御伽の国の聖女様! 婚約破棄するというので、聖女の力で結界を吸収してやりました。精々頑張ってください、私はもふもふと暮らします

地鶏

文字の大きさ
36 / 72
二章 御伽の国

66 武闘会(8) 決勝戦

しおりを挟む
「みなさん、ついにやって来ました……決勝戦です!」

 決勝戦です! ここまで残ったのは古参中の古参、悪魔のリーダー、アーさんと、元勇者パーティのナオキです。

 観客の熱意もかなり上がってきてます。私もなにか盛り上げましょうか。

 まずは……ちょっとたいへんですが、魔法で空に黒いカーテンをかけます。

「お、おおっと? これはマーガレット様の演出だァ!」

 さすがの状況理解ですミレー。おかげで観客も怯えずにいてくれます。

 黒いカーテンをかけた舞台は真っ暗になってしまいます。

 そこに、様々な色の光を浮かべます。まるで夜空の中を飛んでるみたいです。

「おおお、綺麗だ!」
「さすがはマーガレット様ねぇ。素敵だわ」
「うおおおおお結婚してくれマーガレット様ァ!」

 結婚はしませんよ。ですが褒めてくれるのは嬉しいのでもっと褒めてください。

 よし、まだまだ演出は終わりませんよー。

 光を舞台の中央に集めて、観客の目が集まったところで、軽く目が眩む程度の光を放ちます。

 その隙に黒いカーテンを消して、控え室で準備万端にしてるアーさんとナオキを舞台にあげましょう。

 強制転移です。多分大丈夫でしょう、あの二人なら状況を正しく理解してくれるはずです!

「え?」
「む?」
「おおっとぉぉぉ! アーさんとナオキがいつの間にか舞台に現れたぞー!」

 観客が盛り上がってくれました! アーさんとナオキは若干困惑してますが、軽く魔法で状況を伝えたので、手を振ったりして観客に応えてますね。

 手を振るのをやめたところで、2人がなにやら話しています。

「まったく、相変わらず急にやってくれるなマーガレットは」

 うっ、アーさんが若干呆れてます。仕方ないじゃないですか思いついたんですから。

「そこがあの人のいい所でしょう」
「それはもちろんそうだが……いつか悪い方向に行かないかが心配なのだ」

 アーさんに心配をかけてしまっているようです。大丈夫ですよ、悪い方向には行きません!

「あー、家畜を呼ぼうとしてドラゴンを呼んだ話とかですか?」
「そういった事だ。そのうち魔神とか呼んでも我は驚かないぞ」

 2人でそんな話をして笑ってます。

 さすがの私も魔神なんて呼びませんよ。フォーレイを呼んだのもたまたまゲートに近くにいたからですし。たまたまです、たまたま。

「まぁ、そういった時のために、我は強くならねばいけないのだがな」

 お、アーさんが構えましたね。私のために強くあろうとしてくれるのは嬉しいですが、みんなを守るのは私の役目です。

「胸を借りますよ、アーさん」
「ふん、かかってこいナオキ。悪魔の力……見せてやろう!」

「……ノアの武闘会、決勝戦。アーさん 対 ナオキ 始め!」
「《黒炎》」
「《聖結界》!」

 開始と同時に、アーさんが攻め、ナオキが守りに入りますね。

「守ってばかりでは勝てんぞ? 《黒雷》!」

 おお、黒い雷がナオキを襲います。一撃で結界が持っていかれてしまいましたね。いい威力です。

「まだまだだ。《黒炎》、《黒雷》」
「うぐぁ?!」

 黒い炎による範囲攻撃と、黒い雷による高威力の集中火力の組み合わせ、かなり凶悪ですね。

 どちらかに集中して防御すると、どちらかを食らってしまいます。

 アーさん、やっぱり強いですね。あれだけ魔法を放っていても魔力にはまだまだ余裕があるみたいですし、ナオキはこの一方的な状況を打破する手段がないと厳しそうです。

「くっ……」
「終わりか? ナオキ」
「……いや、まだ手はありますよ。ただ、手加減は出来ませんが」

 ナオキの雰囲気が変わりました。アーさんもそれを感じとったのか攻撃を一度止めます。

 ナオキの姿、私が祈ってる時と同じ姿をしていますね。まさか……。

「……聖剣《十束剣》!」
「なに……?! 神器か!」

 あれは、ちょっとまずいですね。

 あの剣、とんでもない力です。準決勝の後に強力に貼り直した結界でもあの力は抑えられないかもしれません。

 勇者は神器を授かるとは聞いたことがありますが、実物は初めて見ました。

「くっ……長くは持たないんだ。行来ますよっ!」
「ぬぐ、来い。ナオキ!」

 あれほどの力、維持するのは厳しいようです。どんどんナオキの力が剣に吸い取られています。

「うおおおおおお!」
「《獄雷》!」

 アーさんは守るに入るのではなく、受けて立つようです!

 聖剣から放たれた光の一撃と、炎と雷の混ざった凶悪な一撃がぶつかり、結界にヒビが入るほどの衝撃波が生まれます。

 急いで二重の結界を貼り直したので観客に被害はありません。

 試合の結果は?!

「……我の、勝ち……だ……」

 ボロボロのアーさんだけが、舞台に立っています。ナオキは気を失って倒れているようです。

「ア、アーさんの、優勝です!」
「「「「「うぉぉおおおおお!」」」」」

 私の優勝宣言と共に、今日一番の歓声があがります。

 アーさん! 凄いです。どうやってあの一撃を絶えたのでしょう?

 気になりますが、今はアーさんとナオキの治療をしなければなりません。観客は優勝の決定でしばらく盛り上がってますから、その間に治しましょう。

 そしてその後は、ついにこの村の独立宣言です。緊張しますね……。

 

 
しおりを挟む
感想 65

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。

猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。 復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。 やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、 勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。 過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。 魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、 四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。 輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。 けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、 やがて――“本当の自分”を見つけていく――。 そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。 ※本作の章構成:  第一章:アカデミー&聖女覚醒編  第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編  第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編 ※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位) ※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

悪役令嬢は手加減無しに復讐する

田舎の沼
恋愛
公爵令嬢イザベラ・フォックストーンは、王太子アレクサンドルの婚約者として完璧な人生を送っていたはずだった。しかし、華やかな誕生日パーティーで突然の婚約破棄を宣告される。 理由は、聖女の力を持つ男爵令嬢エマ・リンドンへの愛。イザベラは「嫉妬深く陰険な悪役令嬢」として糾弾され、名誉を失う。 婚約破棄をされたことで彼女の心の中で何かが弾けた。彼女の心に燃え上がるのは、容赦のない復讐の炎。フォックストーン家の膨大なネットワークと経済力を武器に、裏切り者たちを次々と追い詰めていく。アレクサンドルとエマの秘密を暴き、貴族社会を揺るがす陰謀を巡らせ、手加減なしの報復を繰り広げる。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。