御伽の国の聖女様! 婚約破棄するというので、聖女の力で結界を吸収してやりました。精々頑張ってください、私はもふもふと暮らします

地鶏

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三章 龍の花嫁

70 婚約なんて嫌です

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「ギャオー!」
「うむうむ、大きくなれ。目指すはデビルドラゴンだ」

 仕事から抜け出してマーガレット城の中庭に来てみると、アーさんがワイバーンに餌を上げてました。

「……でかくなってません?」
「ん? マーガレットか。そうだぞ、ついにワイバーンからデビルワイバーンに進化したのだ! 見よ、この魅力的な姿を!」
「魅力的……泣く子も黙るという言い方なら分かるのですが」

 正直凄くまがまがしい見た目です。デビルと名のつくだけありますね。

「本当にデビルドラゴンになる日が来るかもしれませんね」
「ふふふ、そうだろう。だが、ドラゴンとなると種族的には大きな進化をしなければならない。長い道のりだな」

 ……ワイバーンとドラゴン、似ているようで大きな差があると言われていますからね。

 ドラゴンとなると、知恵を持つものも珍しくないですし、相当な力を持っていることが多いです。このデビルワイバーンは確かに強いですけど、まだまだドラゴンと比べると成長が足りません。

 あ、そうだ。これとか食べたら進化しませんかね。

「これ、食べます?」
「なんだ?」

 アーさんは私の渡したものを眺めて不思議そうな顔をします。

「私の魔力を固めたものです」
「……ドラゴンを超えた別の何かになりそうだから遠慮しておこう」

 むぅ、断られてしまいました。いい餌になると思ったんですけどね。

「ドラゴンといえば、フォーレイはどうした? 山仙龍の」
「そういえば勇者との戦いで殴り飛ばして以来見てませんね」
 
 大怪我を負うほどの攻撃でもなかったですし、どうしたのか気になりますね。

「こんどラムさんに聞いてみましょう。魔界にいるのかもしれませんし」
「それがいいだろうな。いつの間にか村に襲いかかって来ても困る」

 そうですね。丁度今日は取引の日ですから、ラムさんはノアの国に来ているはずです。

 倉庫の方で話をしているはずですから転移しましょうか。あ、いました。シルフィと取引の相談をしています。

 お菓子とお茶をのみながらゆったりですけどね。

「こんにちは、ラムさん」
「ああ、マーガレットさん。お久しぶりです。この前はお招きありがとうございました、とても面白い武闘会でしたよ」

 褒められました。ノアの事が褒められるのは自分が褒められること以上に嬉しいですね。

「ぜひ次はラムさんも参加してください」
「ははは、死にたくないので遠慮しておきます。魔王様はぜひ参加したいと言うと思いますよ」

 魔王さんが出るとなると、みんなもやる気が出るはずです。楽しみですね!

「にしても、マーガレットさんは忙しいんじゃないですか?」
「そうですねぇ、毎日毎日書類の山です」
「ははは、マーガレットさんも魔王様と似たような生活になってきましたね。あ、そういえば婚約の方はもう決めたのですか? もし良ければ魔王国の王子との縁を結ばせてもらえればと思うのですが」

 ……へ? いやいやいや、決まってるわけないじゃないですか。恋愛をする気はありませんし、婚約なんてもってのほかです。

「そうですか……ただ、マーガレットさんに婚約者がいないとなると、大変ですよきっと」
「何がですか?」
「国を滅ぼせる力を持った存在を複数抱えるノアの国、その女王と婚約という名の同盟を結ぼうという国や貴族は多いでしょうから。もしかして、なにも考えていませんでしたか?」

 全然かんがえてませんでした。バカ王子とは昔婚約を結んでいましたが、恋愛らしいこともなく破棄になったので……すっかりそういう事は忘れてましたね。

「ごめんなさい……私もそういった方向の事は考えが回りませんでした」

 気にしないでくださいシルフィ。私も忘れていましたから。

 それに、まだそういった類の手紙はきていません。多分、新しく出来た国なので情報を集めてから慎重にという国や貴族が多いのでしょう。

 うーん、まぁまだいますぐにどうこうしなきゃ行けない問題ではありません。ゆっくり考えましょう。

 それよりもラムさん、フォーレイの情報ありませんか?

「フォーレイって、三仙龍の?」
「多分?」

 たしかそうやって名乗ってましたし、アーさんもそう呼んでた気がします。

 ふむふむ、ラムさんのところにも情報がないと。ただここからかなり遠い国で龍の目撃情報と強力な盗賊団がいると。

 怖いですね。ただ、あまりフォーレイとは関係なさそうです。

 フォーレイに関してはあまりいい情報は得られませんでしたが、婚約という新たな問題に気づくことが出来ました。

 ありがとうございます、ラムさん。

「ところでマーガレットさん」
「どうしました?」
「あのヤニムという方にあげた薬の効き目は……」

 育毛剤ですね。ばっちりでしたよ! 3日ほどで髪の毛が復活して、ヤニムが泣いて喜んでました。

「ははは、そうですか。それを聞いて安心しました」

 そういってラムさんは魔界へと戻っていきました。いい人です、ラムさん。

 ちなみにシルフィ、ラムさんと食べていたお菓子、見たことないと思うんですけど新作ですか?

 あ、やっぱりそうですよね。なんで食べさせてくれないんですかもー! 

「だってマーガレット様にあげたら、アダムが食べますよね? そしたらバレンタインやナオキにも伝わって、いつの間にか村全体に広まってるじゃないですか」
「……確かに」
「なので新作はちゃんと開発が終わってからです! 味見禁止!」

 ぐ、ぐぬぅ。私は女王なのに、びしっと言われてしまいました。

 こういうときのシルフィは頑固なので、あまり抵抗すると逆に怒られてしまいます。諦めましょう。

 この前勝手に水遊び場をつくった時も一言いってくださいって怒られました。怖いです、シルフィ。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 建国宣言から1ヶ月ほどたち、書類仕事は私がやらなければならないものはかなり少なくなり、文官勢もだいぶ楽になってきたみたいです。

 よく頑張ってくれました。休暇をとってくだーーえ、いらない? 仕事をしていないと落ち着かないんですか? 

 ……強制的に休暇を取ってもらいます。いくら仕事が習慣化していたとしても、休まないと体と心を壊しますよ。

 ただ全員休むと私が仕事で死ぬので、交互にお願いします。机から一日動けない生活はしたくありませんから。

「休み……休みって何すればいいんでしょう? 訓練とかですか?」
「いやいや、それよりも仕事に復帰した時に困らないよう、村を散策して問題点を洗い出してだな……」

 文官勢の会話はずっとこんな感じです。休みが無さすぎて、休み方がわからなくなってしまってますね……。

 よし、ここはサボりの伝道師を呼びましょうか。

「ということでヤニム、この人たちに休み方を教えて上げてください」
「任されました!」
「任されたわァ」

 ヤニムのストーカーをしていたスヤリスにもお願いしました。眠りの堕天使というだけあって、休み方には心得があるみたいです。

 あの二人に任せておけば大丈夫そうですね。

 私は……そうですね、今日は家に帰りましょうか。

 そうおもって城を出ると、夕日を見て黄昏れるフェンがいました。私に気づいたのか、体を大きくして私が乗れる程度になってくれます。

「主、今日もご苦労だ」
「迎えに来てくれたんですか? ありがとうございます」
「ファオランとシランは初めての狩りで疲れて寝てしまった。シラユキも今日は一人がいいそうだし、最近は主と二人の時間も少ないと思ってな」

 ふふふ、嬉しいですね。もふもふしてあげますよ。もふもふー。

 夕日で温まったさらさらの毛が気持ちいいです。とろけますね……。

「……ふっ」
「何笑ってるんですか、フェン」
「初めて会った時、この場所を探してかなり走らされたことを思い出してな。あの時はまさか主が女王になるとは思わなかったが」

 私も思わなかったですよ。王なんてろくでもないものだと思っていましたが……みんなと楽しく暮らせていますし、その生活を守りやすい立場だというのも間違いないです。

「……聞いたぞ、女王とは婚約を行わ無ければならないと」
「聞いちゃいましたか。面倒なんですけどねー」
「ふん、面倒ならばしなければいいのだ。主には力がある、無理を通すことも出来るだろう。それに、もし他のものが反対したとしても、我は主の味方だ」

 ……フェン、もしかしてそれを伝えたくて待ってたんですか?

 いい家族ですね。本当に。

「ありがとうございます、フェン。確かにそうです、私は私の好きなようにやります」
「それでこそ主だ」

 
 
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