「聖女よ!お前を追放する!理由は雨女だから!」 ~ 水の聖女と蒸気の鉄人 ~

ダイスケ

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第46話 お仕事をつくろう

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「こんにちは。今日もお仕事ご苦労様ですー」

「はい、よろしくお願いします」

「「「メェーー」」」

 いつものように羊を満載した舟でやってきた羊飼いのおじさんですが、何だか今日は浮かない顔をしています。
 最近はいつもほくほくしていて上機嫌だったのですけど、お家で何かあったのでしょうか?

「どうかしましたか?」

「あーいやあ・・・その・・・」

 はっ。まさか!

 直感にぴんと来ました。
 これは悪い話がある時の態度です!
 大家さんが屋根裏部屋の家賃を値上げした時と同じ顔をしています!

「・・・まさかチーズとハムとソーセージの納入を減らしたいとか・・・ダメですよ!契約は契約です!」

 世の中は契約社会です!契約が絶対だとあたしは痛い目に遭って学んだのです! 
 びしりと指摘すると、おじさんはひどく狼狽したのです。

「い、いや違う!実は、その親戚の若い連中が仕事が欲しいとねだられていて、どうしたものかと・・・」

「あらら。違いましたか」

 あたしの直感は少しだけ外れていたようです。
 なかなか聖女様のようにはいきません。

「うーん、お仕事ですか・・・」

 たしか聖女様は人手が必要とか言ってましたけど、普通の人が軍艦の残骸と砲弾が沈んだ川の中に入ったら危ないでしょうし、そもそも土地神様のお姿を他の人に見せるわけにはいかないわけで。

「・・・一応、聖女様には相談しますけど、あまり期待しないでくださいね?」

 あたしではどうしたら良いか思いつかないので、神殿の皆さんに相談することにしたのです。

 ◇  ◇  ◇  ◇

「・・・そんなわけで、たくさんお仕事が欲しいそうです」

 ご飯時に相談を持ちかけた際の、皆さんの反応は様々でした。

「なるほど、良いお話ですね」

「理解シタ」

「計算スル」

 ええと、とりあえず前向きに検討する感じなのでしょうか?

「ちょうど人手は欲しかったところです。お仕事はありますから」

「えっと、でも危ないし、土地神様を見られるのは良くないですし・・・」

「リリアは優しいですね。もちろん、その人達に土地神様と一緒に働いていただくわけにはいきません。ですから、下流で屑拾いをしてもらいましょう」

「下流で?」

「説明 スル」

 聖女様の代わりに土地神様がお話をしてくれる流れのようです。

「川底 ノ 資源採掘計画 ヲ 原始的魔導蒸気機関及 ビ ソノ他資源ノ引揚ゲ ニ ツイテ 人的労働力 ヲ 追加 スル 形 デ 再計算シタ」

「・・・はい」

「神殿 ヨリ 3マイル 下流 二 資源採掘場 ヲ 設置 スルノガ 効率的 ト 判断 スル。
 先日 ノ 戦闘 デ 沈没 シタ 艦隊 カラ 獲得可能資源 ハ 多岐 二 渡 ル。

 特 二 重量金属資源 ハ 引続 キ 土地神 ガ 引揚 ゲル。

 但 シ 高品質 ノ 石炭、船体 ノ 木材 二 打 チ 付 ケラレタ 軽量 ナ 金属装甲板、原始的魔導蒸気機関 ノ 配管類等 ノ 人力 デ 引揚ゲ 可能資源 ハ 水流 デ 下流広ク 散逸 ガ 予想 サレル タメ 効率的採集 ノ タメ 近距離 二 別途人員 ヲ 追加 シ 収集基地 ヲ 設ケル 計画 ヲ 推奨 スル」

「・・・御柱様すごい」

「なるほど。わたしもだいたい同じ考えですね」

「聖女様、今のでわかるんですか!?」

 あたしは御柱様がすごそうな事しかわかりません・・・。

「簡単に言うと、神殿から少し離れたところで川に流された軽い屑を拾ってもらうことを、お仕事にしてもらおう、ということですね」

「なるほど・・・」

「理解シタ」

 なんとなく土地神様はな気がします。
 安心します。

「もちろん変な場所に収集場を作られては困りますから、こちらで土地を用意して許可する形とします。いちおうは王国の土地ですから」

「なるほど・・・あれ、でも聖女様、あたし達は王国の艦隊をたくさん沈めたような」

「小さな話ですから気にしてはいけません。ここは王国の土地です」

「あっはい」

 最近、王国と敵対して海軍を殲滅したような気もしますけれど、小さな話ですね。
 気にしてはいけないそうです。

「でも、そんな人達を大勢雇うほどお金はありませんけど・・・」

 金貨も銀貨もまだぜんぜん拾えてませんし、大砲も売れてません。
 そんなにたくさんの人を雇うのはお金の面で無理に思えるのですが・・・。

「リリア、逆ですよ。私たちが税金をとるんです」

「税金をとる!」

 驚きです!なんという発想の転換!

 税金というのは取られるもので、取るものだとは思っていませんでした。
 さすが聖女様!
 税金をとれば貴族や資本家のように贅沢三昧ですね!
 将来の夢が広がります!

「リリアが何を考えているかわかりませんが、お金は取れませんよ?」

「えっ」

「お仕事が欲しいと頼み込んでくる人達がお金を持っているわけがありません」

「そんなー・・・」

 しおしおとバラ色に輝いていた将来の夢が縮んでいくのがわかります。
 さようなら、貴族様みたいな優雅な生活・・・。

「神殿の敷地の清掃という扱いになりますね。彼らは清掃を手伝い、何割かを持ち帰る権利を得る。彼らは持ち帰ったものを売る。それが仕事になるわけです」

「お掃除・・・ですか?」

 普通、神殿の掃除といったら箒でゴミを払うとか、そういう種類のものを指す気がします。軍艦の装備を拾うのは別の種類の掃除な気がします。

「艦隊 ハ 燃料 トシテ 石炭 二 優良無煙炭 ヲ 積載。無煙炭 ハ 流水 デ 広 ク 散逸 シテイル ガ 有効 ナ 資源 デアル。優先的 二 回収 シタイ」

「むえんたん?」

 石炭とはどう違うのでしょうか?

「外国産の煙の出にくい高級な石炭のことですね。軍用と貴族用がメインで民間にはほとんど出回っていません」

「へえー!煙の少ない石炭なんてあるんですか!」

 お金持ちって、いいもの使ってるんですねー。

 ◇  ◇  ◇  ◇

 とりあえず、事業計画や基地とする土地の選定、税金のノルマ等は計算が得意な御柱様にお任せして、実際に土地を平らにしたり舟がつけやすいよう川底を掘削するのは土地神様、法律の確認と契約書類の作成は聖女様、そして羊飼いのおじさん達への説明はあたし、という役割分担をその場で決めて、動き出すことになったのです。

「聖女様、なんだかワクワクしますね!」

「そうですね。銃や大砲を撃つよりも、私はこうしたことの方が向いているようです」

「あたしも、銃を撃つのと同じくらいワクワクします!」

「人 ハ 逞 シイ」

 なぜか土地神様がお口をあけて、泥炭で香りづけした燻製ソーセージをくれました。

「あたしは高級石炭より泥炭の方が好きですねー」

 だって、燻製がこんなにも美味しくなるのですから!
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