに好きと言えない。今日も一つ鉛を飲み込んだみたいに心は重いのに嬉しい。
 昨晩もアリスに抱かれた体には、重くて……嬉しいのに辛い。
 この国では重婚は認められているのに、二人に申し訳ない気持ちでいっぱいになる。アリスもエバンも私だけを愛してくれている。でも私は私を一番好きな人と結ばれたいと思ってるのに、私は二人共好きだなんて……そんなのずるい。でも私が命がけで救いたかった人と、私を命がけで守ってくれた人どっちかなんて選べない。なのにどっちつかずな私の心。引け目を感じるが、でもそれは自分の業だから、逃れられない。

 ドアを叩く音が聞こえる。アンが朝食を持ってきた。立ち上がるエバンから離れる。恋人が二人いるぐらい割と普通なのだが、やっぱり後ろめたい。きっと日本人として生きてる記憶があるからだ。
 一人に絞り込めない私は、二人に相応しくないと、もっと似合いの相手がいるのではないかと最近思うようになった。でもきっと、二人を振っても離れてくれるかわからないし、私もきっとすぐ会えるほどの距離じゃ辛くて耐えられないし、我慢できないだろう……。だったら二人に対する罪悪感を抱えたまま、彼らを愛するか、いっそ最北の修道院にでも行くしかない。最北の修道院とは、乙女ゲームに出てくるライバルキャラになった場合の私とアンネが行くとても厳しい修道院で規律を乱せば、鞭打ちされ一生出ることは出来ないと言われている。もちろん男子禁制だ。

 今日から学園が始まる。魔物を討伐する予定である。馬車に向かう途中、疑問に思った。エバンが御者を見て怪訝そうな顔を見せたのだ。その御者は少し変わっていて、なぜか剣を挿していたが、魔物の討伐だから戦闘能力がある人が御者務めたのだろうと思った。

「どうしたの?」
「…………いえ、向こうの空が少し曇っていたものですから」
「あぁ、あれくらいなら雨振らないわよ」
「大丈夫ならいいです」

――あれ? エバン、ちょっとイライラしてる!?

 指で剣を鞘から出したり入れたりして、カチカチと鳴らしていた。これはエバンがイライラしてたり、心配事があるときの癖だと最近気がついた。

「魔物退治……心配だわ」

 魔物を討伐するのは2学年からで、初魔物退治に不安が隠せない。然し、貴族として利益を享受する私は義務と責任を果たすため参加することにした。

「大丈夫です。僕が命に変えても指一本触れさせません」

 エバン私の手を取って、額を手の甲に付けた。これは騎士が主君に約束をする時の動作である。チートなエバンがいれば大丈夫だと不安が和らいだ。

「エバン、ありがとう。頼りにしてるわ」

――あれ? 

視線を感じて周りを見渡したが、気のせいだった。ッ





 王都外壁に着いた。
 学園が始まったとは言っても有志のみの教員引率の魔物退治である。まだまだ、一般人が都市を行き来するには魔物が多すぎるからだ。

「皆さん、それぞれ大変なのにも関わらず、こうして魔物討伐に志願して頂きありがとうございます。将来を担う君たちが民のため憂い集まってくれたことを大変嬉しく思います。きっと天国からアリスフォード君も喜んでおられると思います」

――えっ? アリスフォード……殿下? なんで天国に? 昨夜もアリス一緒にいたのに……

 私は混乱した。教師の行った言葉を理解できずに呆然としていた。

 たちの悪い何かのドッキリかと思って周りを見渡せば、花を持ってすすり泣いてる生徒がいた。ぐにゃりと地面が揺れている。

「姫」

 腕に抱えられている。手を握る彼の手が温かい。知らずに血の気が引いていたのかも知れない。

「生きてます」

 エバンが囁いた。低くとても小さな声で。

「え? なんで?」
「彼が後ほど説明すると申してましたよ」
「良かった……」

 安堵してはらはらと涙が溢れた。さっきは生きる意味とか希望とか夢とかそんなものが体から抜けてくような感覚に陥った。アリスが死んだら、私は絶対普通に楽しく暮らしていけないだろうなと思った。私はアリスが相当好きだと思う。
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